習作 #9
太っているというのはあくまで比較によって決まる相対的な状態であって、絶対的に自分自身が太っていると感じることはない。例えば周りより身体に肉がついていたり、一人だけ汗をかいていたり、足が遅かったりという個別の要素はあるが、それはあくまで周りと比較したときの話にすぎない。もしも無人島に一人で産まれていれば、私は太っているという自覚は持たずに死んでいっただろう。まあ、それはよい。
身体から腐臭がするようになった。生乾きの洗濯物のような匂いだ。それは主に腋からだが、首や腹からも臭う。足は前から臭かったが、そこにカビのような匂いも混ざるようになった。その匂いは掌からもして、手を洗えば一時的にには消えるものの、すぐに皮脂が詰まり、皮膚全体が湿り気を帯びる。
身体が臭うというのはとても惨めなことだ。運命全てを否定されたような気持ちになる。たいてい原因はストレスで、悪臭は更なるストレスを呼び寄せるから悪循環になる。解決を迫れば「悪臭 or Die」という2択を突きつけられるから、なんとなく解決を先延ばしにするしかない。
周りから人が離れていくことにも耐えなければならない。それは仕方のないことだけれど、同じように太っている人間からも距離を取られることだけは解せない。
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