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プロペラオペラ


犬村小六×零崎一生
小学館ガガガ文庫
五巻完結
概要
宮家嫡男、黒乃クロトは幼い頃、両親に急かされ血筋目的で日野雄第一王女、白之宮イザヤにプロポーズしたことが露見し権威失墜、大国ガメリアに逃げ延びる。フォール外のカイル・マクヴェルの協力もあり、生来の特異な演算能力を活かした株式取引で何とかフォール外の頂点に上り詰めるも、カイルの裏切りにより再びどん底へ。しかし、クロトはカイルの「大統領になってイザヤを手に入れる」という挑戦を受け、故郷に戻りイザヤと共にガメリアと戦うことを決意。「イザヤには指一本たりとも触れさせない」国家を越えた三角関係の中で紡がれる、壮大なスケールの恋と空戦のファンタジー。


感想


ライトノベル読みは食いつかずにはいられない、
「ばかっこいい」「かわいい」の詰まった作品でした。
イザヤファン倶楽部を自称し、彼女のために命を賭して戦う水兵たち
そしてイザヤの側役の美少女SPなど、
登場人物たちはライトノベルならではの魅力的な個性を持っています。
そして浮遊体というファンタジー物質を利用した戦艦や、
イザヤの視点を切り離す特殊能力なども、
ラノベ畑の肥やしに溢れた世界観を構成しています。
愛嬌のある登場人物、そして若い感性に訴えかける設定は、
なのでライトノベル読みにはたまりません。

しかしながら、本作品の魅力はこれに留まりません。
「プロペラオペラ」は、戦争という惨劇を一つのテーマとしています。
フィクションでありながらも、日野雄とガメリアの関係性は
第二次世界大戦の史実を否が応でも想起させます
クロトはガメリアとの戦いの中で、多くの同士を失いながらも、
死んでいった仲間のために、そして恋するイザヤのために諦めず奮闘します。
大切な人が次の日には肉片と化し、友人が顔も知らない他人に辱められ、
足蹴にされる世界で誇りを失わず懸命に抗う若い主人公。
彼に共感すればするほど、じゃあ自分が同じ立場だったらと、
自分が戦時中に生まれていたらと、そう考えずにはいられません。

現実にあったかもしれない残酷な世界は、
若い読者に受け入れられやすい舞台で語られるからこそ、
それはもう、現実に紡がれる戦争の悲話以上に、私の心に痛いほど響きました。
犬村小六先生の執念を、魂を結集した胸アツの作品だなと思います。
読了後、大切な人に、若い青春の思い出に想いを馳せずにいられません
5巻完結と少し長いですが、個人的にとってもおすすめの作品です。

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