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甲状腺乳頭がん治療の記録

2024年3月に甲状腺乳頭がんと診断され、同年5月に甲状腺右葉切除の手術を受けました。通院や治療の記録をここに書いていきます。
私は女性で、診断を受けた時点では39歳です。


甲状腺乳頭がんと診断されるまで

2024年2月下旬

夜、鏡を見ていた時にふと、首が部分的に腫れていることに気づきました。正面から見ても分からないけれど、横から見ると分かる程度の腫れでした。場所は、のどぼとけのやや右下あたり。
もしかしたら、甲状腺の病気かもしれないと強い不安を覚えました。甲状腺の病気は女性に多いと聞いたこともあったため、できるだけ早く病院に行こうと決めました。しかし、腫れているのは首だけれど気になるのは甲状腺のため、何科に行けばいいのかすぐには分かりませんでした。
そこからいろいろと調べて、耳鼻咽頭科に行くことにしました。翌日の午前中の予約を取り、web問診票には「甲状腺の病気ではないかという不安がある」と書きました。

翌日、耳鼻咽喉科へ。
ぱっと見ただけでは分かりにくい腫れなのですが、先生はすぐに「確かにここが腫れていますね」と分かってくれました。定規で腫れの大きさを測ってもらったのですが、縦も横も4㎝くらいでした。
触診のあとは、鼻から細いカメラを入れてのどの様子を調べる検査を受けました。ファイバー検査というそうです。すぐに終わる検査なのですが自分にはかなりきつくて、迷走神経反射というものを起こして倒れてしまいました。
私の状態が落ち着いてから、あらためて先生のお話を聞きました。
「確かに腫瘍があるけれど、緊急性はないと思います。しかしここではこれ以上の検査ができないので、大学病院への紹介状を書きますね」とのことで、紹介状ができるまで二日ほど待ちました。

2024年3月上旬

紹介状を持って、大学病院の耳鼻咽喉科・頭頸部外科へ行きました。
まずCT検査と採血をしました。
その後の診察でCT検査の画像を見せてもらい「確かにここに腫瘍がありますね」と言われました。
甲状腺の病気で有名なものにバセドウ病と橋本病がありますが、血液検査の結果それらの疑いはなかったようです。
腫瘍が悪性か良性かを調べるために穿刺吸引細胞診(せんしきゅういんさいぼうしん)をすることになりました。首から針を刺して腫瘍の細胞を採取し、それを調べるという検査です。一回では量が足りず、二回刺されました。痛いですが耐えられないほどではありませんでした。
どうやらCT検査は高額なようで、この日は15000円ほど払いました。

診察後、ネットでいろいろと調べました。
甲状腺の腫瘍のほとんどは良性であること、悪性だとしても、甲状腺のがんは進行がゆっくりでおとなしい性質のものが多いため命に関わることはない、といった情報を得ました。
きっと良性だろうと思いながら次の診察までの時間を過ごしました。

2024年3月中旬

耳鼻咽喉科・頭頸部外科へ。
この日は超音波検査を受けたあと問診、という流れでした。
前回とは違う先生が担当してくれました。
「びっくりしちゃうかもしれないんだけど……」と前置きしてから、がんが見つかったこと、それが甲状腺乳頭がんであることを告げられました。
「がんとはいえとてもおとなしい性質のものです。今はステージ1で、5年生存率も99%くらい。だから大丈夫ですよ」と、こちらが不安にならないようにやさしく伝えてくれる先生でした。
先生のお話を聞きながら、パソコン上の電子カルテに「悪性」と書かれているのをじっと見つめてしまいました。
おそらく手術することになるため、手術方法についての話も聞きました。私が女性ということもあって、首に傷跡が残らないよう内視鏡を使う方法があると教えてもらいました。ただ、この病院ではできない手術なので、希望するなら他院への紹介状を書きますよ、とのことでした。傷跡が残ることに抵抗がなかったのと、病院を変える煩わしさを避けたかったため、首を切る手術でいいと答えました。

次の通院では、がんが肺などに転移していないかを調べるためのPET検査を受けることになりました。PET検査の結果が出てから、手術の詳細(日程など)について決めるそうです。
核医学部でPET検査の説明を聞いて、この日は終了でした。

PET検査~入院まで

2024年4月上旬

核医学部でPET検査を受けました。
前日から運動は禁止で、当日は検査6時間前から食事禁止でした。
放射性物質を静脈から注入すると聞いていたため少し怯えていましたが、注入自体はすぐに終わり、体調にも特に変化はありませんでした。
検査薬注入後、およそ1時間の安静時間があり(タイマーを渡されます)その最初の30分くらいで500mlの水を飲み切るように指示されました。また、安静時間中はスマートフォンを使ったり本を読んだりすることも禁止されています(目の筋肉を使ってしまうため。)水を飲む動作とお手洗いに立つ以外では、文字通りじっとしていました。
安静時間終了後、CT撮影をしました。所要時間は20分~30分程度だったと思います。撮影後は30分ほど休憩し(ここでもタイマーを渡されます)検査終了となりました。
検査後はからだから微量の放射線が出ているので、人混みを避け、特に小さな子供と妊婦さんにはあまり近寄らないように、とのことだったので、公共交通機関の利用は控えて徒歩で帰宅しました。

2024年4月中旬

耳鼻咽喉科・頭頸部外科へ、PET検査の結果を聞きに行きました。
前回とは違う先生でしたが、この日の先生が私の手術をしてくれる先生(のうちのひとり)でした。(以下、この先生を「A先生」と書きます。)
PET検査の結果、まず、肺に1㎝ほどの結節(しこり)が見つかったと言われました。これが転移かどうかはまだ分からないので慎重に経過観察します、とのことでした。
そしてもうひとつ、子宮筋腫が見つかりました。予想外のことでかなり動揺しました。婦人科への院内紹介状を書いてもらい、のちほど受診することにしました。
甲状腺の手術について、入院期間は一週間程度であること、手術前に麻酔科で説明を受ける必要があること、などの説明を受けました。手術の日にちもこの時に決まりました。明確に決まったというよりは「この日を目標にしましょう」という決まり方でした。
耳鼻咽喉科・頭頸部外科での診察のあと、手術前に必要な検査として採尿、採血、心電図、レントゲンとまわり、一日が検査で終わりました。

2024年5月中旬

耳鼻咽喉科・頭頸部外科へ。この日も担当はA先生でした。
手術について「甲状腺手術インフォームドコンセント」という説明書を渡され、それに沿って説明を受けました。
転移はないので、腫瘍がある甲状腺の右側(右葉)を切除することになりました。腫瘍が大きいため、右側にふたつある副甲状腺も同時に切除するとのこと。
甲状腺のすぐ近くには、声帯を動かす神経である反回神経が走っています。この反回神経の麻痺や、神経そのものを切らなくてはならなくなる可能性についても説明を受けました。
同じ手術を受けた方のSNS投稿をいろいろと読んでみたところ、やはり術後は声を出しにくくなるようです。もしも、完全に声が出なくなってしまったらどうしよう、という不安が生まれました。

次に麻酔科へ行き、全身麻酔に関する説明を聞きました。
その後、入院申込手続きと入院前面談を済ませて終了。たくさんの書類とともに帰宅しました。
入院が決まると、渡される書類が多くなるので、こまめに整理することをおすすめします。入院中もいろいろと渡されます。

入院・手術

入院1日目

2024年5月下旬
午前中に入院手続きを済ませ、担当の看護師さんに病棟内を案内してもらいました。さっそくお昼ごはんが出てきました。生まれて初めての病院食はふつうにおいしかったです。
薬剤師さん、栄養士さん、A先生など、たくさんのスタッフの方が病室まで来てくれて、いろいろと説明を受けました。
手術に備えての診察は初めてお会いする先生が担当でした(この先生を以下「B先生」と書きます。)
とても驚いたのですが、私の手術はA先生とB先生を含む総勢6名の医師が担当するそうです。
輸血などについての説明を聞き、たくさんの同意書にサインをしました。そして点滴用の針を刺してもらい、首に手術部位のマーキングをされました。鼻から細いカメラを挿入し喉の様子を確認する検査(以下、鼻カメラと書きます)では思い切りえずいてしまい、二回目でなんとかうまくいきました。

夜21時から絶食、0時以降は飲みものも禁止でした。
明日が手術だという実感が特にないまま就寝しました。

入院2日目・手術日

消灯時間は22時、起床時間は6時でした。この日は6時前に目が覚めてしまった記憶があります。手術は午後からの予定だったので、午前中から脱水症状を防ぐための点滴をしました。

おそらく15時くらいからと聞いていましたが、正確な時間が分かったのは手術の20分前でした。看護師さんに手伝ってもらいながら手術着に着替え、エコノミー症候群を防ぐための弾性ストッキングを履きました(履き方にコツがあるので、事前に確認しておくとスムーズです。)
看護師さんに連れられて手術室の前に来た時、初めて恐怖を覚えてからだがふるえました。ほんのちょっとだけ泣きそうでした。
すぐに手術台に寝かせられると思っていたのですが、そうではなく、いったん手術台がある部屋の外に置いてあった椅子に座るよう言われました。そこにはA先生とB先生の姿もあって、B先生が声をかけてくれました。
帽子をかぶり、手術担当の看護師さんから名前、生年月日、手術する部位などの確認をされた後、手術台のある部屋まで歩いていきました。
その部屋は想像以上に広く、ガレージのような場所で、あまり病院っぽくないなあという感想を持ちました。
まず手術台に腰かけるように指示され、背中の状態を確認されました。そのあとは横たわり、心電図のシールを貼られ、血圧を測る装置をつけられ、点滴の確認をされ、おでこにテープを貼られました。ここでも看護師さんから名前と生年月日、手術部位と手術方法、アレルギーの有無などについて確認がありました。このあたりで恐怖も失せてきて、もうどうにでもしてくれという気持ちになっていました。
酸素マスクを口元に近づけられた状態で1分ほど経過した頃、眠くなる麻酔を入れていきますね~! と声をかけられました。そこから10~20秒くらいで意識を失い、少し夢を見たような感覚のあと、目覚めると手術が終わっていました。一瞬で終わることに対して強い恐怖を覚えていたので、予想していたほどの一瞬ではなくてほっとしました。そして手術部位にやや強めの痛みを覚えました。
ベッドごと自分の病室に運ばれ、看護師さんふたりがかりでT字帯(術後につける簡易的な下着です。)をつけられ、ガウンを着せられ、3時間は安静にしているように言われました。
いちばん心配していたのは全身麻酔後に起きやすいと言われている吐き気でしたが、自分の場合はいっさい起こらなかったです。また、傷の痛みも耐えられないほどではなかったので、こちらも安心しました。
ためしに声を出してみたところひどくかすれていて、ああ私の声出なくなっちゃったんだなあと思ったのですが、それは単に手術直後のためで、だんだんと普通に声は出るようになりました。
うとうとしているうちに3時間が経過していて、看護師さんが来てくれました。手伝ってもらいながら少し歩いてみることに。まず尿道カテーテルを抜いてもらいました。首にはドレーン、腕には点滴、指先には何かの装置がついていて、めちゃくちゃ歩きにくかったですが、ひとりで歩けそうでした。
この時点で消灯時間を過ぎていたので、ひとまず寝ることにしました。

入院3日目(傷跡の写真があります)

朝、血液検査のための採血がありました。水が飲めるようになったので、むせないようにゆっくり飲みました。ストローを準備しておいて本当によかったです。
午前中にはA先生の診察があり、鼻カメラをしましたが特に問題なし。手術がうまくいったこと、反回神経も温存できたこと、摘出した部位は病理診断にまわされたことなどを教えてもらいましたが、鼻カメラ直後で鼻が痛くてあまりちゃんと聞けませんでした……。まあ、問題なかったのならいいだろうと思いました。
血液検査の結果、血糖値が低すぎるとのことで、ブドウ糖入りゼリーを摂取→指先で血糖値測定 の流れを三回繰り返しました。これが地味にしんどかったです。
この日からは、術後からずっとつながっている痛み止めの点滴の他に、抗生剤の点滴もすることになりました。午前と夜の二回、それぞれ1時間程度です。また、お昼から食事もできるようになりました。
ずっと横になっているとつらいので、病棟内をうろうろ歩いていました。シャワーはまだ入れないので、看護師さんに手伝ってもらいながらからだを拭いて着替えました(点滴がつながっているので着替えもひと苦労。)
全体的に自分が回復している実感もあり、比較的気分よく過ごしました。

※傷跡の写真を貼ります。苦手な方はご注意ください


手術翌日の傷の様子

入院4日目

5時前に目が覚めました。
午前中の診察で、ドレーンが抜けるのは明日以降と言われました。
この日は、術後からつないでいた痛み止めの点滴が終了したので、夜の抗生剤の点滴のあと、ひさびさに点滴なしの状態で眠れました。かなり嬉しかったです。
傷の痛みはほぼありませんでしたが、喉の奥の痛みはあって、特に飲みこむときにやや強く痛みました。
あとから調べて分かったのですが、これは全身麻酔の時の気管チューブが原因の痛みだったようです。数日でおさまるらしいですが、自分は一週間ほど続きました。

入院5日目

入院初日からつけていた点滴の針を新しいものに取り替えてもらいました。
午前の診察で、そろそろ首のドレーン取ってもらえるかな? と期待していたのですが、残念ながらまだでした……。
ドレーンが取れないとシャワーに入れないので、顔とからだを拭いて着替えて、ドライシャンプーシートで髪の毛も拭いていたのですが、さすがにつらくなってきていました。

入院6日目

午前中の診察の鼻カメラ(だいぶ慣れてきた)で喉に問題がなかったので、ついに首のドレーンを取れることになりました。取ったあと穴が開いてしまうのでそこをひと針だけ縫いますね、と言われました。
ドレーンを抜くとき、かなり強めに引っ張られる感覚があって、やや痛かったけれども数秒のことなので問題なかったです。座ったままの状態で麻酔を二度打たれ、ひと針だけ縫ってもらいました。外科医の方は本当に器用だなあと思いました。
この日はA先生とB先生を含む三名の医師が診察室に来ていて、全員で私の傷の様子を見てくれました。その時に、自分は大変な手術を受けたのだなあと実感しました。そして、生存率が高いとはいえ自分はがんなのだなということもあらためて思いました。
ドレーンが取れたので退院予定日が決まり、シャワーにも入れるようになりました。抗生剤の点滴もこの日で終了のため、夜は点滴の針を抜いてもらえました。ひさびさにからだに何も刺さっていない状態で眠れることがとても嬉しかったです。

入院7日目

朝、血液検査のための採血がありました。その結果に問題がなかったので、予定通り翌日退院できることになりました。
甲状腺機能にも今のところ問題はなく、薬を飲む必要はないそうです。
この日は抗生剤の点滴もなかったので、荷物整理をしながらのんびりと過ごしました。

入院8日目・退院

朝の最後の診察で抜糸をしてもらいました。傷を保護するテープの使い方など教えてもらい、退院後の通院予約も確認しました。
病室に戻り、荷物をまとめ、必要な書類を提出し、午前中に無事退院できました。

持っていってよかったもの

ストロー
必須だと思います。上を向けないため、ペットボトルにつけられるタイプのストローを持っていきました。コンビニでもらえるようなものでも十分です。
のど飴
正確には入院中にコンビニで買いました。
全身麻酔の時に挿入される気管チューブの影響で、全身麻酔後は喉が痛いです。私はこの痛みが一週間ほど続きました。龍角散がおすすめです。
使い捨てショーツ
退院後の洗濯物をなるべく減らしたかったので、ショーツは使い捨てにしました。(院内着とタオル・バスタオルはレンタルしました。)めちゃくちゃ楽だったのでおすすめです。Amazonで7枚入り980円くらいのものを買いましたが、素材が綿で、使い捨てのわりにしっかりしていてよかったです。
かかとがあるタイプのスリッパ
これは病院から「転倒防止のために、院内では着脱しやすいかかとがあるタイプの靴を履いてください」という指定があったため準備しました。最初はいつも履いてるスニーカーで過ごそうとしていたのですが、手術の時や就寝前、シャワー後など、スリッパの方がいろいろと楽でした。持って行ってよかったです。
A4のクリアファイル
入院前だけでなく入院中もいろいろと書類を渡されるので、クリアファイルが一枚あると安心です。





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