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自選六十六首

生肉をどんどん食べる 世界じゅうに友だちがいる気になってくる

信じるよ君の絶対音感を いまの信じるよはどうだった?

へんなグミいっぱいくれる先輩がいますタピオカ味スイカ味

こんな日もどこかでだれかが本当に会いたいひとに会いにいく日だ

さみしいのが多様性だね さみしいねって言い合えるって信じていたね

生きたいね 濡れたページは丁寧に剥がしてあげる 今日も明日も

無理をしてでもぜんぶ買う色違いはあらかじめ回避できるせつなさ

手づくりのドレッシングをかけすぎたり足りなかったりさびしかったり

極端な性格だよね永遠と一瞬だけが思い出なんて

いまはもう更新されていないけどたまに夜中に眺めるブログ

思ったよりからだがあつい 泣くときに耳さわる癖 彗星みえた

いいことを教えてあげる冷蔵庫にフランボワーズ入っているよ

人生は短いけれど風呂上がりに飲む牛乳はうますぎますね

似合うってよくわかってるセーターを私は燃やしてみたい気がする

あなたにはコアなところを見てほしいそこじゃないでしょそこでもないよ

文句ひとつ言わずに三回乗り換えて会いにいくのが私の健気

この世には「良い人」なんていなくってただ「合う人」がいるだけなんじゃ

あかるさの量販店を歩きつつ彼のどこかをずうっとさわる

電波時計売り場にならんでいるものはちいさな毒のようなものかも

キスをした場所はかつての港です 伝える相手がもういないけど

年輪を孕んでねむる 植えられて時間は伸びるためだけに来る

記憶に似たシステムがある ふれたときすこし冷たいのは君のせい

小さいね みんなにとって懐かしい場所となりつつある庭で会う

なるほどね噓を噓だとばらさずに雨のシーンで終わる映画か

ドリンクバーみたいにいろいろ飲みたいよ本命なんて決めたくないよ

ファミレスは安くてうまいだけじゃなく外のぼくらも照らしてくれる

似ていると思える人ならいくらでもいたのに君と分ける牛乳

いいことを教えてあげる冷凍庫にキャラメルホリック入っているよ

最高の一首ができた次の日にまた最高の一首ができるぜ

交換が可能なままにしておこうその中でまあいろいろしよう

過去作を追いかけているところです もうすぐぜんぶのあなたに会えます

あこがれることもすくなくなってきて池に落ち葉がただ浮いている

誰のっていうかいつでも置いてあり私もたまに履くのサンダル

中指にグリーンゴールド混じってる指輪だらけの手で撫でてくれ

今は弟が使ってる本棚にたぶんまだある森見登美彦

お祭りの日も夕方にさしかかり去年と来年の真ん中が今

自転車のシャツの背中のふくらんで橋の途中で大田区になる

引き出しは壊れてしまった かつてには想像もつかなかった仕方で

怒り方わからないから道なりに二時間あるいて九時間ねむる

なんだあの高校生は女5人男1人で下校してるぞ

いままでにあなたが歌ってきた変数「君」に私を代入していく

買ってきたものを冷蔵庫に入れているうちに忘れちゃったアイディア

小さいが一生消えない怪我をして結構いやだけどしょうがない

彼が君、君が私たち、私たちいつも二個ずつ買ってしまうね

あなたへの嫉妬が底からかき混ぜた食べるラー油のように気持ちいい

ここまでが川だったのかどこまでが私なんだろひとりごとだよ

あるのなら心に底があるのなら心の底から君を憎むよ

日が永くなってきたねとどちらかが言ったあの日がたぶんはじまり

本棚をひっくりがえして語り合おう もう片付ける必要もない

会いたいと言いやすくなる会えないと分かってるから無責任かな

まだこんなにあるのにいつか底をつく日のことを考えてしまうな

別にお酒を飲みたいわけじゃないので昼にどっかのカフェで会おうよ

ねえちょっと散歩してから帰ろっか なんだかんだで君くらいかも

音が涼しい、みたいなことをすんなりと言われてそれきり忘れられない

夜なのにアイスコーヒー飲んじゃおう あざといくらいに鳴る波の音

他人から見ればほとんどゴミだけど、みたいなことが溢れそうです

思い出は歩いてこない思い出はそもそも足とかも生えてない

わかりみが深い デジタルデトックス 特急あずさで向かう よきよき

終わらないかくれんぼにもう笑えない七月 麦茶も捨ててしまった

ひとつだけ削除してない動画には覚えていたい君だけがいる

沖縄じゃないのにオリオンビールのむ 恋人じゃないのにキスする

いつからか会わなくなった人たちの数の多さよ夏に降る雨

儚さなんてぜんぜん良くないほんとうは落ちない花火をずっと見てたい

谷底はのぞくと怖い Tシャツの裾は絶対はなさないでね

ああこれは思い出になる校庭に西日がつよくつよく溢れる

とてもながい夢をみました ずっと歩いてずっと喋っている夢でした

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