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連作短歌

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2024年2月の記事一覧

連作短歌「昼は梢で眠っているが」

初めてなことをやりたい履きつぶしたのと同じのをまた買うとか 横顔を見過ぎて窓の外までの白い光が記憶の全部 ストーブの囲いに肘をのせながら休み時間を魔術でのばす

連作短歌「マイマイガ」

性格の不一致なんて愛おしいことが起きると信じる力 気を合わせ文化を合わせ目を合わせ失敗できる心のみぎわ いつまでもエレベーターがとまらない私がそれを願ったせいだ

連作短歌「すぐかいつか」

仕事辞めようとしている友達の身体の見たことなかった部分 警察を呼んだり野次馬が来たりはめんどくさいと思ってしまった 日本語に日本語が重なっているエンディングロールの始まりに

連作短歌「さち」

出来事をどんどん引き寄せてしまう彼を正直気の毒におもう 趣味じゃないシミュレーションの西口の階段のぼるヒト型うさぎ こんなにも実家の近くにずっとある来たことなかったあじさい寺で

連作短歌「情と景」

信じられないけどまだまだ使えてる電気ケトルと独身の姉 ずれていくこたつの布団が完全に外れたら春、電話をかける 映像の概念的な嬉しさを捕まえている卒業制作

連作短歌「感じて」

踏切の左上にある居酒屋の提灯とても赤くて多い 偶然は機械のように輝いて残酷性を許してくれる? 自分で思うくらい自分が単純でいてくれたなら、いつかね、でいい

連作短歌「おのおの」

見取り図に住人たちはうごめいて明日の準備したりしている 昔とはぜんぜん違う性格と話し方でもこんなにも春 ねるまえのオリエンテーションではおもいおもいのストレッチをしたりした