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連作短歌

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2023年12月の記事一覧

連作短歌「ぬくまるくるまる」

歩道とは呼べないような白線の外側をゆく 縦にふたりで たまにしか会わないことのリアリティ すこし冷たい風がより好き 二十年ぶりを笑ってすぐ馴染む先輩と先輩のおちつき

連作短歌「ソング」

もしかしてさっきからくちずさんでるそれってさっきからのそれって 数分に一度こちらを見てくれるのを楽しみにしながら話す 去年からあたためていたBメロを君は今年と思って褒める

連作短歌「フレーバー」

今日だけははしゃいでしまいそうな日が加害性だと思う  終電 エクレアを座ってたべた公園を閉鎖しようとする仮囲い なつのよる停まったままの救急車から消毒のにおいがしてた

連作短歌「残念」

反対の気持ちを言ってしまう癖 きっかけ以外はあなたと同じ あの頃のように自由でないことを見過ごしたくて高速に乗る 明後日が昨日で今日が明日なら次へと進む関係性や

連作短歌「アンフラマンス」

海を見に行ったと言ってその人はおいしいものを笑って食べる 腕からの指であなたを参らせる これはまだ知らない対処法 三番線みたいだけれどここはどこなんだろう何駅なんだろう

連作短歌「話してくれてありがとうって言われた」

あふれたらあふれたままで手のひらに夜の光の重さを載せる 思い出しながら歩いているときはひとりで生きている気もしない 伏線を閉じるみたいに話してくる不安をわずか わずか引き取る

連作短歌「清算」

川の上に立って遠くの山を見る流れのなかにあくびを入れる ポケットに一万円を見つけたら僕を誘って雪の黄昏 めずらしく叶わないまま消えるかもしれないことを言う橋の上

連作短歌「大会」

ゆきのまち漫画のなかに出てきてはぷちぷち光る電卓の4 ひねり出す記憶のなかの冷凍庫のなかの四角い暗い空間 待ち合わせとか5年ぶり3度目の春大会のような息継ぎ