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連作短歌

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2022年8月の記事一覧

連作短歌「自由」

どちらからともなくなんて噓ですよ金平糖の白を飲み干す この度はBGMの再生を停止くださり感謝してます 透明な牢屋のなかで祝われておいてほしいと強く想った

連作短歌「なりゆき」

ほんとうに何も真面目に考えてなくてごめんなさいの手料理 恋人、と書き出してみればすらすらと言葉がつづく気になってみる 後悔をするかもしれない心配をしてあげるのはそろそろやめる

連作短歌「本音と建前とジョーク」

伝えたいことがないのであらすじを説明してた神社の奥で まだここに並んでいない飲み物のどちらにするか悩んでしまう ジョークだとバラすのがいくらなんでも早すぎたんじゃないかと笑う

連作短歌「部外者」

つるつるじゃないか 探せば片想いされていた日もあるんじゃないか ひとくちだけもらったレモン牛乳が甘すぎたせいなんだと思う 渦潮をつくりたかったわけじゃない真正面から目を見たかった

連作短歌「木立性」

振り回されているつもりだったのが脆弱性のはじまりだった 独特な意見を述べて楽しいと言わせてみたい肘のかさぶた 可哀想だとおもわれているのなら犯してみたいスピード違反

連作短歌「C型」

はずされるときにわずかに反射して緑が春を連れ去るようね 遠いよと君がいうたび距離でなくこころのほうで揺らされている さぶすくりぷしょん ことばのすくなさがやさしさになる非凡なよるに

連作短歌「山手線と扇風機」

中指のほくろをなめてほしくなる夏のホテルの名をほしいまま 影響とパンを与えてくれそうな人の後ろについて歩いた 平面に息が詰まった2リットル僕だけのものにしておくために

連作短歌「軽作業」

台風の音に包まれている犬・猫・兎・ハムスター・インコ あした日帰りで諏訪湖へ散歩しに行こうと思うけど来る?だってさ ウマ柄のシャツを着てきた人がいてそのまま恋してしまったのです

連作短歌「名宛人」

自意識が過剰と思ってそのままにしてある送信エラーのごめん あきらかに何かをおもっているような富良野の 雨が強くなる前に、 ナーテニンと講師の人が言っていて楽器か薬の名前かと思う

連作短歌「笹舟」

距離感を摑み損なっていますと書いてるような表情だった ムカついていること自体がなんらかの証左に見えているんでしょうね。 「海岸」と言ってみてって言われたりあいつは変なともだちだった

連作短歌「クォ・ヴァディス」

目薬を使って返されている今 忘れられそうになっている顔 帰ろうとする音が聴こえはじめて 思い出を知る枕を干した だれひとりいなくなりそうな気配に立ち向かおうとしている花瓶

連作短歌「他人と共有した、知らせた」

ふざけてるうちに涙腺ゆるんでる夕方くろいファイヤーキング 明らかなことがいくつもありますね たとえば君はとても優しい 白米のかわりにカリフラワーばかり食べさせられているような日々

連作短歌「夏旺ん」

背景がカリフラワーの油絵でノースリーブはまだやめておく やらないと言ってやったりやると言ってやらなかったりしたおままごと 外からの風が入ってきて言葉遣いもどこか変わりつつある

連作短歌「エスケイプ」

遠すぎる趣味を質問攻めにしていると細くて透明になる うどん屋をもし父親が継いでたら僕もなってたうどん屋さんに お祭りの倉庫の埃の匂いとか足裏の感触がめんこい