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連作短歌

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2022年3月の記事一覧

連作短歌「5と9と0」

不自然な声を黙って聴いている身近な人がみんな闇堕ち 忘れてるふりをするのが気持ちいい呼吸を整えるための遅刻 駅前の畑をみんな通り過ぎタイムカードを鳴らしてねむる

連作短歌「ぼろぼろ」

お茶漬けをかき込みながら清原のさよなら満塁ホームラン見る あのひとの立場で見たらどのような感想になるかまじわからない かさぶたを小指の腹で撫でているそこを見てないふりをしながら

連作短歌「平穏さ」

寝言でもいいからなんて 眺めてる最後の顔の記憶が写真 簡単な足し算なのにまちがえて日々の平穏さがひとつ減る 励ましてくれる例えば経済面とおくてラグが気になるけれど

連作短歌「シルエット」

始まりの音に心を摑まれて数十年はあっと言う間だ 逆に手を繫いでみませんかと言って笑ってくれた暖房ききすぎ いまはまだわからないけどメモ帳に書き留めてそれを庭に埋めてみた

連作短歌「MI DO RI」

キウイ柄のシャツを着てきた人がいてそのまま恋してしまったのです 行けなくて終わってしまった展覧会そのまま見れてないままの池 ねむれない私の相手をしてくれてそれが負担になっていたので

連作短歌「インタールード」

夢の話をすることを禁じられ代わりに雲を数えて過ごす 窓の外がとても明るく暖かくなっていそうで眺めてしまう ユニセックスと書かれたシールが手の汗でもろもろになっている君の傘

連作短歌「もういない」

昼と夜が逆転しすぎて早起きをした人みたいに食べるトースト 鮮やかに心に残った一文がどこにもなくてページをめくる 飽きさせない魅力がぼくに無かったということなのでしょう花曇り

連作短歌「東京」

東京へなんて来ないで地元で働いてあの子と結婚した人がいる 非正規というわけじゃないけどなんかやってられないという気になる ピクチャ・イン・ピクチャの中で動いてる女子校生がこちらを観てる

連作短歌「せせらぎ」

東京の川のせせらぎ聴きながらもう叶わない夢のことなど 温玉が冷たくて美味い朝でさえ分厚い壁に守られている ほんとうはずっと飲みたいと思ってたバナナジュースを奢ってくれて