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連作短歌

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ふだんの短歌です
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2022年1月の記事一覧

連作短歌「あたりまえ」

まだ思い出したことない思い出はきっと思い出とは呼ばないよ 削られて無になるまでのさまざまな途中がならぶ彫刻の森 ここぞというタイミングにて大胆な比喩を言ったらみんな無視した

連作短歌「遠回り」

きみと会うときはかならず歩きやすい靴を履いてく、それが夜でも 削除した動画をなんとか生き返す手順を試すような季節に いつまでも曲がらなかった道のことは気にしてしまうので遠回り

連作短歌「Somewhere」

コンビニの前で煙草が吸えたのでおそらく東京以外のどこか 行きつけの店というのに憧れて3回通ってみたりしたバー 一月の地元のスーパー銭湯の露天浴場の大きいテレビ

連作短歌「てくてく」

死にたいと思ったことなどないですぜ、みたいな顔で飛び跳ねるきみ きみがふりむいてなにかを言う ぼくの立ち位置はここでいいみたいだ 聞き取れなかったその言葉もぼくの座右の銘にして生きてくね

連作短歌「悪夢」

噓じゃない話を時折しのばせていることをまだ誰も知らない 寝る前に日記をつける習慣をやめたらすこし悪夢がへった さわれるかさわれないかの距離のこと奥二重って君は呼んでた

連作短歌「ロジ」

綿棒が散乱してる夜 これはいまあたらしくできた比喩です 裏方がいいと思ってやってきた27年間だったけど ありがとう濃いめのレモンサワーちゃんいつか札幌いくし許して

連作短歌「ビリジアン」

ブックオフ川崎モアーズ店で泣く昔の自分の背中に触れた Kindleかと思ったらkobo 友達はむかしカナダに行ったことがある びよーんと、正気が飛んで行ってしまう、ひとことで仕留めるよ「卵黄」

連作短歌「シャワー」

間隔が空いてしまって忘れられまた断ってしまうお誘い 始発まで働いたあと意地悪にアイデアマンに説明させる 前提を共有するのが億劫でゲータレードのシャワーを浴びる

連作短歌「まーがるん」

目が覚めるほどに先まで見通せる細い路地があり曲がってしまう 行ったことないラスベガスのエピソードを複数聴いて行った気になる 豪徳寺駅から豪徳寺へ歩く道を尋ねてきた若者と

連作短歌「狂い咲き」

ベランダの柵がおへそと同じ高さで鉄棒が思い出される お違法のおアップロードのおラジオで話されていた漫画をポチる 半年後いなくなるって決まってる人との距離が縮まる急に

連作短歌「冬公園」

スナック菓子みたいな弁当配られて喜んでいます スキップもして 目に見えるものを描くだけでも届く狭さ、てんとう虫コミックス 準備したきもち伝えることもないままでたまたまある花を見る