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学生さんの研究室選び

イリノイ大学の山田かおり(@KaoriYamada01) です。アメリカ研究生活3週目は、ラボ選びの話。

日本にいた頃の話

 私は日本で大学、大学院(修士と博士)に行ったので、自分自身が所属ラボを選んだのは学部3年の終わりごろの話です。先生方のことは授業での姿しか知らず、おもしろい授業をした先生、研究室の課題、くらいしか情報がないなか、同期が希望を出し合って、最大4人の枠を超えたら話し合いで譲り合うような感じでした。先輩が、うちは厳しいよ、やめときなよなど助言をくれたのに、「私研究すごく頑張りたいんで!厳しいの大丈夫です!」とか呑気なことを言って……まぁ結構悲惨なことになったんですけど。

アメリカのラボの話

 時は変わって自分がラボを持ってからの話。あれから何年だ…

 アメリカでは大学院生は3つのラボをロテーションしてから最適なラボを選べます。(学部生がラボに入る手もあって、それは第1回でちょっと話しました。)まずは教官側が15分のプレゼンで自分のラボのアピールをします。それで興味を持ってくれた学生さんが連絡して来てくれて、面接をし、人数が集中しすぎたらずらすか断るか、ってことになります。1回目のロテーションで2人希望出してくれたので、先に来た1人を受け入れ、2人目は、2回目のロテーションにずらしてもらいました。さて、ロテーションはわずか2か月、細胞も触ったことない、ネズミも触ったことない、そんな学生さんに短期間でなんか出るようなテーマを提供して一から教え、実験に失敗したら問題を解決し、発表まで持っていく、結構大変なタスクです。

学生さんの為になるシステム

 一方、学生さんからすると、いろんなラボで割と手取り足取り基本を習えるチャンスでもあるし、教官のひととなりもラボメンの雰囲気も、自分やラボメンが実験失敗した時の教官の接し方も教え方も、全部一通り経験できるわけです。2か月もいればずっと猫をかぶるわけにはいきません。

 教官の側からしても、学生さんの姿勢ややる気や飲み込みの速さや弱点も長所も見えるので、これから何年にもなる関係が本格的に始まってしまう前に、お互いのマッチングができるシステムです。

 当大学当学部だと学生さんの数<受け入れラボの数なので、学生さんが実質3つのラボのうち一番気に入ったところを選べますし、教官はその際に受け入れるか否かは選択できますが、余程のことがなければだいたい受け入れます。

 若く活気のあるラボでPI自らまだ現役で実験をするラボや、経験豊富で老獪なPIの元多くの中間管理職がラボ内でせめぎ合うラボや、それぞれの良さも悪さも全部経験して、一番自分に合うラボを選ぶことができるんです。学生さんにとって、この上ないいいシステムだと思います。

ラボ選びは大事なので

 私が日本で所属ラボを選ぶ時もそんなふうに、先に知っておくことができたら、どうだっただろう。研究テーマはもちろん大事、それに興味を持てるかどうかは、研究者(の卵)として絶対に大事。だけど相性や環境や設備やラボメンとの人付き合いや、長い時間密な時間を過ごすラボだからこそ、それはすごく大事なんですよね。

 教官側としては、それなりに時間を取られて一生懸命お世話して、やっぱり別のラボに行きますわーとなると、ガクッとすることもあるんですが、学生さんが好きなラボを選んで、いい院生生活を送ってくれればと思います。

絵:Designed by katemangostar / Freepik

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