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読書日記 2024年5月

2024.05.28


戦後日本デザイン史 内田 繁 (著)

-2011/8/26

建築・アート・ファッション・プロダクト・インテリア、全分野を貫く戦前から21世紀初頭にかけてデザインの歩みを内田氏の現場感覚を含めて綴られている。

街並みや再開発、サブカルチャーについても言及されており、大変読み応えのある良著でした。みすず書房さん、どこでも定価で買えるようにしてもらえないでしょうか。

ペルソナ展の山城氏による批評の言い回しがお気に入りだった。長いので引用はしないでおく。

あとで見返せるように記録

八〇年代の初めの日本人デザイナーの表現は、言ってみればマイナスの理論にもとづくものだった。材料と無装飾と構造という点で、日本の伝統的建築のうちで伊勢神宮から桂離宮の流れに、日本の造型の特質を指摘したタウトにも通じる日本の美学が持っている不完全性、意識的な気落であった。

アクセサリーは取り外し、服の形はといえば、体とは無関係に存在していて、服自体は、西欧的な観念からすれば形を持たない。色は黒、あるいは白。つまり色のない色。その結果として素材自体のテクスチャーの重要性がクローズアップされることになる。しかもこのとき、これらのテクスチャーは、わび、さび、という極めて日本的とされる美のジャンルに、相通じるものだったのである。

p.292

日常の美とは「人との融合の美」、人の生き方としての「作法の美」「しつらいの美」「身だしなみの美」そして「質素な生活の美」などだろう。これらは人が生きていくための基本ではないだろうか。そうした時間をつくりだすのがデザインに課せられた大きなテーマだろう。

p.234

工作舎に関与したデザイナーはみな多かれ少なかれ杉浦の影響を受けているが、中垣信夫や鈴木一誌などの杉浦一門のほか、市川英夫、戸田ツトム、羽良多平吉、工強勝、松田行正、祖父江慎といったその後のエディトリアル・デザインを牽引するデザイナーたちが勢揃いしていた。

p.256

柏木博は、ポスターにおける基本的な表現のボキャブラリーは二十世紀前半に形作られている、と言う。第一にロシア・アヴァンギャルドやバウハウスの抽象的表現と構成主義的表現、つまり簡素な図像を構成するために図を平面化し、抽象化する、つまり、視覚にとって余計なノイズとなるものを取り除く表現方法がある。第二にモンタージュやコラージュという表現がある。これらは時間と空間を再編するのだが、ロシア・アヴァンギャルドによって洗練された表現だと言える。そして、第三の方法がアメリカ・ポピュリズムであり、アメリカの商業主義、あるいは広告的表現である。それらは大来的な消費社会の表現と深く関わっているという。

これらはすでに日本のポスターに表現されていたが、柏木はさらに、日本のポスターに特徴的な表現として、第四番目の「日本的なるもの」を挙げている。

p.46

多くの日本人は、デザイン、とくに近代デザインに知的財産権があるなどと考えてもいなかった。むしろデザインをいかに正確に再現できるかが重要で、デザインを技術の問題としてとらえていた。そこにはデザイン研究などなく、結果だけを模倣するような態度が植えつけられていた。それは無理のないことで、日本のデザインは明治以来、西洋文化、とくに西洋建築を習得するところから出発している。雑ぱくに言うならば、いかに上手に文化、技術を真似できるかであった。

p.51

一九五四年に国立近代美術館で開催された(グロピウスとバウハウス>展のために来日していたバウハウスの創始者ヴァルター・グロピウスが柔沢デザイン研究所を訪れ、「日本のバウハウス」として絶賛したと伝えられている。
かくして桑沢デザイン研究所には、桑澤洋子を支える当代一流の作家が参集した。勝見勝をはじめ、佐藤忠良、清家清、石元泰博、原弘、亀倉雄策という具合である。その息吹を受けた多くの学生が巣立ち、その後、デザイン界で重要な位置を占めていく。

p.361

仮面の告白 三島 由紀夫 (著)

-2003/6/1 

余談ですが、私は新潮文庫の小口の天が綺麗に揃っていないのがすごく好きです。理由はない。本屋の文庫コーナーに行くと、なんとなく新潮文庫から見始める。

しかしながら私の最初の恋が、どのような形で終末を告げるかを、おぼろげながら私が予知していない等はなかった。ともするとこの予知の不安が、私の快楽の核心であるのかもしれなかった。

P.70

生き上手 死に上手 遠藤 周作 (著)

1994/4/9

Amazonでの購入履歴を見たら、2020/12/31に購入していた。どんな気持ちでこれを大晦日に購入したのか当時の自分に聞いてみたくなる。

『海と毒薬』で有名な遠藤周作。海と毒薬は暗くてモヤがかかったセピア色の風景がズンと続いていきつつ、希望がたまに垣間見える残酷さが際立っていた、気がする。

エッセイが47編ある。著者はあとがきで「読者も寝っ転がって、気楽な気持ちで読んで下さい」と言っている。なんとなく悩んだ時にパラパラめくるとヒントが見つかりそうなお役立ちアイテムかも。

同じ文学部出身なので、たまに在学時のエピソードも出てきて面白い。

完全教祖マニュアル 架神 恭介 (著), 辰巳 一世 (著)

ちくま新書, 814 新書 – 2009/11/9

会社の先輩に勧められた本を2年ぶりに読んでみた。珍しくKindleで購入していたが、物理でも欲しくなった。宗教のみならず、多くの人の心を動かしてきたこれまでの集団活動について、ゆるく実用的に?知ることのできるウィットと皮肉に富んだ本。

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