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教育格差 松岡亮二 感想

●概要

 私たちはどんな生まれであっても平等である。と当然のように考えるが、教育を受ける格差が存在している。
 本書は上記の事実を社会階層と社会移動に関する全国調査(SSM)を利用し、明確にする。第1章では各時代における格差の調査、第2章からは各教育段階(幼児教育から高等学校教育)における格差の調査、第6章では日本と諸外国における格差を比較し、メカニズムを把握する。第7章では、これまでの内容を踏まえて、筆者がわたしたちどのような社会を生きていきたいのかを論じていく。

●感想

 みんながすべからく同じ教育を受けて、同じことをして同じところへ向かうわけではない。だから、同じことをする必要はないと思う。けれども、生まれ持って格差があるので、学習は諦めましょう。努力なんてしても仕方がない。というのはなんか違うよなー。と思う。
 最近、可能性をなくさないよう、少しでもスタートラインに立ち遅れてしまった人たちをどうにかできないかと考えている。

 知人は塾の講師をしている。勉強が苦手な子供たち、勉強が嫌で諦めている子供たちに対して、少しでも勉強を好きになり、学ぶことを諦めないでほしい。という志をもっている。(めちゃめちゃ素晴らしい志だと思う)
 一方、現実としてはうまくいっていないようで、最近の愚痴がひどい。(愚痴ではない、理想との葛藤であり悩みと叱られそう。)

 その塾は教室に一斉に子供たちを集めて、子供たちは自己にあった教材を学習していく。不明点や間違いについては、質疑を受けた講師や、巡回している講師が指導をする形式をとり、それぞれの教材の単元ごとにテストがある仕組みだ。
 子供たちが自己に合った教材を自分で解いてステップアップしていくことで、自立して学習ができるようになると謳っている。

 ただ、現場の講師から言わせると、学校のような環境(一斉に集めた場所)で個別指導を行うので、一人あたりに対する指導時間が限られてしまい、自立学習とは程遠くなっているようだ。
 そうなると、勉強が苦手な子供たちが、自立して勉強できるようになるわけではなく、いつまでも教材が進まなかったり、あるいは勉強への苦手意識を持ったりして、最終的には辞めていってしまうのだと。知人の志からは離れていき、できない子ができないままで、一人でできる子だけがどんどん進んでいく傾向にあるようだ。(本書の格差の再生産とでも言うのか)

 先日、こんなことがあったという。
 ある幼児のアルファベットの読み書きの学習で、耳で聞きA・B・Cと発音をしていくのだが、その子は宙をみながら、発音をしていた。知人は、Aという発音がどの文字か認識できないと学習の意味がないので、教材を見ながらやるよう話をしたが、その子ばかりに注力することができず、とうとうその子の単元テストでは、どれがA・B・Cかを理解することができかったそうだ。

 一人に時間がかけられない場合どのようにすればよいのか。知人は周りや先輩へ助言を求めたが、単元をやりなおすこと、テストよりも前の単元をやり直すこと。と言われたとのこと。
 それも一理あると思うが、学習が進んでいない子供や今回のように集中が続かない子供、教材の意図が理解できていない子供については、個別の時間を設ける等、柔軟な現場の運営が必要なのではないか。そういった意見を挙げたが、それは、その塾の方針とは異なるので実現できなかったという。
 

 僕はうーんという話しかできなかった。塾としては、何度も単元をやることで理解が進むと思った発言かもしれない。あるいは、一企業ではあるのでそういった子供を排除することで、より運営がしやすくなり、売上UPにもつながることを意識したのかもしれない。こういうやり方だからこそ、リーズナブルな月謝でサービスを提供できているので、その子の家庭が違う学習塾や個別指導を選択すべきなのかもしれない。

 血が流れること(教育格差が生まれてしまうこと)は必然だと本書では言っているが、血が流れることを是とはしていない。
知人の悩みも一人で何とかしようと抱え込む必要はなく、その子にとって適切な環境が現在の塾以外にあるのかもしれない。一方で、目の前で血が流れそうなのを経験している知人に対して、突き放して考えましょう。とは言いにくいのもある。幼児年代から格差が生まれると記載がある本書で、幼児年齢の指導から見直すことで少しでも格差は縮むのかもしれない。

 話としては虚実あるだろうし、一場面を切り取っただけで、実際はここから、少しづつその子ができるようになったかもしれない。

でも、本書を読んで改めてどうにかできないものかと考えるようになった。


で、いろいろ調べている途中です。
●チャンスフォーチルドレン
https://cfc.or.jp/
寄付を募り、寄付金を経済的な困難を抱える家庭へ塾クーポンとして提供する。クーポンを利用して、補助として利用できる。

●無料塾
http://class-homeless.sakura.ne.jp/archives/6109
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/0000080240.pdf

こちらも生活保護や貧困家庭と認められたところが中心で受けられる制度みたい。
でも、一般的に塾といえば、中学生世代が多く、小学校や幼児から出遅れてしまうという感じだと、この仕組みでは差を埋めることはできないのかな。

とりあえず、感想と調べた情報は以上。

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