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【#11名古屋市3/20】技術革新が拓く、名古屋の社会実証プロジェクト! NAGOYA Open Innovation Day

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NAGOYA Open Innovation Dayとは

技術の研究開発や社会実装を促進し、先進技術を有する企業等の集積を図るため、様々な課題に対応する先進技術を活用した社会実証を名古屋市が支援する事業のこと。フィールド活用型支援事業では先進技術を有する企業等とフィールドをマッチングし、社会実証を実施した。

採択企業4社の実施報告レポート

U30と行政の距離を縮める広報!:株式会社スタメン

市担当部署:市長室広報課

●背景

デジタル技術の革新により、紙媒体やテレビからインターネットやSNSへと若年層のメディア環境が変化している。名古屋市では、市公式ウェブサイトやSNSの活用を推進してきたが、若年層への情報発信はまだ十分でなく、これが長年の課題となっている。若年層に特化した対応が難しい状況にあり、新たなアプローチが求められているため。

●実現したい未来

若年層を含めた市民・事業者に対し、信頼される広報活動を展開し、名古屋市に誇りや愛着を感じてもらうこと。

●実験内容

本研究では、スタメンが提供するオンラインサロンサービス「FANTS」を用いて、名古屋市の情報発信を支援するU30世代のコミュニティ形成を試みた。実験の目的は、名古屋市応急手当研修センターで実施されている救命講習において、U30世代の参加者を増加させることであった。SNSの活用方法を見直し、特にInstagramのリール機能を中心に動画発信を実践した。

●実験結果

1週間で総再生数3万回を達成したが、結果としては8名の参加者となり、少人数での開催となった。実施期間が短かったため、外部への広報効果は十分でなかったものの、継続的に発展するオンラインサロンの基盤を築くことができた。特命広報官および担当課の満足度は高い結果になった。参加者や担当課からは、期間は短かったものの多様な人と取り組むことができ、刺激になったという意見が寄せられた。

●今後の展望

今後の展望として、オンラインサロンの運営においてオフラインでのコミュニケーションも重要であることが分かった。また、コミュニティ形成にはある程度の時間が必要であるという認識が得られた。本実験では、短期間かつ少人数での運営だったため、他のコミュニケーションツールとの差異は感じられなかった。今後は、当初から大人数を対象とするか、年度を積み重ねて大人数へと発展させるような事業を行うことで、オンラインサロンの特性を発揮できると考えられる。

xGメディア事務局コメント

このプロジェクトはU30世代と行政との距離を縮める新たな取り組みとして非常に興味深く、刺激的であると感じました。実験的ではありましたが、オンラインサロン「FANTS」を通じて多様な人たちとつながり、名古屋市の救命講習への関心を高めることができたのは素晴らしい成果だと思います。期間が短かったにもかかわらず、参加者や担当課からも良い評価が得られたことは、今後の展開に期待が持てると感じます。今後は、オフラインでのコミュニケーションも重視し、より多くの人々にこの取り組みを広めることができれば、名古屋市に対する愛着や誇りを感じる市民が増えることでしょう。

大規模災害時の電話に迅速に対応したい!:株式会社サイバーエージェント

市担当部署:スポーツ市民局広聴課

●背景

名古屋市は、今後30年間で南海トラフ地震の発生確率が高待っており、市内コールセンターやチャットボットでは年間多くの問い合わせに対応しています。大規模災害時には、安否確認や避難所情報などの問い合わせが急増し、市民の不安が高まると考えられる。
通常のコールセンターが稼働できない状況で、災害対応の人員確保が難しいことから、電話応対に迅速に対応できるシステム構築が必要であるため。

●実現したい未来

自動音声応答システムやAI音声により、大規模災害発生時に市民からの問い合わせに迅速かつ適切に対応することで、市民の不安や疑問を解消し、行政サービスの維持向上。

●実験内容

サイバーエージェント社の「AI電話エージェント」というボイスポットの仕組みを利用したプロダクトの実証実験を行った。市職員向けモニター利用は2回、地域住民向けモニター利用は3回実施され、各実験で10名程度が参加し、意見交換を行った。

●実験結果

実証実験の結果、庁内における課題意識が高まり、FAQの修正や追加が実施された。しかし、AIの質問認識と回答の精度が低く、回答の網羅性が不足していることが明らかとなった。また、市民の問題解決に至らない回答内容も存在した。地元住民は、AIに慣れておらず、自由に話しすぎる傾向があり、自身が聞きたいことを端的に説明できない点が課題であった。質問は細かい内容も含めて多岐に渡るため、どの程度の質問に対応できるか確認していく。

●今後の展望

市民が自動音声に不慣れであるため、実用化に向けて市民に慣れてもらうための訓練等が必要である。次に、災害時に稼働した場合の情報更新に関する課題が存在する。災害時用のFAQは回答内容が決まっていないものが多く、事前に実用的な内容で構築することが困難である。また、災害時の情報については基本的に市のウェブサイトに掲載されるが、現行の災害時の市ウェブサイトの運用では、システム連携が難しいことが判明した。他にも務手続き上の課題がある。現行の仕組みでは、災害発生後に別契約が必要となり、手続きに時間が取られることが予想される。運用開始が遅れる可能性があるため、契約事務等についても事前準備が必要であることが明らかになった。

xGメディア事務局コメント

実証実験では、市民の不安や疑問を解消するための取り組みが見られ、行政サービスの維持向上に向けた意義深い試みだと感じました。今後の展望についても、市民への訓練や災害時の情報更新、システム連携の課題に対処することで、更なる向上が期待できると感じました。このイベントに参加して、市民の安全や利便性の向上に向けた取り組みが進められていることを実感し、期待感が高まりました。

南部市場及びと畜場のスマートファクトリー化:イクスアール株式会社

市担当部署:経済局中央卸売市場南部市場管理課

●背景

名古屋市にある南部市場は年間20万頭、19,000トンの牛豚を出荷する巨大食肉工場であり、機械の故障が頻発している。機械の応急修繕を担う技能職員は、高齢化が進み退職が見込まれており、新たな職員への技能承継や育成が求められている。しかし、これまでの経験や勘に基づくノウハウは文書化されておらず、故障の対応方法も記録が少ない状況である。

●実現したい未来

経験の浅い職員でも、システムによる故障箇所と故障発生タイミングの予見や対処方法の提案により、機械設備の修繕が円滑に行えるようになること。

●実験内容

技能伝承および業務支援の目的で、現実空間に修繕や点検手順を表示するARソフトウェアの導入が、経験年数の浅い職員に機械の操作やメンテナンスを行わせる上で効果的であるかどうかを検証した。ARグラスを利用することで、画像・動画・PDFに対応したARマニュアルが使用可能となる。

●実験結果

事前知識のない未経験の職員であっても、一通りの点検作業を完了することができた。また、紙のマニュアルを持ち運ぶことなく、両手を自由に使って作業が行えるという利点が見えた。さらに、事前知識を持つ職員が手順を飛ばさずに支援ツールとして活用できることが確認できた。しかし、現場作業における安全性の確保や視界の狭さ、ヘルメットとARゴーグルを同時に装着した際の違和感が課題として挙げられた。また、快適にARマニュアルを使用するためには、動画撮影技術の向上も求められる。

●今後の展望

現状では導入が難しいものの、上記の課題が解消されれば、AR技術を活用した動画マニュアルの導入が可能となると考えられる。今後はこれらの課題を克服し、効果的な技能伝承や業務支援ができるARソフトウェアの開発に取り組んでいく。

xGメディア事務局コメント

AR技術を活用した故障対応マニュアルの導入により、経験の浅い職員でも円滑に機械設備の修繕を行える未来が実現できる点は魅力的だと感じました。また、現場作業の安全性や視界の狭さなどの課題にも取り組んでいく姿勢が示されており、今後の技術開発や適用範囲の拡大に期待が持てます。このような革新的な取り組みが、技能伝承や業務支援の分野において大きなインパクトをもたらすと考えられます。

粗大ごみ収集ルートの作成をもっと簡単に:SWAT Mobility Japan

市担当部署:環境局作業課

●背景

名古屋市では、月1回の粗大ごみ収集日に合わせて各家庭から申し込みを受け付けており、毎年約40万件の申し込みがあり、申し込まれた粗大ごみの点数は100万点を超えています。しかし、粗大ごみ収集においては、収集ポイントや収集物が毎回異なるため、熟練の技・経験によって収集ルートを手書きで作成している現状があります。このような状況下で、最新技術を活用して効率化を図りたい。

●実現したい未来

粗大ごみ収集作業の効率化DXおよび、誰でも収集ルートを作成できる仕組みの実現

●実験内容

粗大ごみ収集作業の効率化を目的として、配車組みやルート生成を行うルートジェネレーターと、そのルートを案内するドライバーアプリを導入して実験を行った。ルートジェネレーターは車両への割り振りコースを作成し、ドライバーアプリでは次の収集地点の確認、ルート案内、および収集完了確認が実施された。実証実験は実際の粗大ごみ収集において、タブレットでナビゲーションしながら紙伝票で申込品目を確認し、1両分の収集を実施した。

●実験結果

アプリケーションの使用により地図作成にかかる作業時間が大幅に短縮された。現行の作業手順である収集伝票の印刷から各車両への割り振り、そして収集コースの作成までの作業が、アプリケーションを使用した場合には申込データの加工からデータのインポートまでの手順に変更され、作業時間が3時間から15分へと短縮された。事務所職員からもルート生成までの時間短縮効果は非常に大きいとの評価が得られた。しかし、アプリケーションの利用に際して細かいユーザーインターフェースの調整が必要であること、データ取り込み時にデータ加工が必要であること、そして最適なルートの概念の判断が難しいことが課題として明らかになった。

●今後の展望

実証実験で明らかになった課題を解決した上で、実際の収集作業に導入し、その効果を検証することが計画している。具体的には、ユーザーインターフェースの改善やデータ取り込みプロセスの最適化、さらに最適なルート生成のアプローチを模索していくことが求められる。

xGメディア事務局コメント

ルートジェネレーターとドライバーアプリによって、地図作成にかかる時間が大幅に短縮され、環境美化収集などによる生活環境の改善に時間を割くことができるという点は、非常に魅力的です。今後の展望も明確であり、課題の解決に向けてさらなる改善が求められるとはいえ、この技術が実用化されることで、多くの市民の生活環境が向上することに期待が持てます。
た、名古屋市だけでなく、全国の自治体にもこのような技術の導入が広がることで、より効率的で持続可能な廃棄物収集システムが構築されていくと良いなと感じました。

xGメディア事務局まとめ

「NAGOYA Open Innovation Day」は、技術開発だけでなく、市民や企業が持つアイデアやノウハウを活用することで、市民参加型の地域づくりや、国内外との連携を強化することを目指していました。これにより、持続可能で効率的な社会システム構築に向けて着実に進んでいると思われます。

また、プロジェクトを伴走している市役所職員の方も『名古屋市をよくしていきたい!」という熱意が大いに感じられました。その点来年度以降の参加者も市職員の強力なバックアップを受けることができるでしょう。

以上、「NAGOYA Open Innovation Day」の魅力をご紹介しました。

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