【中学受験】学習方法の考え方・6年前期編
最難関中を目指すにあたり、6年前期中の学習において注意すべき点、意識しておきたい点をまとめました。
1.入試までの1年間を5段階に区切ると
①前期…立ち上がり期
②春期…立て直し期
③夏期…成長期
④後期…成熟期
⑤冬期・入試直前期
大きくは5つに分けられると思います。そのそれぞれにおいて、6年生(受験生)の学習スケジュールの立て方は異なってくると思います。①が今回の内容です。以下、この前期における学習方法の要点をまとめたいと思います。②~⑤についてはまたそれぞれの時期に書きたいと思います。
2.5年時と同じ学習スケジュールが6年でも通用すると考えない
中学受験生の新年度は2月から始まっているところが多いと思います。しかし新年度が始まって1か月がたった3月頃になると、うまく宿題や授業の定着を進めることができず、壁にあたってしまう、という人もまた多く出てくる時期になります。
この原因は、スケジュールの考え方にあります。5年時と同じ学習スケジュールでうまくいっていたから、6年でもそのまま通用するだろう、と考えてスタートしたのではないでしょうか。しかし、学年が変われば塾の時間割が変わります。(1週間あたりの)塾に通う日数や、1コマあたり、1科目あたりの授業時間・長さが変わる、ということにもなってくるはずです。これだけ大きく塾の枠組みが変わる中で、学習のスケジュールはそのままにしていれば、当然そこには「ずれ」が生じることになります。6年生をスムーズにスタートさせた人というのは、その「ずれ」をしっかり把握し、上手に対応して立て直しているのです。
3.「ずれ」のポイント
①「いつまでに」が「ずれ」ている
スケジュールを上手く回すことができていない人は、ここを間違えています。「いつまでに」と言われれば、「次の授業で宿題を提出するまでに」と考える人も多いと思いますが、そうではありません。正しくは、「習った授業内容を覚えているうちに」まず一巡目を終わらせてしまうことです。(「定着させる」という意味では、この一巡目だけで完結というわけにはいきませんので、これについてはまた話を分けて書きたいと思います)
例えばあなたは、昨日の夕食の献立をすべて言えますか。一昨日の朝食の献立とその味わいを覚えていますか。(書いている私も曖昧ですが…)食べているその時はおいしいと感じていても、時間が経てば忘れてしまう、これが勉強でも同じことが起こるのです。
理想的なのは、授業を受けたその当日または翌日には、宿題を終わらせるのが、「一巡目」としては理想です。教わったことをまずは自力で再現できなければ、それはもうその時点で定着していないのですから、時間をあけてしまえばしまうほど、当然定着度も低くなるばかりか、やったことを忘れてしまっているわけですから、そもそも何を学習したのか、というところから思い起こさなければならず、余計に時間がかかってしまうわけです。
②「優先順位」が「ずれ」ている
どんどん宿題を終わらせていかなきゃ、と、①の「いつまでに」がわかっているのに、それでもどうもスケジュールをうまく回せない…という人は、「優先順位」に問題がないかを疑ってください。
塾からは、授業後に様々な宿題・課題が出されると思います。授業が終わった後、あなたはまずその中のどれをやっていこうと思いますか。うまく回せていない人に多いのが、
a.「漢字練習」や「計算練習」といった、毎日のルーティンにすべきもの
b.授業のテキストとは別途与えられる宿題用教材テキスト類
を授業後すぐにやっている、ということです。aは毎日すべきことに変わりありませんが、「授業後まず最初に」やるべきかというと、答えは×です。bも復習になるからいいんじゃないの、と思われると思いますが、これはあくまで日をあらためてみても、授業内容のエッセンスは身についているかを確認するためのもの、再現性を確認するためのものですので、「授業直後」にすぐにやってしまったら、解けるのは当たり前です。bの教材類で確認したいのは、「少し授業内容が抜けてしまった状態から、再現ができるかどうか」という点にありますから、使うタイミングが誤っています。
では何を授業後にまずやるべきかというと、授業中に間違えた問題の間違い直しをすることです。
当たり前のことなのですが、この当たり前のこと、子どもたちは実にやりたがりません。しかし親としては、そこでいきなり怒り出してはいけません。「子どもというのは、同じことよりも何か違う新しいことをやりたがるものなんだ」という意識を持ってください。子どもたちにとって間違い直しというのは、「同じ問題を解き直すこと」にすぎません。同じことを何度も反復させられても、楽しくないのは大人でも同じです。
間違えた問題をやり直すというのは、同じ問題を解き直すこととは違う、別の意味があるんだよ、ということをしっかり子どもが納得するように伝えていくことが必要です。この点を次項にまとめたいと思います。
4.間違えた問題のやり直しをする上で大事なポイント
①どの問題を間違えたか、「ごまかさない」こと
我が子のことは信じてあげたい、その気持ち、親心はわかるのですが、その愛情とは裏腹に、残念ながらそもそもこの部分をごまかしてしまう子がいます。理由は様々です。間違えた問題を少なく見せて、「俺はデキる」という見栄を張りたい子。間違えた問題を少なくして、宿題となる「間違い直し」を減らしたいと考えてしまう、サボりな子。授業ノートを家に帰ったら親にチェックされて、間違えている問題が多いとこっぴどく叱られるから正解だったことにしてしまう子。色々います。コソコソ隠すことなく、悪びれることなく、自分の書いた誤答を正答に書き直して赤ペンでマルをつけてしまう…本当によく見てきた光景です。それでは力がつかないんだよ、ということを、こんこんと説諭していく…これを繰り返していくだけでも、子どもはしっかり気づいていってくれます。もし、お子様が「ごまかしてるな」とわかっても、頭ごなしに怒らず、「どうしたの?」から入ってあげてください。
いずれにしても、間違えたのに間違えていなかった、ということにしてしまえば、当然意味がありませんので、やめさせていく必要があります。
②「正しい答えが出せた」=「間違い直しをしなくてよい」ではない
「間違い直し」というのは、間違えた問題をやり直すことなんだから、我流でも正しく答えが出せたのなら直さなくてよいではないか、ということをよく子どもが言います。しかしこれは、なぜその宿題をやるのか、の「目的」の部分が正しく理解できていないということだと思います。宿題とは「こなすもの」という認識になってしまっている子に多い発想と言えます。
間違い直しをする目的は、当然、間違えた問題を次に見たときに正しく解答できるようにすることです。しかしそれは、授業でその問題を解いた時に正答が出せたかどうか、ということとイコールなのでしょうか。勘で答えを書いたらたまたま正解してしまった、なんとなく、いつもこういう展開のときはこういう答えになることが多いから、とりあえず書いておこう、などと書いて、それがたまたま正しい答えだった。残念ながら、子どもたちは、こういうケースでは「間違い直しをする必要がある問題」として認識してくれません。しかしそれでは力がつかないのは言うまでもありません。
③間違えた問題のやり直しをすることで実現してほしいことを伝える
間違えた問題は、定着しづらい問題でもあります。ピアノなど楽器演奏、スポーツ競技など何でもよいのですが、なぜか間違えてしまうのは同じ箇所、という経験をしたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。逆に、さほど練習しなくてもすらすら上手にできてしまう、という時もあると思います。
解ける問題は何度も反復することなくさらっとこなし、逆に解けなかった問題は、スピードを落としてじっくりその問題と向き合う必要があります。なんでもかんでもとにかくやっつけ仕事のようにして宿題などの日頃の学習を終わらせてしまうのではなく、「緩急をつけて」取り組まなければ、できない問題はいつまでたってもできないまま、ということを子どもに伝えてあげてください。
間違えた問題をやり直すには、その問題文から得られるヒント、条件をきちんと把握し、使うべき材料をしっかりそろえて、どのような切り口でその問題を整理し、新しい情報を取り出していくのか、この問題のポイントは何だろうか、授業で学習したことをどう使うのだろうか、といったことに考えを巡らせることが大切です。正しい答えが出せようが出せまいが、大切なことは、解き方がわからなかった、その1つひとつの問題ときちんと向き合うことにあります。
(今回のテーマとは関係ありませんが、私が算数という科目を通じて子どもたちに伝えたかったことは、そういうところにあります。もちろん算数という科目を楽しいと感じてほしいということもありますが、「社会に出てから、様々な問題とどう向き合うか」、その向き合い方というものを学んでほしいなと感じています。このあたりの思いについては、また機をあらためて記してみたいと思います)
今回はこれで以上です。記事をお読みいただきましてありがとうございました。何かご質問がございましたらコメントでお知らせください。
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