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アメリカ・ユタ州の『東方新聞』で三回目のリンヤンコラム『リラックスして、自然の状態に戻る』

 2022年12月の新聞では、リラックスについて書きました。一水空講師で、トリリンガルの長友美菜子先生は日本語に訳して下さいました。

 「松と沈」この二文字は書道と武術に限るものではない。
 ここで言う「松」とは「茫々としている」、「ふんわりしている」、「ゆったりしている」という意味だ。繁体字では、「鬆」と書き、もともとは「ぼさぼさの髪の毛」からきた言葉である。それが後々、「緊張した状態からリラックスした状態に変わる」ことを表すようになった。

  ある調査によると、人が一日に不安を感じる確率は80%を超えるそうだ。これは、人の本能である。人は生まれながらにして緊張と不安を抱えている。
  気持ちを変える方法は、「気持ちを落ち着かせる」ことだ、と言うのは簡単だ。しかし、行動に移すのは易しいものではない。それは、気持ちは風のように刻一刻と変化し、コントロールし難いからだ。気持ちを変える方法は自分で見つけなければならない。
  身体の緊張がほぐれれば、気持ちも自然とリラックスする。書道は健康を維持することができる。昔も今も変わらず書道家には長寿が多い。それはなぜかというと、字を書くとき、心身ともにリラックスした状態を保っているからだ。

  浩波書画クラスの基本は、「身体をリラックスさせ、筆を力いっぱい握らないこと」だ。こうすることで、筆自身の重力を破壊せず、また筆自体の弾力を維持させることができる。
 人と筆が互いに争わなくなったら、筆は人の身体の一部となり、手の延長線になる。いわゆる「人筆合一」である。重力と弾力に、字を書く人の少しの力を加えることで、筆は自然と一定の速度で動くことができる。それができたら、わたしたちは筆の言うことを聞くのではなく、筆が私たちの言うことを聞いてくれるようになる。
     
 張先生は、「筆は垂直に持ち、太極拳でボールを抱えるような感覚で持つこと」と言う。指先に力を入れなければ、正しい感覚を見つけることができる。この過程は、簡単に手に入るものではなく、ある程度の訓練期間が必要である。例えば、私たちがよく耳にする「沈肩堕肘」である。
       
  わたしが「一水空」を長年教え続けてきて感じたことがある。それは、「学び始めは、肩がリラックスできない」ということだ。私が「腕を上げてください」というと、学び始めの方はまず肩を上げ、沈めることはしない。人は、緊張すると肩をすくめてしまう本能的な反応がある。緊張をほぐすために、まずは「身体をリラックスさせること」が大切だ。それから、「気を沈め」、「心を落ち着かせ」…。

 「松と沈」は兄弟である。「松」は状態を、「沈」は方向を表す。「松」の状態を続けるリラックストレーニングで余分な緊張をほぐしたい。伝統武術と現代のスポーツにはどちらも同じ理念がある。それは、「リラックスした状態の筋肉が多ければ多いほど、次の瞬間に動かせる筋肉量は多くなる」ということだ。
 そのため、常に「松沈」の状態を保つことは、賢明な動きなのだ。

 この道理と古琴の「松沈」は同じだ。書画クラスの友人の小岳は古琴を数年専門的に学んできた。彼女は古琴家の李孔元先生の話をしてくれた。
 李先生はこう話したそうだ:「松と沈の目的は更なる自由、肢体の自由、及び心の自由を得ることだ」と。肢体が更なる自由を得ることで、楽器をより自由に動かせるようになり、音楽もより自由に表現することができるようになる。より柔軟になることで、心も自由に、音楽の想像力も豊かになり、音楽のアイデアもどんどん出てくるようになる。

 「松と沈」という方法から、「落ち着かせる」という状態を感じることができると、私は思う。『臥虎藏龍』という映画の中にこういうシーンがある:
  手に砂を握り、握る砂の量が多ければ多いほど、握る力が強ければ強いほど、失うものが多い。
  欲望を取り除き、「松と沈」に集中すれば、自然と手に入る。人は生まれたときに持ってこられなかったものは、死ぬときにも持っていけない。ほしいものがあるなら、「リラックス」を。こうすることで、心の内面を穏やかにしたり、落ち着かせたりすることができる。これは、前刊で話した「ゆっくり」と共通して言える。
  
それが自然本来の姿である。
                              2022年12月初 林陽写于盐湖城   

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