インターフェイスとしての文房具とHID

弘法筆を選ばずとは言うし、それは一定真実なのだろうけれど、私達は弘法大師ではないので筆は選んだ方がいい。

現代において筆記具を商売道具にしている職業は少ないですが、たとえば設計士は図面をノベルティのボールペンでは書かない。
エルゴノミクス以外にも、道具をちゃんと選ばなければいけない理由はあります。

HHKBは馬の鞍に喩えられますが、HID(Human Interface Device)とは要するに思考と出力を橋渡しするインターフェイスです。そしてそのアナログ版が文房具ということ。

文房具好きなら、お気にいりの筆記具で筆が進んだり、逆にお店などの備え付けのペンでは字が崩れたりという経験はあると思います。
それと同じように、キーボードやマウスが変わることで作業効率が変わるのは不思議なことではないでしょう。

人間の知的活動は、インターフェイスによってかなり左右されるものだと思います。しかもそれはとても主観的なもので、だからただ文字を記すためだけの筆記具にこんなにも多くの種類が存在しているのでしょう。

個人的に、自分の意志がきちんと伝わること、使い手を邪魔せず、意図したとおりに動くものがいい道具だと思っています。

この「使い手を邪魔しない」というのが難しく、先日書いた「解決するまで認識されない問題」であるケースがとても多いのです。
人間の適応能力というのは凄まじく、使いやすいが慣れていない道具よりも使いづらくても使い慣れた道具の方が快適に思えてしまうものです。

わざわざExcel方眼紙で紙書類と同じフォーマットを作る人が跡を絶たないのも、そういうことなのでしょう。よほど劇的な変化を経験しないとそもそもの「使いづらさ」に気づけないのです。

いまや多くの人にとって、筆記具よりも触る時間が長いであろうキーボードとマウス。ただの入力機器ではなく、自分の意志を機械に伝えるインターフェイスとして、いちど見直してみても損はしないはずです。

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