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ラジオパーソナリティに憧れて

大学生になった頃から、深夜ラジオを聴くようになった。

きっかけは、一年生の夏休み。
あんまりにも長い夏季休暇に、当時の僕は時間を持て余しまくっていた。

知り合いも多くないので、バイトの時間以外は、テレビゲームぐらいしかすることがなかった。最新のゲーム機は持っていなかったので、昔からよく遊んでいたものばかりをプレイしていた。

物語も操作も慣れたものばかり。新鮮味がないので、せめてもの抵抗で、流行りの音楽をYouTubeで流しながら遊んでいた。
そこから音楽以外の動画も流すようになり、最終的に芸人の深夜ラジオに辿り着いたのだった。

今でこそ僕はお笑い大好きだけど、その当時はそこまで興味があったわけでもなかったので、パーソナリティも知らない人ばかりだった。

ラジオは、僕の世界の新しい扉を開けてくれたのだった。ラジオがなければ、今みたいにお笑いに夢中になることはなかったと、断言できる。




深夜ラジオにどっぷりとハマっていった僕は、家にいても、通学をする時も、バイトに行くときも、ずっとラジオを聴くようになった。

そんなラジオフリーク化し始めていた僕に、まるで運命の巡り合わせの様な企画が発表された。
なんと、『オールナイトニッポン0の新パーソナリティをプロアマ問わずに募集する』というのだ。

心の中で、火が付いた。これはもう僕にやれと言っているようなもんだと、なぜか本気でそう思った。

僕は喋りが得意でもなんでもない。しかし当時の僕は、まさに盲目状態だった。「ラジオ」に対しての愛は燃えるように熱く、こんなおもしろいことができるチャンスがあるなら、チャレンジしない手はない!

過去に同様の企画が開催され、僕と同じ大学生がパーソナリティを務めたことがあるという事実も、応募の後押しになった。

…もし今、同じようなオーディションが開催されても、絶対に参加してないと思う。物事の熱中がピークにあると、人間何をしでかすか分からないものだ。


といいつつ、流石に一人で応募する度胸はなかったので、紆余曲折を経て中学時代の友人グループを誘うことにした。僕は彼らの事を昔からよく知っているし、お笑い好きなメンバーも多い。そしてなにより、(僕的には)彼らは滅茶苦茶面白い人達だった。

内輪ノリでいい。僕と彼らがいれば、マジで天下とれる!
そう決めて、すぐに連絡を取った。オーディションの一次審査は、3分間の動画で撮って公開し、いいねや視聴回数が多ければ良いというものだった。内容は割と自由で、自己紹介でも、特技披露でもなんでもよく、とにかくアピールできれば良かった。

動画撮る日を決め、友人宅に集まった。彼らは参加してくれたものの、実際集まると、ガチで番組を始めたいと思っていたのは自分だけだった。しかも途中でメンバー間で喧嘩が始まったりして、最終的に僕一人で応募する事となった。ウケる。

僕は3分間の自己紹介動画を撮った。そして公開したものの、やはり伸びない。素人がグダグダ喋ってる動画なぞ、誰も見ようとしない。僕は悩んだ挙句、Twitterのアカウントにリンクを載せて、アカウントの鍵を外してリツイートできるようにした。無茶苦茶恥ずかしかったが、再生や拡散に協力してくれる人も多かった。もはや黒歴史どころの騒ぎではないが、受かるつもりだったので、これも仕方ないかと思った。




結果は勿論、落ちた。結構粘ったとかでもなく、普通に一次選考で落ちた。
いやー、厳しい。本気でいけると思ってたので、結構ヘコんだ。あと死ぬほど恥ずかしい。

通知はメールで行われた。ニッポン放送の事務局から応募者全員に宛てらたそのメールには、参加のお礼と、合格者には既に連絡してあるという旨が記載されていた。
そして最後に、オールナイトニッポンというコンテンツが、どれだけ広く愛されているかを改めて感じることができたという感謝の言葉が、丁寧に丁寧に書かれていた。

それはとても、グッと胸の熱くなる文章だった。受からなかったけど、応募して良かったとも思えた。受からなかったけど。
そのメールは、今でも大切に保管してある。

オーディションを合格し、念願の番組を獲得したのは、事務所所属のお笑い芸人だった。
結局芸人かい!とは思わなかった。そりゃ、実力がある人が選ばれるのは当然だ。

夢は叶わなかったが、そんな出来事があったからか、今でもラジオは、僕にとって欠かせない大事な存在となっている。ラジオに出会って人生が変わったとまでは言わないけど、きっと良くはなったはずだ。

通学から通勤へ、実家から一人暮らしへ。
環境も立場もすっかり変わってしまったけど、ラジオはいつもそばにあって、変わらず僕を楽しませてくれる。


おわり


PS. 合格者のラジオは、悔しくて一度も聞きませんでした。ごめんなさい。

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