コミュニティモデレーション雑感[コミュタンアドベント2023年3月]
はじめに
「コミュニティ運営をテーマに記事を書いてほしい」という依頼を受けました.記事を書くことは普段の管理運営で考えていることを言語化することに他ならず,その作業を通して日頃の反省もできて楽しいものです.しかし,ときに主観的に独善的になりすぎて,相手にそのことばが伝わりづらいだろうなという懸念もあります.そこでこの記事では,内容を読み込まなくても各見出しでなんとなく,書きたいこと・問い掛けたいこと・問題意識を持ってもらいたいことなどが伝わるように心がけました.つまり,まずは目次を読んでみていただきたいのです.
さて,この記事は「運営者コミュニティ『コミュタン』」主催の記事アドベントカレンダー企画のために書き下ろされました.企画の紹介と他の方の記事はこちらのページにまとめられていますのでぜひご覧ください.アドベントカレンダーということで続きものの企画になるみたいです.これまでの記事を読まれた方も,わたしの記事だけ読んでいる方も,ぜひともお付き合いいただけますと幸いです.
https://note.com/mss_discord/n/n89c8b5f62e6f
理想のコミュニティって,なんですか?
まず,理想のコミュニティとはなんでしょうか.難しい問いですね.コミュニティ運営者の数だけ理想像があるはずです.あなたの理想を思い浮かべてみてください.
わたしの究極の理想とするところは,コミュニティに親和性のあるクラスタの多くが受け入れられるような内容の会話が,運営者が介在せずとも継続していくコミュニティです.つまるところ,身内感の少ない,もしくは身内感に飛び込んできてもらえるようなコミュニティを,管理者の手を離れた存在として確立させたいと思っています.
コミュニティってなんだろう?
ここまで,当たり前のように「コミュニティ」ということばを使ってきましたが,そもそも「コミュニティ」とはどういうものを指すのでしょうか.この記事では,「共通の興味関心によって集まった人たちが継続的に相互に影響を与え合う場」として定義してみます.おそらく,多くの人が抱いている「コミュニティ」のイメージとそこまで違わないのではないかと思います.
つまり,「理想のコミュニティ」として考えたものは,より正確には「コミュニティの理想的な状態」というべきでしょうか.
どうやって実現するんですか?
とは言ったものの,理想の実現が難しいことは分かりきっています.それぞれ具体的にどういう状態を目指しているのか,実現させるためにどのような行動を取るべきか,実現できる限界はどこなのか.それについて考えるのが本稿のテーマです.
身内ノリを減らす
おそらくすべてのコミュニティ管理者が頭を抱えている問題ではないでしょうか.特定の人たちが会話していると知らないうちに蔓延し,新しく入ってきた人の会話参加を阻害する原因になってしまう悩ましい存在です.一方で,身内ノリに慣れた人たちは,その独自の文脈のもとで発生する身内感や結束感により,活発に会話に参加・展開してくれる可能性が高まるので,コミュニティの活発度は高まるように見えます.それぞれの身内ノリを理解している人たちにとってはプラスに働きますが,外から見たときに受け入れられないものはマイナスでしかありません.そのコミュニティに入ってくる人が共通認識としてもっているような「身内ノリ」であればいいのでしょうが,そのようなものはもはや身内だけのものではないといえます.
限られた人々だけが楽しめて新しい人たちが入ってこれないようなコミュニティ環境にはしたくありません.身内ノリは一旦はびこると消すことがとても難しいので,芽の段階で処理してしまいたいものです.それとない無難な話題の提供,それとない話題展開の誘導が必要であり,こういった活動を通してコミュニティ内の雰囲気を保つのも,コミュニティ管理・運営の仕事の一部です.すなわち,「身内ノリの少ない万人向けの雰囲気」そのものを「身内ノリ」にしてしまおうということです.
また,何が身内ノリなのかはコミュニティの実情に応じて変わってくるので一概に決めつけることはできません.特定のクラスタに通じるネタは,そのクラスタがターゲットのコミュニティであれば身内ノリではないといえますし,特定のコミュニティに属していないと通じないネタは,ターゲットのクラスタの共通文脈ではなく,身内ネタであるといえます.例を挙げるとするなら,コミュニティを構成する人々の興味関心とは無関係で,好き嫌いが分かれることがはっきりしているもの・通じにくい画像ネタ・サーバーに参加している特定の人を極端にイジる,といったものでしょう.すぐに多くの人が順応してくれるマイルドな身内ネタであれば,プラスの効果を期待してむしろ積極的に利用していくことも考えられますが.マイナス効果との釣り合いについては運営者の見極めが重要です.
運営の手を離す
コマのように自分で回るコミュニティにしてしまえると楽です.管理者が常にチャットに現れ,管理者の力がないと回っていかないコミュニティは不健全ではないかと考えています.最終的には,特に運営者や管理者の手が必要なく,参加者同士の相互作用によってコミュニティが保たれていくように持っていくといいのではないでしょうか.「身内ノリの少ない万人向けの雰囲気」で楽しむ人を増やし,新しく入ってくる人も同じ雰囲気のままにコミュニティに参加してもらうのです.そのためには,やはり運営者による雰囲気醸成が非常に重要です.コミュニティ参加者をコミュニティの雰囲気を形作る一員としてしまえば,新しく入ってくる人もその雰囲気を引き継いで安定したコミュニティが存続していくとは思いませんか?
とはいえ,どうしてもコミュニティの管理者・運営者が必要な場面が出てきますし,手を離してもすぐ倒れてしまうことが多いです.ある程度のスピードに乗るまでは後ろから押してあげること,倒れそうになったら軽い力で傾きを修正してやること,黒子として活動することなどを意識して活動してみましょう.
あとがき 〜moderateを心がけて〜
コミュニティ運営の理想論について語りました.理想を突き詰めようとして,現実との狭間に苦しんで,コミュニティ運営がうまくいかないと思い込んで,理由はさまざまですが結果として燃え尽きてしまい,管理運営を退いた人をたくさん見てきました.まずはあなた自身が楽しんでいることがなによりのコミュニティ運営です.Discordサーバに限らず,コミュニティにはさまざまな管理・運営のやりようがあります.理想を突き詰めることにやっきにならず,コミュニティの様子を俯瞰して眺め,どのような管理・運営がその時々の状況に最も適しているのかを見極め,手を加えていく.それこそがサーバ運営の理想を実現していくためのmoderationなのではないでしょうか.
> あとがきBGM:幸福の残香は悠久の中に / 銀銀
> 文責 株式会社yieldspace所属 himarho
> 2023/01/11 記事作成
> 2023/03/12 公開
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