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『度华年』 中国ドラマ 鑑賞記録

『寧安如夢』でその魅力に開眼してしまった张凌赫 が主演、というのが視聴動機です。観出したら面白くて止まらず、超前を購入して一気に完走しました。
『寧安如夢』はこの程めでたくWOWOWさんで上陸が決定(2024年9月放送開始)したので、こちらもいずれ日本語字幕で鑑賞できるかしら?と期待しています。

彼以外の若手役者さんたちもとっても素晴らしくて、中国エンタメの層の厚さをまざまざと実感した作品でもありました。

面白かったところも書きたいので、ネタバレすると思われます。未視聴の方はくれぐれもご注意くださいね。


『寧安如夢』の感想はこちらです。





度华年(度華年)
配信 2024年6月26日 优酷
話数 全 40話

トップ画像 度华年 微博


张凌赫 演じる 裴文宣と赵今麦 演じる 李蓉 度华年 微博


やり直し2回目の人生

赵今麦 演じる大夏朝長公主の 李蓉は夫に毒殺される。その夫(驸马) 裴文宣を 张凌赫が演じる。同じく 裴文宣も政争の果てに殺害されてしまう。李蓉 の側に付き添うのは 陈鹤一 演じる 苏容卿。この3人が三角関係だ。

夢から覚めた 李蓉は自分が死んでおらず20年前に戻っていることに気づく。結婚前である。そして 裴文宣も同じく夢から覚めると、同様に記憶を保ったまま過去に巻き戻っている。

結局 李蓉は 裴文宣と結婚することになるのだが、自分を陥れた相手に当然悪い印象しかない。ある時2人は碁を打つのだが、その打ち手が20年前と同じことから、相手も自分と同じく未来から戻ってきていることを知る。しかし気づいたことを相手には悟らせない。その認識のずれがお互いの行き違いを生んだりするのだが、視聴者にとってはその複雑さ故に益々面白くなるという仕掛けだ。

政争のしがらみにがんじがらめにされる内、疑心暗鬼でお腹真っ黒になってしまっている 李蓉であったが、違う道を選ぶことで未来をよりよく変えられるのではないかと思い始める
対する 裴文宣は元々が善良で、李蓉を殺めたというのは誤解であった。のみならず、1回目人生から変わらずに 李蓉を深く愛している
李蓉がその想いを徐々に理解し頑なな心が解きほぐされ、自らも 裴文宣を愛するようになる、というのがメインのプロットだ。

 ところが事はそう簡単に運ばない。現皇帝 李明于谨维 演)には 李蓉と太子 李川刘旭威 演)の母である皇妃と、肃王の母である 柔妃赵柯 演)という2人の妻のがいる。母親の後ろには、それぞれの皇子を次期皇帝に推したい有力氏族の勢力。宮廷と朝廷が、世家と寒門という持てるものと持たざるものとの対立の代理戦争として、手段を選ばぬ闘争の場となってしまっているのだ。

その駆け引きと争いが、未来を知る主人公2人の献身的な努力によってどのように回避され、平和で公正な世に向かっていけるのか… というのが見所な二重構造のドラマである。


太子 李川を演じる 刘旭威 若いながらも太子らしい威厳とお坊ちゃま感を好演していた。難しい役処ながら見事な演技だった。今後の活躍が楽しみ!



よくできた脚本と俳優陣の演技

実はもう一人、巻き戻り組がいる。李蓉にぞっこんな 苏容卿である。何となく最初から怪しい雰囲気は醸し出していたものの、事実が判明するのは大分後になってから。まずは過去に交わされたのと同じ会話によって 苏容卿も2回目人生であることが視聴者に認識され、同時に 苏容卿も 李蓉が巻き戻っていることに気づく。この場面は鳥肌ものの演出で作中でも印象深いシーンだ。

その後、李蓉と 裴文宣が一緒にいた時に 苏容卿も自分たちと同様に巻き戻っていると気づく。ここで2人口を揃えての台詞「苏容卿也回来了」も本作中、戦慄シーンの一つ。

本作が他の巻き戻りドラマと違って面白いのは、単に巻き戻っているだけではなく記憶を保持していること。李蓉と 裴文宣が絶妙な意思の疎通で1回目人生の失敗点を修正しつつ、世の不正を正し、且つ自分たちの愛をも成就させようと奮闘するのは胸熱だ。

… なのだが、1回目人生の20年ですっかり愛の冷え切った夫婦を引きずっているだけに甘いムードは殆どなし(笑) 特に 李蓉は二度と失敗するまいとの防御が固すぎて、頑なに気を許さない。対して 裴文宣は素直に真っ直ぐに想いをぶつけるので、2人の間の空気は空回りしっぱなしだ。そこが本作の笑える場面も作りだしているのだけれど。 

条件が上手く活かされた秀逸な脚本だと思う。主軸プロットのテンポがよく、心理描写も中だるみしない演出の妙。それを支える俳優陣の熱演。
张凌赫 以外の中心的キャラは20歳そこそこの若さだ。他に目立つ出演作が見当たらない俳優が多いのに、感情表現が上手いのには驚くばかり!

陈鹤一は繊細な美しさが際立ち、陰を帯びた役柄で、作中唯一悲恋の 苏容卿がとても合っていた。刘旭威も、そして彼が愛する 秦真真 役の 鹤秋 も綺麗で上手で、中国俳優の層の厚さを改めて感じた。

中堅では 于谨维や、彼の後ろに常に付き添い絶妙な表情を見せていた宦官の 福来董可飞 演)の他、他作品ではよき母后役が多い 赵柯 の迫力の熱演も素晴らしかった。


苏容卿 を演じる 陈鹤一 いやホント美しい! 古装(特に肩周りの衣装の落ち方)の着こなしが絶妙な気品を醸し出していたし、複雑な感情を内にひめた表情演技も見惚れてしまった
度华年 微博
 


赵今麦 演じる 李蓉と 张凌赫 演じる 裴文宣 度华年 微博


しかし何といっても主演2人だ。赵今麦 の古装は初見だったが、大きな目から溢れて涙がこぼれ落ちる様は、思わずもらい泣きしてしまう説得力。訴えかける言葉と表情の迫力が素晴らしい。

そして 张凌赫。スケールの大きさ、包容力や余裕を感じさせる佇まいと表情が、自信と余裕に溢れた 裴文宣にピッタリはまって魅力的だ。大物感というか、主役としての安定感を感じさせて、今や大好きな俳優さんの一人に浮上中。確かに上背があるのはプラスに働いているだろうが、中国男優は大柄な人は多いわけで、彼の場合見た目だけではなく、特に心身の強靭さを表現した時に光る独自の存在感を備えていると思う。

女主を大きな愛で包み込み、1回目の人生で負った全ての心の傷を癒してあげる、という台詞は感動ものだった。



何から何まで非の打ちどころなし!

その他の登場人物のキャラ設定も立体的で大変よかった。
苏容卿 の兄 苏容华易大千 演)の 上官雅成果 演)への一途な想いには泣かされた。家を背負う彼らは本来ならば結ばれない宿命であったが、命を懸けて誠意を尽くすことで人生が好転していく。


苏容华(易大千 演)と 上官雅(成果 演) 度华年 微博


要所要所の音楽や挿入歌がドラマを効果的に盛り上げていて、エンディング曲も好き。

そして特筆すべきは衣装と美術刺繍を多用した衣装、特に衿のデザインがとても好きだった。また生地のフワフワ加減もちょうどよく、男性もそれぞれ似合う衣装が用いられていたと思う。
お屋敷の池を配した庭や、池に面したバルコニーのようなところで食事や碁を打つシーンも見惚れてしまうほどの美しさ。盃の素材やデザインもめちゃ素敵だった!

40話ぐらいあるドラマではよく、最後が妙に端折られていたり、逆にラスト少し前に足踏みのような回が続くことがあるが、本作は最終話までぎっしりと中だるみなく、最後までスリリングな展開
最終話、衝立の間での 裴文宣と 苏容卿の闘いは大きな見せ場だ! 苏容卿、剣術もいけたのね~!と意外に思ったのは置いといて(笑)カメラワークと撮影技術ですごい迫力だ。両人とも美しいので画面が持つ持つ! そしてその後の 苏容卿の琴の最期。10歳の時にこっそりもらった木のトンボを返す苏容卿に泣いた…



最後の画像は美しき 陈鹤一 の笑顔で! 度华年 微博


善であることの大切さを訴えるメッセージ性。全員悲劇だった1回目の負のサイクルをそれぞれが粘り強い意志と努力で好転させていく、ハッピーエンドで後味爽快な、よき作品であった。
内容的にも、ビジュアル的にも、全ての面で大いに楽しめるエンタメ性。今年視聴した古装劇では断トツのお気に入りになった。ぜひまた鑑賞したい。




完走したてなのでホットな感想で大分長くなってしまいました 笑

懲りずにまた遊びにきてくださいね~!