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『王羲之と蘭亭序』 展覧会 鑑賞記録

創立150年記念特集 王羲之と蘭亭序
東京国立博物館 東洋館 
2023年1月31日(火) ~ 2023年4月23日(日)
公式サイト

トップ画像 国学本蘭亭序 原跡:王羲之筆(中国) 原跡:東晋時代 永和9年(353)
撮影 らん


王羲之といえば字の上手な人。
という程度の知識しかありませんでしたが、中国ドラマで貴公子が筆を縦に持って姿勢よくサラサラ~っと書いてるのはカッコいいなと思うし、展覧会やお寺で目にする日本の昔の人の字もめっちゃ綺麗ーと感心します。

過去に王羲之の書といわれるものを何度か見たことはありますが、この展覧会は王羲之にスポットライトを当てているということ!
興味津々で上野に行ってきました。

素人目線の王義之の蘭亭序、初歩の初歩的な鑑賞記録です。




蘭亭序、とは…

蘭亭序(らんていじょ)は、王羲之が書いた書道史上最も有名な書作品である。」(wikipedia

ほう~そうなのか。
で?

永和九年、王羲之が蘭亭というところで風雅な「曲水の宴」を開き、そこで作られた詩集の序文を自ら書いたのがこの「蘭亭序」なのだそう。
なるほど序文ということか。

それで。
この蘭亭序は現存せず、今見ることができるのは摸本と拓本のみ。
えっ!?

なぜかといえば、後の世の唐の太宗(中国ドラマにもよく登場する世民さん)が王羲之フリークで、苦労して手に入れたこの蘭亭序を副葬品としてしまったため。
そんなことしちゃってたのね李世民(泣)

因みに蘭亭序だけではなく、王羲之の真筆はすべて失われているとのこと。

そして王羲之自身も認める最高傑作の蘭亭序は、内容、文字と共に後世に受け継がれることとなった…
というわけなのである。

さて、日本でもなじみのある曲水の宴。庭園に造られた小川に盃を流し、流れてくる間に詩を詠んで一杯飲む。詠めなかったらペナルティで大盃に3杯飲まなければならないという風流な遊び。

王羲之は国の中枢を担う名門の家系で、将軍などの要職にも就いていた。
だがこの時代(東晋)は諸国との攻防が続き混乱を重ね、政争にも巻き込まれる。それに疲れた王羲之ら一部の貴族たちはそのような世界とは一線を画す。書画や音楽、碁などにも技芸を追求し、日常の一挙手一投足にも優雅さを求めて瀟洒を極めていたのだそうだ。


曲水の宴とはこんな感じ。優雅だわ~  蘭亭図鑑 乾隆本 撮影 らん


いっぱいある蘭亭序

そんな訳で「蘭亭序」にはいくつものバージョンがある。本展覧会にも数点展示してあった。

冒頭は「永和九年」で始まる。
途中「是日也天朗氣清恵風」という字も読めるし大体意味も解る。

漢字って本当に凄い! 
永和九年といえば 353年、今から 1670年も前、日本でいえば仁徳天皇。まさに神代の時代。そんなにも大昔のものが今現在、普通に読めてしまう奇跡!

漢字というものがあって、日本がまだその漢字を使ってくれていて本当によかったなと思うのだった。
(韓国やベトナム等、元は漢字文化圏だが既に日常では使わなくなっている国もあるので)


こちらは別バージョンの蘭亭序  
潁井本蘭亭序 原跡:王羲之筆 原跡:東晋時代 永和9年
撮影 らん


沢山のバージョンの展示。美しい字。どこがどうとは言えないが、ゆったりとおおらかで、でもきちんと整っていて。
見ていると心が落ち着いてくるような、綺麗な字だった。



絵画も展示

当時の優雅な文人たちの様子を描いた絵も展示されていた。
美味しそうな食事、優雅に琴を弾いたり碁を指したり。庶民の生活とはかけ離れていただろうけれど、この人達がいたからこそ今でも読める楷書、行書、草書が残されたことには感謝するばかりだ。


四万山水図(しまんさんすいず)4幅 文伯仁筆 中国 明時代 嘉靖30年(1551)  重要文化財 
撮影 らん


その他関連の書の展示もあり。
見応えがあって有意義な時間を過ごすことができた。

一つだけ注文というか…
展示や説明が専門的で難しかった。概要は既に知っている前提で表示されているので展覧会を観ただけでは基本的なことが理解できない。ここに書いたことの殆どは後から図録を見たり本を読んで調べた。

日本の美術芸術の粋を集めた国立の施設なので、あまり格を落とすわけにはいかないのだろうが、専門的知識がなくても興味のある人はいると思う
僭越ながらもう少し敷居を低くして導入的な解説などがあれば、もっと多くの人が観に行くのではないかなと思った。




また一つ中国を身近に感じることができるようになって、観に行ってよかったなと思います。
上野公園、桜はまだでしたが暖かい春の一日でした。

撮影 らん