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『星明かりを見上げれば』 中国映画 鑑賞記録

星明かりを見上げれば
原題 人生大事
監督 刘江江
2022年

トップ画像 『映画 人生大事』 公式微博

今年秋、微博上で主演の 朱一龍 がトロフィーを抱えている画像が沢山流れてくるのを見て、この映画で彼が中国映画界最高の栄誉である『金鶏賞 主演男優賞』を受賞したことを知りました。
これは観たいなー!と思っていたら netflix で配信されていたので、早速鑑賞しました。




設定と筋書きは…

主人公の家業は葬儀屋。そしてムショ帰り幼い女の子と出会う。
想像していたよりもしんみりしていなくて、時々笑ってしまう場面もあり意外に楽しい作品だった。
ただ、筋書きはまぁ、ありがち(笑)
ストーリーも次に何が起こるのか、誰が何をいうのか、割と予測の範囲内でサプライズ的なことは特にない。
それなのに、なぜか感動し涙する場面がいくつもあるのは、ひとえに主演俳優 朱一龍と、子役 杨恩又 の演技が素晴らしかったからだろうと思う。

朱一龍 演じる 三妹(サンメイ)は父の代から葬儀屋稼業だ。その仕事先で杨恩又 演じる 小文(シャオウェン)と出会う。亡くなったのは小文が預けられていたお祖母さんなのだが、幼い彼女はその死の意味が分からない。棺桶を火葬場に運んだ三妹が大好きなお祖母さんを隠したと信じて疑わず、彼に付きまとうのだ。

複雑な家庭事情の小文 はひょんなことから三妹 とその仕事仲間に預けられることになり、一緒に過ごしているうちにお互い情が移ってくる…
まぁ、ありがちな流れ(笑)

最初は疫病神扱いしていた小文が次第に自分を信頼し始めると、徐々に気持ちが揺れ動いていく三妹。彼もまた、家族関係や家業のせいでに苦難を抱えながらの人生で、それまで感じたことのない感情が芽生えていくのだ。

中盤で一度盛り上がりをみせる展開。
何とか養子縁組も済ませ、一緒に暮らしていける!ハッピーエンド目前!

いやしかし、そう簡単には行かないのだった。


主演二人の演技

人生で初めての、戸惑うような切ない感情を、朱一龍が非常に繊細に魅力的に表現している。
これは確かに栄えある映画賞受賞にふさわしい、納得の演技!
序盤で見せる少々荒っぽい、ムショ帰りの三妹とのギャップに、ズーンと胸を打たれる。

もう一人の 小文。こちらは子役ながらすごいお芝居。可愛らしくて、泣き顔も完璧。笑うとこちらまでホッとするし、怒ったり困ったりしてると何とかしてあげたいと思ってしまう。
子供には勝てない。無敵だ。しかもめちゃくちゃ上手い。
なので、子役であることを割り引いて見たとしても、やっぱり素晴らしい演技だと思う。

やはり、本作はこの二人の演技あってこそだろう。


『映画 人生大事』 公式微博


脇役のみなさん

葬儀屋を一緒にやっている男女 建仁と白雪もいい人達だ。彼らも小文を一緒に育てていく。だいたいいつもワンマンな三妹に振り回されて、更に小文も加わりすったもんだするが、怒りながらも見放さず、なんだかんだで付いていく。
この物語を温かいものにしているのは、彼らの存在が大きかったと思う。

そしてお父さん。お年寄りで身体も幾分不自由なのに頑固でトンガっている。三妹とは確執があるが、入院先のベッドで語る言葉が印象深い。
原題の『人生大事』はこの時の台詞から来ているらしい。
邦題は随分趣が違うものになっていて、何故こうなったか不思議だったが、鑑賞し終わった後ではこの作品のある意味ベタな味わいには合っているのかもしれないなと思った。

物語がいい感じに落ち着いたかに見えた後半に突如登場する「ママ」もドタバタ感に拍車を掛ける。
彼女は三妹といい勝負のドロップアウト派。だいたい今まで何の音沙汰もなく小文を放置しておきながらいきなり現れて「ずっと忘れたことはない」と言い放つ適当さ加減も、この女優さん、李春嫒(君花海棠の紅にあらずの 小来)が可愛らしく演じると何となく納得してしまうのだった。


『映画 人生大事』 公式微博


そんなこんなでドタバタしながらもハートウォーミングに物語は進んでいく。最後の花火のシーンはちょっとこじつけ感もあってやり過ぎな気はしたが、総じて上手くできたストーリーと演出だと思った。

因みに監督の刘江江さんは、この作品で朱一龙と同じく「金鶏賞」監督デビュー賞を受賞なさっている。同作の脚本も書いているそうなので、次回作が楽しみ。

それから、本作は台詞がさっぱり聴き取れなかったのだけど、武漢方言と四川方言が混じっているとのこと。朱一龙 自身が武漢出身、味わいがあってよかった。
エンディング曲の主演二人が歌う『种星星的人』もいい歌だった。




というわけで、何となく褒めているのかケナしているのか分からない文章になっちゃいましたが、とてもいい映画でした(笑)
何度も泣きましたし、何しろ朱一龍の演技(特に小文に向ける目元の優しさ)は破壊力抜群でした。
2時間でこんなに感動できる映画って、やっぱり素晴らしいなーと思いました。

読んでくださってありがとうございました!!




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