Funk The 全日本プロレス
1978-1980年頃に熱狂したプロレス団体には『全日本プロレス』『新日本プロレス』という二団体があり、それは組織や流派の違いというよりも、馬場と猪木という二人の男の生き様の違いであった。
そのバックにつくテレビ局やファンの世界観に直結するほどの二極構造、冷戦の時代。
そんな昭和の土曜日午後5時半。日本テレビの『全日本プロレス中継』に夢中になっていた子供たちにとって忘れられない音楽がある。
暗闇迫る夕暮れ時、番組最期に流される『次期シリーズ来日予定選手紹介』には胸の高まりを抑えきれないほどのワクワク感を覚えた。
全日本プロレスはジャイアント馬場の世界ネットワークを通じて、ハリー・レイスやリック・フレアーといった本場アメリカのビッグネームが次々と来日。
また、この時期、極悪コンビ『アブドーラ・ザ・ブッチャー&ザ・シーク』とテキサス・ブロンコ『ドリー・ファンク・Jr&テリー・ファンク』兄弟の流血の抗争が最高潮の盛り上がりを見せており、千の顔を持つ男『ミル・マスカラス』などのカリスマレスラーが人気を博していた。
「次週世界最強タッグ決定リーグ戦!」と倉持アナウンサーが不鮮明で謎めいたレスラーの白黒写真をバックに煽りに煽る。BGM として流れていた音楽を聴くと、40年前の記憶がよみがえり、胸が高鳴る。
長年ずっと探して見つからなかった曲(カクトウギのテーマ)が坂本教授のソロ作品。ディスコティックなグルーヴラインのベースにギターとシンセが絡むレア・グルーヴの珠玉の作品だ。
NWA世界ヘビー級チャンピオンのテーマ(ギャラクシー・エクスプレス)はMECOがカバーしたディスコヒット『スターウォーズのテーマ』をさらに子門真人が日本語歌詞を付けてカバーした「カバーのカバー」のシングルB面に収められていたらしい。ハリウッド制作サイドからのクレームで廃盤になったといういわくつきの代物。
廃盤になったシングル・レコードだけど『ギャラクシー・エクスプレス』は罪のない捨て曲(B面カップリング曲ともいう)でしたので、映画「スターウォーズ」とは何ら関係ない。作曲は日本人。70年代に「りりィ」のバックバンド(バイバイ・セッションバンド)からソロデビューを果たした後、テレビ音楽の仕事をされていた国吉良一さんが手掛けている。国吉さんは後年(1987年)、日本テレビのアニメ『シティーハンター』のBGMを担当しており、こちらのインストルメンタル・ナンバーも都会感あふれて洗練されたグルーヴ感の溢れる楽曲だ。
映画『鉄道員(ぽっぽや)』や『ホタル』の劇中曲も手掛けてられており、2000年と2002年に日本アカデミー賞優秀音楽賞受賞を二度も受賞されている。
日本テレビの音響担当者は米国から来た選手の入場曲にスペクトラムの『サンライズ』やクリエイションの『スピニング・トウ・ホールド』のような国内グループの曲も採用している。
外国選手に見事にハメて魅せるという粋な演出をした1979~80年代初頭の音響効果テレビマンたちとミュージシャンたちに心から敬意を表している。
(おわり)
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