見出し画像

ワンオペ育児って?「個人的なことは社会的なことである」、という視点

ワンオペ育児という言葉。
もう聞きなれましたね。

私が子育てを始めた3年前、いやそれよりももっと前の妊娠中から、「ワンオペ育児」という言葉は聞いたことがありました。
でもその頃わたし自身は、「ワンオペ育児」という言葉に違和感があり、わたしはワンオペ育児と言う言葉をあまり使いたくないなと思っていました。それは何故かと言うと言葉からして、すごく大変そうだし、そもそも無理なことを無理に頑張っている感じがするし…そんな言葉を使わなきゃいけないって、どんな世界なの?って、一歩引いていたからだと思います。

聞いたことがある方も多いとは思いますが、
アフリカのことわざに、「1人の子供を育てるには、村が丸ごと必要である」というものがあります。
まさしく、このことわざの通り、子どもを育てることはそもそも1人ではできない、と昔から言われているのです。

また、人類の歴史をすごくすごく昔まで遡ると、人類は知性を獲得したことで頭の形が大きくなった結果、女性にとって出産がとても壮絶になりました。出産はまさしく命がけであり、それこそ昔なら医療機関も整っていない状況だったので、本当に命がけな出産が多かったそう。そこでやはり特に女性たちは村を作り、お互いに出産した後のケアだったり、子どものお世話などを分担してやる習慣があったのですね。その中で子供たちは子供たち同士で関わりながら育っていくと言う。それが子育ての自然なやり方なんだろうなと考えています。

ただ、実際私もそうですが、ワンオペ育児をやらざるを得ない状況っていうのは多分にあります。私もいつの間にか自分が「ワンオペ育児」と言う言葉を使っていることに気が付きました。そして実際、特に日本ではワンオペ育児の人のためのライフハックだったり時短家電だったり、そういったものが大量に情報としてあります。最近は、ワンオペ育児をする人向けの情報アカウントなども増え、「子ども〇人居て、仕事もフルでこなしつつ、ワンオペ育児頑張ってます!」などの投稿も多いです。情報が大量にあること自体は、まさしく今この状況をどう乗り越えられるか、という問題に対する答えになるので否定はしないですし、私もそういった情報から恩恵を受けてはいるのですが、どこかで、「ワンオペ育児は乗り越えられるものである」「だれでもやっているのだからなんとか出来るはず」「ワンオペ育児を楽しめたら最高」みたいな考えが自分の中で無意識のうちに出てきている気がしました。あと、わたしは特定の誰か、というのは居ないのですが、「●●さんのようにワンオペでも部屋も素敵で食事もちゃんと作って優しいママでいたい」という希望(というか幻想、ですね…)のような、そういう気持ちがママたちの中に醸成されやすくなっているところもあると思うと、なんだかモヤモヤしていました。

そもそも「ワンオペ育児」という言葉は、当事者であるママたちから生まれた言葉だそうで、ひとりで家事育児をこなす状況を「ワンオペ育児」と呼び、その大変さをSNSなどで共有し合っていたのがはじまり。これに似た言葉として「孤独な育児」などもあるようです。このような言葉が出てきて、世間的にも「ワンオペ育児」という言葉が万人共通のものになっていきます。そして、政府は実際に、「ワンオペ育児が少子化や女性活躍の阻害の要因にもなっており」とはっきり名言していきます。
ということは、「ワンオペ育児」という言葉は、(特に日本では)ママ一人で育児と家事をこなさなくてはいけない社会に対して疑問を投げかけてくれた言葉だということ。この問題は、ママたちが乗り越えるものではなく、社会全体で向き合っていかなくてはいけない課題である、ということなんだと思うのです。

つまり、問題提起をしてくれていた言葉だったはずなのに、ワンオペ育児である人が多すぎることもあり、「今日はワンオペです」と言われたところでそんなに驚くことはなく、
むしろ「ここを乗り越えたかったら、ママが自分たちで何とか工夫して乗り越えよう!同士は日本中にたくさんいるよ!#ワンオペ育児」って、被害者にさらに鞭を打っているように、わたしには聞こえてしまうのです。そして、周りの人たちは無関心、という状態。それもそのはず、国や地域もこのことに対してなにかをしているかというと特になにもしていないですから…
結局、自分たちで当事者同士でSNS上で慰め合ったり励まし合ったり、情報収集したりしながらなんとかやっていくことになる。え?これって正常なのか?と、わたしは思ってしまいます。

これは課題のすり替えに近いと思っていて、でもそのように当事者たちが自分たちで頑張れば頑張るほど、その状況に気づいて欲しい人たちに気づかない状況になっているのでは、と思うところもあります。
これは実際、社会福祉の分野で市民団体として活動していても感じたことなのですが、例えばわたしは現在、学習支援と子供の居場所づくりの団体を運営しており、助成金などをもらいながらボランティア今年3年目になりますが、本当はもっと行政や国の力が必要なんだよなあと感じることが多々あるのです。わたしたちは子どもが対象の団体なので、特にひとり親家庭の子の学習支援や不登校の子の居場所づくり、あとは社会全体的に子どもの居場所が地域の中に少ない事実とか…わたしたちだけではマンパワー的にも経済的にも手の届かないところがたくさんあって、「ここは行政が取り組むところなんだよなー」と思うことがあります。
でも、わたしたちのようなボランティア活動や有志が協力して、困っている人たちを助けようとする行動が起これば起こるほど、そこに依存されることがあることも事実です。「やってくれていてありがとうございます」みたいな言葉を言われたこともあり、そういう感じだと、果たしてわたしたちがやってるこの活動はほんとに社会のため、子どものためになっているのかなと疑問に思います。もちろん、しっかりと活動を見てくれて、さまざま支援をしてくる方がいることも確かなのでゼロではないのですが、本当に必要な支援がすべてわたしたちでは出来ないのだ、という事実がどの程度まで伝わっているのか…まさしく、「いま出来る範囲で子どもたちに居場所を届けることによって、直近の子どもたちのニーズには応えられる。だけど、根本的な解決にはなっていない」という状態。そもそも、ボランティアって持続可能性が薄いので…

それと同じような感じで、ワンオペ育児は個人の問題だけではなくなっていて、社会的にどんな支援がされるべきかを考えなければいけない問題なのに、ママたちが自分たちで知恵を集めて頑張れば頑張るほど、女性が賢く、そして逞しくなればなるほど、本当にこの現実に気づいてほしい人たちに届きにくいという感じ…。まだまだ個人的なものとして捉えられているのだなあ、と。
ただ、これを個人的な問題として、行き当たりばったり的にその場しのぎの解決策で乗り越えていく先に、果たして次の子育て世代は子育てに前向きになれるのか?と疑問に思います。
『個人的なことは社会的なこと』という書籍があり、その中にもやはり、子育てやジェンダーに関することがたくさん事例として載せられていました。ワンオペ育児も、本当はもう少し視点を広げて解決していく道をわたしたち自身も探さなきゃいけないのではと思うのです。

Amazon.co.jp: 個人的なことは社会的なこと : 貴戸理恵: 本

ワンオペ育児は、その名の通り、「ワンオペ」なのが問題なのです。だから、ワンオペじゃなくて、頼る人を増やせば良いのだと思います。

ただ、ここでまた難しい問題があって、「頼るって誰を?」ってなるんですよね。私もよくわかります。あ、夫を頼るのは大前提です。夫が居る時はファーストコールは夫。それだけでもうワンオペから抜け出せますよね。夫を頼って(というか頼るとかのまえに一緒にやっているという意識が理想)、でもそれだけじゃ大変なことだってあるし、子どもが複数人になったら夫が居てもワンオペ状態になることもあるし、
それぞれの得意・苦手分野などもあると思うので、もっともっと家族の味方を増やしたら良いのでは?という視点でここからは書いていきます。
例えば周りに祖父母がいたり、知り合いがいたり、気軽に頼れるある程度知識があり、生活に余裕がある、体力がある、と言う方がいらっしゃれば、それはそれはもうすごく幸せなことだと思うんですけれども核家族が多い都市部は特に、パパママ両方の実家が遠方にあるということが多々あります。私の知り合いでも何人もそういう方々がいて、「これから保育園始まったら送迎とか慣らし保育とかどうしようかなぁ」なんて言う話をこの間していました。

育児は家庭だけで抱える必要もないし、味方となってくれる人・困ったときにちょっと助けてくれるような人たちを周りに持っておくっていうことが重要だと思います。私が第一子を産んだ最初の頃はこの地に引っ越してきたばっかりだったこともあり、知り合いは友達が都内に何人かいるレベル…でもみんな仕事もしてるし、子育てしてない子も多かったので頼ると言う意味ではちょっと考えづらかったので、私は頼り先がない人そのものでした。
ただ、この3年間で、やはりその地域活動やボランティアを通して、地域に出ていくことが多くなっていくといろんな方と知り合って人脈が自然に広がりました。地域活動の場にいる方々って結構、今の生活に余裕があったり、人のために何かしたいなと思ってる方々が多かったのもあったので、そこで割とつながりは作れました。
だから第二子が生まれた時は、私の中では何人か手札のような、たとえば困ったらちょっと相談してみようとか、ちょっとの時間だけでも子どもを預けてみようとかって思えるようになっていました。
ほんとにこの時代だからこそだと思うんですけれども、やっぱりまずは親である私たちが外に出ていくことが、子育てする上で大事なスキルだと感じています。人と関わることで、少しずつ子育てがシェアされていく感覚が生まれたり、それこそ「個人的な」子育てが社会に開かれたものになっていく。そのことによって、社会の見え方も変わるし、他人にも少なからず影響を与えていくことができる。
こう聞くと、「そんなのめんどくさい…ワンオペでも1人で解決しちゃった方が楽」と感じる人も多い気がします。でも、本当にそれでいいのか?と疑問を持ってしまうのです、どうしても。なぜなら、ワンオペ育児を子どもの世代にまで伝えたいかと言われると、わたしは「NO」だから。

でもその次に出てくる問題が、「じゃあどうやって頼るの?」って言う話ですね。これは私もまだ課題です。
なぜならやはり、私たちは「頼らないで生きること」を良しとする教育を受けてきた世代だからです。(たぶん、今の子どもたちも「自分の力で頑張って生きる」ことを良しとする教育を受けている子たちが多い気がしますが…このあたり、過渡期ですかねー。)
だから頼るってすごく難しくて、こんなこと頼んでいいのかなとかこれしたら相手が困るんじゃないからとか、考えてしまうと思います。
例えば、ちょっとの時間でも子どもを見ててもらいたい…けど見てもらっているうちにめちゃくちゃ泣き出したとしたら…?それによって大変な思いをさせたら申し訳ない、とかそういうこと考え出せば出すほどもうループになって、人に気を使ってしまうことが日本人の方には多いんじゃないかなと思っています。

これはもうほんとに私たちが受けた教育の中で、人にどうやって頼りながら生きていくかみたいな視点がなかったことの産物だなあと思うのですが、ほんとにちょっとのタイミングだけでも良いので他人にお願いしてみる練習を重ねるべきだなとわたしは思っています。
たとえば子どもの機嫌がいい時に短時間だけ理由もなくちょこっと預けてみる、みたいなことをやってもいいと思うのです。あとは風邪を引いた時にお買い物をお願いしたりとか。
そういう、小さい頼り方で、自分にも相手にも負担がなさそうなものから頼る訓練みたいなのは、親であるからこそ必要だなあとわたしは思っています。
わたしの中では、何人か頼れる人の手札があって、皆さんほんとにいつでもどこでも頼ってね!みたいな感じで言ってる方がほとんどです。きっと皆さんも子育ての大変さを乗り越えてきているからなのでしょうね。
あとは、子ども自身がさまざまな大人との関わりに慣れておくことも大事なので、託児付きのマッサージや子育て広場などに行ってみるとかしておくと、親にとっても子どもにとってもいろんな大人に見守ってもらうことが自然になります。人間関係って結局は信頼関係がいちばんなので、誰にでも頼ろう!とは一概には言えないのですが、頼るのはもはや技術。そう考えておくのも子育てにおいては重要だとわたしは考えています。

長々と書いていますが、ワンオペ育児はママがひとりで解決できるものではない、という視点がもっともっと当たり前になるといいなと感じます。ワンオペは、一人で解決するのではなく、ワンオペじゃない状況をどうつくるか、そのためには人の手が必然的に必要になる。そういうシンプルな解決方法を探っていくことで、子育てが楽になり、子育てに前向きになれることがあると思っています。

現代社会の中でどうやって頼り相手を探すか、っていうのが次の課題なのですが…
なにもない状態から頼り相手を探すのは難しいので、いくつか既存のシステムで活用出来そうなところから練習出来ると良いと思っています。

たとえば、私のオススメを少し紹介すると、一つ目は生活クラブの「エッコロ共済」です。
私はこのエッコロ共済に入るために生活クラブに加入したと言っても過言では無いのですが、月々掛け金120円でちょっとした用事があるときに、組合員さんに子どもを預けられるシステムになっています。預けたときの時間に応じて生活クラブからお金が出ると言う仕組みになっています。そもそも組合員の中に知り合いが居ないとハードルが高いのかもしれないのですが、そこさえクリア出来れば、気軽にちょっとした時に頼れる!みたいな制度だと思っていて、わたしも使ったことがあります。

あとは有名なものだと、ファミリーサポートサービスや、がっつり預けたい時は一時保育とか保育園でやってるものを利用するのもありですし…
あとは、Asmamaという企業が出している、子育てシェアと言うサービスです。
こちらも困った時に助けてくれる、シェアコンシェルジュという方々がコミュニティー内にいて、知り合いになった人たち同士がお互いに頼り会えるシステムをつくっています。
こちらも、たしか料金が500円くらいなので、本当に感謝の気持ち、みたいな感じでお支払いができて、あと近所の方々と繋がれるっていうメリットもあります。継続的な関係性を作っておくということも大事なので…あんまり知られてないのですがそういったものもあります。頼るって言うのにハードル高く感じる人も結構いると思うので、こういったシステムに頼りながら頼る技術を少しずつ磨くのも良いなあと思います。

「ワンオペ育児」という言葉から、いろんなことを考えてしまいました…
結局、「ひとりで解決するものではない」と言いながらも、どこにどのように頼るのかはそれぞれの腕の見せ所になってしまうところはあるのですが…笑
子育ては親育て、とも言えるくらい、人間としてどう生きていきたいか、この社会をどうしたいのか、を子育てしていると考える機会が増えますね。
子育てって深いなあと感じたことを、わたしの偏った思考と共につらつら書かせていただきました。
読んでいただいた方、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?