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参加チーム募集:バーチャルフィールドワーク2021@美波町

背景:

 2020年から、社会が大きく変わりました。原因云々は、もうどうでもいいでしょう。ただ注目したいのは2点あります。まずオンラインでも大抵の社会活動は上手く出来てしまうということ。一説には、社会人のタスクの8割ほどがコミュニケーションだと言われています。今までは、時間を掛けて会いに行き、対面で話をするのが、その典型でした。「電話では失礼ですので」、とかしばしば聞いたセリフです。
 でもやってみれば、オンラインでも出来てしまうわけです。授業も、その本質は情報伝達を中心としたコミュニケーションなわけで、オンラインとの相性は決して悪いわけではありません。しばしば2020年度の大学生が、いかにオンライン授業で苦しんだかが語り草になっていますが、よく聞いてみると、オンラインの可能性を、教える側も教わる側も追及した結果というわけではないのが殆どです。
 如何に今までのやり方が、無駄であり非効率なことが多かったか、そうした社会の諸々の不都合が、おかげで可視化され、露呈されてきたかというのが2点目です。大学で言えば、学生は学校が嫌いだし、大して利用もしていない校舎設備に対価を払っているということに、自覚的ではなかったし、教える側もきちんと新入生をケアしていたのか、疑問にも思えるということです。こうした諸々の、なんとなく違和感があることやおかしな点は、2020年に初めて生まれたのではなく、ずっと大学の中にあったのに過ぎないと思っています。

問題提起:

 こうした環境の中で、今大学生に必要な学びには何があるのでしょう。あくまで一つの意見ですが、経験的(experimental)、あるいは実証的(empirical)な学びが、そのうちの一つではないでしょうか。理科系の場合、実験がそうした作業に当たります。文科系の場合も、社会での実践や実証などを、学びの手法として含むことがしばしばあります。今の大学の学びで、文科系は単に本を読んでいるわけではないということは、昭和の時代に大学生活を送った世代には、なかなか理解できないとは思いますが。

 大学での学びを含んだ社会活動がオンラインに移行することで、こうした社会と接点を持って、経験的、実証的な学びが出来なくなったわけですが、これは大学生にとってもう一つ、致命的な影響があります。
それは「ガクチカ」です。
 恐らく、ここ3,4年の間に、しばしば使われるようになってきた言葉の「ガクチカ」ですが、これは就活で必ず問われる「学生時代に力を入れたこと」の略称だそうです。自分自身も初めて聞いた時に、ちょっと違和感を抱いた言葉ではあるのですが、実は今の就職活動では、①志望動機、②自己PR、そしてこの③ガクチカが、就活3大書類と言われているそうです。こうしたパターン化された書類を求めることとか、そもそもガクチカという略称とか、いろいろ批判的な意見もあるとは思いますが、実際の就活では、これを書かないと結果を出せないということは、まず大前提です。

 別稿で述べましたが、サークル、アルバイト、インターンがガクチカネタのご三家のようです。但し、ある人が、こんなツィートしていましたが、「バイトリーダーはバイトを雇っている店舗より多い」って、誇張かもしれませんが、さもありなん、という感じですね。既にガクチカというテーマ自体が、コモデティ化をしている状況だということです。

ガクチカなんて半分以上は嘘だろ
じゃなきゃカンボジアは学校で溢れてるしサー長はサークル数より多いしバイトリーダーはバイトを雇ってる店舗より多い

 しかし、2020年からは、これすら作れない学生さんが多いのではないでしょうか。カンボジアには行けませんし、サークル活動も制限され、アルバイトも激減しているようです。第一、授業がオンラインなのに、アルバイトだけは自由にできるという環境は想像ができません。

 そんな中で、学生の皆さんは、「ガクチカ」のネタになることに、困っていませんか?
 そもそも今の学生さんは、かつてとは違い、かなりきちんと授業を受けており、アルバイトやサークル活動の時間の捻出には、相当苦労をしていたはずです。それこそ大学で真剣に学んだ結果、何も「ガクチカ」が無いというのは、どこかおかしい。こうした問題提起は、本来大学側が何らかのアクションをすべきなのですが、相変わらず教員は大学を研究者養成機関だと思っているし、就職部門は就職率を上げることだけに一生懸命だし(これは特定の大学を指すわけではありませんが、そう捉えても否定はしませんよ)。

 正規科目の他に、社会と接点を持ちながら、ホットなテーマを、経験的、実証的に学んでいく機会があってもいいでしょう。そこから、誰もしていない、自分だけの「ガクチカ」のネタが作れるかもしれないわけです。

やりたいこと:

 こうした背景と問題意識から、ネットワークの環境を利用して、授業とは別に、企業やNGO、自治体などと連携して課題学習(PBL)を行うことで、学びを通した社会体験をする、オンラインでの学びのワークショップを開催することにしました。

 今回は、サテライトオフィスや様々な活性化対策で知られている、徳島県美波町を題材に、新たな学びの体験を提供します。学びのテーマは、今この国で最もホットな「地方創生」です。徳島県は、2020年度は47都道府県の中でもかなり転出者が多く、県内に過疎地や限界集落などを多く抱えています。

 しかし個々の自治体で見ると、興味深い地域も数多くあります。例えば今回取り上げる、徳島県の海沿いの町である美波町は、サテライトオフィスの誘致や、映画「波乗りオフィスへようこそ」で取り上げられるなど、様々な活性化策で知られています。過疎指定地域ですが、素晴らしい自然と、豊かな1次産業を背景に、新たに地域の価値の見直しを行い、産業の誘致、創出を目指しているこの町は、最先端の地方創生を実証的に知るには、最適な題材です。

 ではこの町に行ったことがある人は、どのくらいいますか?
東京から徳島市までは、直線距離で500キロほど、羽田から飛行機で1時間半強の距離です。美波町までは、空港からバスで30分ほどの距離にある徳島駅まで行き、さらに「汽車」で、2時間強ほど掛かります。ちなみに徳島は鉄道の電化が進んでいないので「汽車」です。
 つまり、そう簡単に行くことは出来ません。多分、純粋に観光だけで行く人は余りいないでしょう。何らかの地縁が無いと、行くことはできない場所だと思っています。
 美波町は、140.8 km²ほどの広さを持っています。日本の自治体の中では、それほど大きいものではありません。都心で言えば、ほぼ川崎市と同等の広さだと言えば、イメージできるでしょうか。地域内に公共交通機関は、町を横断している鉄道がほぼ唯一で、主たる交通機関は自動車です。要するに、現地に行った場合には、足の確保が必要です。
 つまり誰もが行こうと思い立てる場所ではないし、簡単には行けないし、行ったとしても、それだけではどうにもならないのです。これは別に貶しているわけではなく、この国の地方は、ごくごく限られた観光地以外は、本来人々の生活の場でもあり、外部から行くということには、こういう条件が重なるということです。

 最近は、総務省がしきりに「関係人口」という言葉を使います。人口減少社会の中で、居住、観光の他に、新たな地域、地方との関わり方を生み出そうということで、事業の公募などもやってはいるのですが、そもそも地縁が無い人たちをどうやって関係人口にするのか、そこの議論も策も抜けているような気がしてなりません。

 実は筆者達は、ちょっとした切っ掛けで、美波町の隣町で高知県との県境にある、海陽町という素晴らしい町を舞台に、インターンシップ兼学びをする機会を頂きました。2年ほど支援を頂いたのですが、余りにも強烈な体験だったので、その後も学生たちが自腹で現地に行くという経験を含め、延べ4年間継続しました。トップの写真は、最初にそのフィールドワークに行く途中で、美波町の近辺で写した学生です。空の青さと海の色に圧倒されました。

 そこでの詳細はともかくとして、その地域を理解する、学ぶということは、明らかにその地域にエンゲージメント(好感度)を生み出します。元々筆者は、学びが生み出す社会的な価値について実証研究しており、特に学習者のエンゲージメントの獲得効果に注目しています。対象の理解の深度と、対象に対するエンゲージメントの獲得には、強い相関があることが経験則的に明らかになっています。
 マーケティングの世界では、①理解度 (Rational)、②共感度(Emotional)、③行動意欲(Motivational)などがエンゲージメントの獲得に有効だと言われていいます。学習行動を通して、理解、共感、意欲などを生み出すため、その結果として対象へのエンゲージメントが獲得できる例を、まさに海陽町で目にしました。今でも、現地に行った学生達とは、あの時のことを話題にできますし、いつかはまた海陽町に行きたいと全員思っています。つまり地域を題材とした学習は、関係人口の創出に対して有効に働くのでしょう。
 我々は、学生の皆さんに、学びを通して、地縁を差し上げたいのです。そしてその経験が、ガクチカで書けるような、経験的な学びになればいいと考えています。

 但し美波町は、前述のように容易に行ける場所ではありません。何より、感染症の影響で、国内でも県をまたいだ移動は決して歓迎されません。ですので、2020年度丸一年掛けて、学生も教員も経験を積んだ、オンラインを使いましょう。美波町の協力のもとに、公開されてる資料などを使いながら、Street Viewなどを用いて町歩きをし、バーチャルなフィールドワーク(現地調査)を行います。その上で、美波町の様々な情報を発信する、「コンテンツマーケティング」のための広告計画を立案する課題にアプローチしていきます。「オンラインプロジェクト学習で、体験型ガクチカ作り」をテーマに、「バーチャルフィールドワーク@徳島県美波町」を実施します。
 主催は経営情報学会・社会連携型PBL研究部会で、美波町が後援してくださいます。以下、詳細です。

内容とPBL課題:

 このオンラインでのプロジェクト学習では、以下の課題に対してアプローチして行きます。

課題:

徳島県海部郡美波町を、一般の人に知ってもらうために、Webを使ったマーケティングをしたいと考えています。今回は、美波町の様々な情報を発信する、「コンテンツマーケティング」を行います。では、美波町の「何が」、人々に訴求するコンテンツになるでしょうか。オンラインを使ったリサーチを通して、コンテンツ案を立て、そのプロトタイプを作成してください

 ゴールは、参加チームごとの「美波町コンテンツ」案とプロトタイプの作成です。

 このPBLを通して、学生の皆さんが、①徳島県美波町という地域を知り、②地方を対象とした学びの経験と知識を積んで、③新たな地縁を作ることで、ガクチカネタの一つになることを目指します。

内容・スケジュール:

 期間は、2021年5月12日(水)~7月7日(水曜)まで、全部で7回、開催いたします。うちマイルストーンは3回(水曜日午後3時半~)、レクチャ&ミーティングを4回(土曜日午前9時半~)実施します。全てオンライン(Zoom)で行い、サブチャンネルとしてClubhouseを使います。同時にライブ配信(Facebook)を行い、Youtubeにオンデマンドコンテンツを残しますので、時間が合わない場合でも十分参加可能です。

① 5月14日(金)15時半~90分 「キックオフイベント」*
② 5月22日(土)9時半~90分 「地方創生学入門」
③ 5月29日(土)9時半~90分 「美波町を歩く1」
④ 6月5日(土)9時半~90分 「美波町の漁師さんと話してみよう」
⑤ 6月11日(金)15時半~90分 「中間報告兼フリートーク」*
⑥ 6月19日(土)9時半~90分 「美波町を歩く2」
⑦ 7月7日(水)15時半~100分 「成果共有」総括*

上記の中で、金曜、水曜に開催する「*」の3回をマイルストーンとして実施します。

 今回は、美波町の方々の他に、コーディネータとして大学の教員、元大手広告代理店役員が皆さんのアテンドとレクチャを行います。レクチャーでは、美波町の方に、町の概要を説明していただき、さらに国勢調査などのデータを用いて、地域の人口動態などの分析を行います。また、併せて広告プランニングやコンテンツマーケティングの概説も学びます。
 現地調査は、主にStreet Viewで行いますが、他にも現地の様子を知るためのコンテンツを用意いたします。現地の一次産業の従事者の方にも、ゲストスピーチをお願いする予定です。

対象他:

 主に、文科系大学生、2,3年生の参加を想定しています。3人以上(最大10名まで)のチームで申し込んでください。所属大学は問いません。またチームメンバーが同じ所属である必要もありません。
 参加費用は、学生1チーム(3~5名程度推奨)1,500円で、Peatix経由で申し込んでください。その他、詳細は改めてアナウンスします。




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