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N高通学コース在学記 by卒業生

はじめに

もう少しでN高卒業から1年の節目を迎えます。その記憶は色褪せません。
この機会に振り返りも兼ねて、在学記を執筆したいと思います。
筆者は既に卒業して1年が経っています。また主観によって偏った感想になります。それでもこれから入学される方への参考に少しでもなれば幸いです。
最後にN高関係者様へ向けて。もし御校に不利益が生じる可能性がある場合は、DM等でお伝えしていただけると幸いです。その際は即座に記事を削除します。


前提

N・S高は絶えず変わっています。在学中にも数多くの変化がありました。
ですので現在の様子は、私の在学時とは大きく変わっているでしょう。
在学記とは書きましたが実態は感想文なので、あらかじめご理解ください。

私は5期生として、心斎橋キャンパスに週3日で在籍していました。
通学コースにはAL制度という、端的に言えば授業の時間を自分で計画して自由に設計できる制度があります。私はAL生として、在学時はインディーゲームの開発をして、主に大会での入賞を目指して取り組んでいました。
また、通学コースのメインコンテンツであるプロジェクトNでは、難易度の高いβクラスに入って授業を受けていました。
生徒の中では色々できる方だったと自認しています。もちろん私以上に物事に熱心に取り組む生徒はたくさんいます。ともかく次から本題です。

キャンパス・生徒について

キャンパスや何期かでかなり特色が違いますが、基本的に上級生がそのキャンパスのキャラクターを作り出します。私が所属する5期は良く言えば多様な、悪く言えば最もカオスな世代でした。
取り組む内容は十人十色で、コミュニケーションの力や単純な能力も、性格も皆バラバラ。皆キャンパス内で独自の生存戦略を練って日々を過ごしながら、グループワークを通してさまざまな人と出逢います。

どこの学校にもあるとは思いますが、派閥が形成されていました。とは言っても小さなコミュニティが乱立している様子だったので、派閥に属していないからと言って排斥されたりはしません。
ただ、多かれ少なかれ皆過去を持っているので、あまりに逸脱しすぎると周囲の目は明らかに変わります。トラブルメーカーは去っていくことが多かったです。そういった意味合いで、派閥はある意味自警団的に機能していて、カオスな人間が集まっていても秩序が保たれていた環境でした。また先生も積極的にトラブルを仲裁する体制を取っていたので、致命的な問題は起こりにくい環境でした。
私はというと、2年生後半ぐらいからフロアが違うAL生のスペースに他の友人と過ごしていたので、少し離れたところから俯瞰していました。

AL生は生徒の中でもそれぞれが際立って多様な人間たちです。
その上高校生にしては、建設的なコミュニケーションが取れる集団です。
皆それぞれの目標に向かってマイペースに取り組みつつも、時に互いの活動を批評しあったり、協調したりします。尖った人間が多いので、好き嫌いの関係はありますが、大体は大人な対応を取れる人なので問題は生じません。
過去はAL制度を使うことは至難でしたが、今はある程度入りやすくなっているので、入学される方は目指すことをおすすめします。楽しいですよ。

後になって感じますがキャンパスは一つの国でした。それぞれが自分のロールを設定し、生活します。他の学校もそうなのかもしれませんが、N高はより自由な空間かつ、さまざまなバックグラウンドを持つ人が入り混じる場所なので、自分の立ち位置、振る舞いについてより濃密に、深く考える環境でした。今は梅田と天王寺に生徒が流れたことで、心斎橋キャンパスの雰囲気はだいぶ落ち着いたそうですが。

授業(プロジェクトN)について

ここから話すのはβクラスの内容なのでご注意を。
私の代の週3・5日生の授業はクオーターごとに区切りが設けられ、一つの授業ごとに課題を解決するプロジェクトを企画するといったものでした。最後には最終発表会で、ブロックごとに各グループが企画したプロジェクトを他キャンパスと共有し、フィードバックが行われます。ブロックから選抜されたグループはさらにもう一度発表の機会が与えられ、そこから優秀賞や特別賞などが毎回認定されるため、各グループ競いあうように入賞を目指して熱心に取り組みます。心斎橋キャンパスは先代の4期が強豪だったので、その威信をかけて入賞しようと必死でした。

発表の他にモックアップの作成も必須事項の場合が多いので、だいたい各グループで企画と制作に分かれますが、本筋のどういったプロジェクトにするかはグループ全体で歩みを揃えて進行します。リーダーや発表者といった役割決めは自由にできるので、民主的なグループや強いリーダーが引っ張るチームなど特色が現れます。大まかなフォーマットは渡され、進行の目安も授業ごとに設定されますが、自由度が高く先へ先へとどんどん進んだり、ある程度時間をかけて煮詰めることもできます。

よくできていて、やりがいがあるとても楽しい授業でした。
課題によって制限され、評価軸も明確であり、その上でクオーターの期間内に完了すること(みんな期限を納期と呼んでいました笑)が求められますが、他は自由でさまざまなストラテジーを考えられる面白いゲームです。
進行を加速するために完全に分業して効率化を図ったり、企画と制作の連携の強化のためにツールを発見してきたり、そのテーマの専門家にアポを取ってインタビューしたり。試行錯誤して入賞を目指す体験は、全日制の部活に代替するものだったのかと思います。

企画力や行動力、ツールのリテラシーなど学ぶことは多かったです。ただ一つ思うのは、これだけで食べて行けるような専門性が身に付くわけではありません。自分の持つ専門性を、どう活かして社会で活躍するかという勉強だったと思います。意義はあると信じていますが、現状私は専門性が無いことに悩んでいるので、通信授業の方の勉強(単位習得に必要な授業)をしっかり受け、特に数学2・B・3を追加受講しておけば、専門性を身につけるための進学先選びの幅が広がったなと後悔しています。
実際周りの人たちも通信授業の方をあまり真面目に取り組む人は少なかったので、入学される場合は意識しておくことを強くおすすめします。

勉強について(やっておけばよかったこと)

何よりも今振り返ってもっとやっておけば良かったと思うのは、直前に書きました”通信授業”です。その中でも必修科目に関して少し深掘りします。

N高は自由です。その自由を謳歌している時には気づきませんでしたが、ティーンエイジャーである高校生には少々危険なものだったと考えています。
高校生という段階は、まだ将来が見えない時期です。より詳細に言うと、自分で自立して、働いて、生きていくということの解像度が低い時期だと思います。環境などによって個人差はあると思いますが、私はまさに将来が見えていない状態でした。そんな状態なので、最低限の制約として必修科目を勉強するというミッションがあっても、自分のやりたいことを優先するために適当に完了させて、あとは放置してしまいました。

高校の勉強というのは、進学のための基礎作りですよね。
気になる知識をつまみ食いする方が楽しいし、やる気が出るのは確かです。ですが基礎を身につける訓練を受けてこそ、次のステップをより理解でき、より楽しく進むことができるのだと最近になって気づきました。この訓練は、自分からはなかなか受けれるものではありません。強制されて初めてできる人は多いと思います。
この学校では、訓練をあまり強制されません。期限が設けられていたり、通学コースに限り通信授業を受ける時間があったりしますが(AL生はより自由なので、この時間はないです)、通信授業なので集中して見なくても動画は進むし、確認テストも要点だけ掴めば突破できます。スマホを隠れていじっている人もいましたね。

進んで訓練を受ける意志がないと、うまく基礎作りは成功しないでしょう。私はこのことで大学入学後授業に関して頭を悩ませ、最終的にうつ病を発症しました。(もっともASD特性が原因である割合の方が高いですが)
ですのでこれから入学される方には、塾に通ったり追加講座を必死に履修したりするまで行かなくても、必修科目を真面目に、丁寧に聴くことを意識するようおすすめします。単位認定試験は単にアウトプットの場として、学習の定着に使うと良いと思います。もちろんやりたいことに熱心に取り組むことも良いですが、配分は考えるべきでしょう。私はこの学校生活で、”全振り”は危険だと知ることができました。

さいごに

これまで述べてきた通り、N高で与えられる自由には利点だけでなくカオスや欠点もありますが、それら全てを体験し3年を乗り切ったことは、私の成長において非常に大きな要因になっています。自由な校風に引き寄せられ、そこで多くのことを成す人を見て大いに影響を受けました。入学以前と比べて格段にコミュニケーションが取れるようになり、より進んで行動できるようになりました。また、出来なかったことにたくさん後悔もあります。
ですが大事なのはどの能力が向上した、どこが出来なかった、という話ではないのかなと思います。
高校生という大事な時期を、他の学校の人とは違うけれど自分は成長したという実感を得られました。このことが何より大切なんでしょう。

ここまでお読みくださりありがとうございました。
この記事には想像を上回るような、特別な内容は書かれていなかったと思います。N高通学コースのページを見ていれば大体想像できるような内容だったかもしれません。ですが、私にとってN高での生活は本当に濃密な体験だったのです。おそらくその体験は文章に伝えきれていないでしょう。
明確に体験を書ききれていないことに悔しさを覚えます。
また年を重ねて、リベンジします。

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