「AIが発明者として認められなかった」というニュースの背景を調べて 〜今週の仕事エッセイ〜

先週、淡々と仕事を書くスタイルをやめてエッセイにしたらすごく好評でした(^^♪
やはり仕事の羅列はダメだった・・・ということで今週のネタはこちら
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今週のニュース~AIは発明者として認められない~から

AIが「発明者」になっている特許は認めない判決が出た、というニュースです。これは日本だけではなく、各国で同じ判決が下りています。

本件、例えばコンピュータシミュレーションで計算した結果をもとに発明を届ける際に人間を発明者にするように、AIを使った人間を発明者にすれば問題になる話ではありませんでした。もしくは以下のような「発明者の定義があることから、「人間はノーアイデアで一切関わっていない、AIがすべてやったことだ」と厳密に考えたのでしょうか?

・発明者とは、当該発明の創作行為に現実に加担した者だけを指し、単なる補助者、助 言者、資金の提供者あるいは単に命令を下した者は、発明者とはならない。

特許庁「日本における発明者の決定」より(下のURL)

https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/tokkyo_shoi/document/seisakubukai-06-shiryou/paper07_1.pdf

どんな特許?

日本の出願(判決文によると「特願2020-543051」)は見られなかったので、国際出願の方を持ってきました。

https://patentscope2.wipo.int/search/en/detail.jsf?docId=WO2020079499

英語ですが、ブラウザの翻訳機能を使えばそこそこ読めると思います。

「WO2020079499 - FOOD CONTAINER AND DEVICES AND METHODS FOR ATTRACTING ENHANCED ATTENTION」

というのがこの特許の名称。Google翻訳してもらうと

「食品容器、注目を集めるための装置および方法」

よくわからないので請求項1を見てみましょう。原文は英語ですがGoogle翻訳で日本語化したものを載せます。

1. 以下を含む食品または飲料 (10) 容器:
容器の内部チャンバーを画定するほぼ円筒形の壁(12)。この壁は、内面(16)と外面(14)を有し、均一な厚さを有する。
ほぼ円筒形の壁の両端にある頂部と底部と、
ここで、壁(12)は、対応する内面および外面(14、16)上に対応する凸面および凹面のフラクタル要素(18〜28)を有するフラクタルプロファイルを有する。
凸面および凹面のフラクタル要素は、壁(12)の輪郭にピット(40)および膨らみ(42)を形成する。
容器の壁は柔軟であり、容器のフラクタルプロファイルを屈曲させることができる。
壁のフラクタルプロファイルにより、複数の前記容器の相互係合による結合が可能になる。そして
壁の可撓性により、複数の前記容器の前記または任意の結合の係合を解除することができる。

WO2020079499 - FOOD CONTAINER AND DEVICES AND METHODS FOR ATTRACTING ENHANCED ATTENTION
上記の発明の代表図

すごくざっくり解釈すると、

円筒形の容器(ジュースの缶みたいなもの)の壁面にフラクタル形状の凹凸がある

第一印象は「フラクタル形状である意味は?」でしたがこの理由の記載はありませんでした。
次の印象は「これ、AIである意味があるか?」でした。それについてはある特許事務所が記事を出していて、特にAIである必要性は感じない人間的な発想なので宣伝的な意味だろう、としていたのですが、探し直したもののソースを見つけられませんでした・・・私も同意見です。

その他に、フラクタル形状の具体性や発明の単一性(全く関係ない2つのものを1つの出願に入れてはいけない)の観点から疑問はある、要は「電波系特許」の臭いを感じました・・・

ということでこれについては一件落着、といったところですが、この先、機械学習で出てきた材料なんかはどうなるのか?(現状は人間が問いと評価基準を入れているので、間違いなく人間が発明者ですが)そういう意味では関係各位が色めき立つニュースでした。

今週の本棚から

今回は特許つながりでこちら。

「発明者がびっくりするような人」という特許も載っている(内容はまとも)のですが、「内容がびっくり」という特許もあります。

・・・当該特許を書いた人の真剣度が分からないため講評は差し控えますが、特許は出願人が出したそのままの内容で公開(公開特許公報)されます。

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