イノベーションの事例研究(iPhone)

前回まで、イノベーション、技術、マーケティングを分解してみました。それ本当?については事例を見てみることが一番!ということで、今回は、21世紀初頭を代表するイノベーション、iPhoneでみてみたいと思います。


iPhone「前」の世界

ハードウェア的には携帯電話、いわゆるフューチャーホン、ガラケーと呼ばれているものが発展して、メール機能(キャリアメール)やi-Modeに代表されるようなデータ情報機能を有するようになっていました。一方でビジネスパーソンを中心に、PDAと呼ばれる携帯情報端末が使われていました。「ZAURUS」とか「BlackBerry」といった製品たちです。小さなPCのような見た目で、キーボードとタッチペンで入力をしていました。

通信環境は有線が圧倒的でしたが、前述の携帯電話の情報端末化に見られるように無線通信も少しずつ良くなってきており、Wi-Fiが普及する直前のタイミングでした。

技術

後から見ると、タッチパネルでキーボードをなくしたデザインが最大の技術的な転換点だったように見えます。フルキーボードの電話はありえませんし、携帯電話のキーボードはデータ入力にベストとは言えません。
もちろん、そのデザインを支える技術、OSや実装といったところも大きかったと思います。

マーケティング

スティーブ・ジョブス氏が言ったという「電話を再発明する」、これに尽きます。これがもし「今日は新しい情報端末を持ってきました」だったらここまで普及していたかどうか・・・あのときはポカンとしたものですが、今は私も立派にiPhoneみたいなスマホを使っています。
もちろん、「電話を再発明する」という宣言1つで売れたら苦労しないし、これを「スティーブ・ジョブス氏だから」で片付けると全く参考にならないので、他の理由を考えてみます。

  1. 携帯情報端末ではなく電話という大きな市場を選んだ:言うまでもなく。選ぶのは勝手ですが・・・

  2. これまで掴んできたファンの存在とファンの質:デザイナー、クリエータといった、今で言うインフルエンサー的な人たちに多くのファンを持っていました。Mac=カッコいい、というイメージはできていたのが大きかったかと思います。そういう意味で、iPhoneは「勝者の戦略」だったのかな?とも思います。ではなぜこんなファンを獲得したかというと・・・

  3. 「シンプル」という思想:私は逆の発想で生きていたので、PCは拡張性!ソフトウェアで機能を足す!でした。従来からPCを使っている人の多数派はこっちでした。逆にAppleは「シンプル」で、少数派でも他に競争相手のいない世界で顧客を掴み続けています。そして「シンプル」さからくる「デザイン性」。iPhoneから遡ること約10年、iMacもすごくよく売れたものでした。周辺機器メーカーがすごく影響を受けて・・・話を戻すと、ぶれない思想を押し出し続けてファンを確保しており、彼らの期待を裏切らない(上回る?)コンセプトを出せたのかな?と思います。なぜそれができたかというと・・・

  4. スティーブ・ジョブス氏がお金を出している企業だから:オーナーか雇われか、大きい問題です。あれを世に出すために「ユーザーはシンプルな携帯電話とPDAを望んでいるんだ!」というマーケティングデータがあったとも、ましてやスティーブ・ジョブス氏がそれを使って社内を説得したとも、思えない。ましてや前述のiMacのときには最初「USBしかないMacで今までの周辺機器、どうするんだ?」と笑われてたし(今となってはこっちの批判の方が笑い話)

あまりに尖ったイノベーションをしようとすると、やはりそれなりのバックボーンとオーナーシップは必要なのか?とはいえ明確でぶれない、(そして人が行こうとしている方向に合っている、、、年を取るとPCを拡張する気力がなくなってきて、シンプルが一番になってきた。。。)結局自分の素と合っている思想だから徹底できたのか・・・
次回はもう少し極端でないイノベーションを探してみたいと思います。

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