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水危機 ほんとうの話

山を買いたいという相談を受けました。動機をお聞きすると、外国資本が水資源を買い漁っているらしいから守りたいのだ…と。

このお話、定期的に出てくるのですが、山を買ったからといって水資源を得たということにはならないのですが…と申し上げると、狐につままれたような顔になり、そして首をかしげて帰っていかれました。納得されていないのですね。

一連の噂の発端が自身が管理するある山林の売買に絡む話だったので、私はそう説明できるのですが、普段冷静に論理的に物事を捉える方であっても、この話になると合理性がないことを頭から信じ込んでしまうのが不思議でなりません。

水というのは、それだけデリケートな話題なのでしょう。もっとも、山に関心を持っていただけることはとてもありがたいことでもあります。森が水の循環に影響を与えることは事実。そのメカニズムを多くの方に知っていただくことが大事なのだろうと思いますが、なかなか難しいチャレンジですね。

冒頭のようなお話をいただいた際、最近は1冊の書籍を推薦することにしています。ちょうど3年前に書いた書評を再掲します。

以下、2021/3/13 Facebook タイムラインより


「水危機 ほんとうの話」沖 大幹(新潮選書)

水文学の専門家による1冊で、水問題に興味のある方におすすめです。個人的に気になったところを箇条書きに列記してみます。

  • 水は石油や石炭のように何処かに溜まっている資源ではなく、太陽エネルギーによって循環している再生資源(地球上の水は無くならない)

  • 日本の水道料金の平均は約200円/t、工業用水は約120円/t、農業用水は3〜4円/t

  • あらゆる資源の中で、1,000円/tに満たないのは水だけ、つまり最も安い資源が水

  • 水は安い、重い、かさ張るのに加えて劣化するので、貯めておいたり運んだりする費用が相対的に高価となり、必要なときに必要な場所に存在しないのなら利用可能な資源とは言えない

  • 流域を越えて運べない、貯めておけないという基本原則は、水をローカルな資源に特徴づける(だから人は地域の水に愛着を持つ?)

  • ローカルな資源であるということは、完全市場における一物一価の原則が成立せず(相場価格が成立しない)、その料金は地域によってバラバラ
     例)1ヶ月で10㎥使用した場合の水道料金
     335円(山梨県/富士河口湖町)
     5,378円(新潟県/新潟東港臨海水道企業団)

  • 自分の地域の水道料金が高くとも、他所から運ぶよりは安価なので地元の水を使うしか選択肢はない

  • 水問題とは食料と同様に分配の問題だが、それは足りてるところから足りないところに運ぶという手段は選択肢に入らない

  • 水の足りないところでは、地域の水資源を有効に使うための社会インフラを整備するしかない(他所の資源に頼ることはできない)

  • 木を植えると水資源が守られる、とは限らない(そもそも森は水の消費者〜森と水の美しい誤解)

  • ミネラルウォーターは比較的高いが、全体の消費量に対し比率が低い(生活用水の0.01%、飲料水の1%)ので、全体の議論には役に立たない要素

以下私見です。

中国資本が日本の水資源を求めて山林を買い漁っているという話はデマだ、と10数年以上前から言い続けてきましたが、それは水を得るのに山を買う必要はないことと、日本から運んだとしても経済的に合わない、という2つの理由からです。

これは水不足のときに、なぜ水売りの商売をする人が出てこないのか(なぜ災害時の給水は行政が行うのか)を考えてみればわかることでもあります。

水は必要不可欠、とても大事な資源であることに異論のある人はいないでしょう。ただそのことで、どんなに価格が高騰しても取引されるはずだという思い込みが生まれ、様々な誤解の始まりとなるのかもしれません。

つまり、そこにつけこまれる(騙される/利用される)隙があるということになります。

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