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エコだよエコ

眠れない。ゆっくり羊を数えてみる。
羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹。そうしてやがて羊はくるくる回り始めくるくる回って回りすぎてもう一体何匹いるのか数えることすらできなくなっていく。

午前二時。
「眠れないの?」あの子の気配に問いかける。「うん眠れないの。こういうときはねぇ月を見よう」あの子がそういいながらベッドを抜け出すから少し面倒くさいけどわたしも起きだす。

カーテンを開けて窓を開けてそれから空を見る。「月出てないね。曇ってるね」わたしが言う。「今日は月のない夜なの?」
「うんそうじゃなくて多分曇ってるだけだと思うけど」

仕方がないからまたベッドに二人でもぐりこむ。
「ねぇ背中をマッサージして」いつものようにあの子が言う。
「あまえんぼうさんでこまるなぁ」
そういいながらそっとあの子の背中を撫でる。それでまもなく安心したようにあの子はすやすや寝息をたてる。嘘つき。眠れないって言ったのどこの誰だっけ。
肩のところまで布団をかぶせそっとぽんぽんおまじないみたいにあの子の肩をたたく。それから自分も枕に頭をのせそっと目を閉じる。

「雷が鳴り始めたね」
脳みその奥の、木の根っこみたいに神経細胞がいり組んだあたりで誰かが呟く。
それから雨。
天が落ちてきたのかと思うくらい、世界が終わるのかと思うくらいどしゃどしゃの雨。

「だけどここは安全だよ」別の誰かがそう宣言して頭蓋の中の電気のスイッチをぱちって切る。「エコだよエコ」
雷の音って本当に雷神の太鼓の音みたいだなってそう思うのと同時に誰かがそう耳元で呟いてそれでそれきり記憶が真っ暗になった。

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