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シシャモの旗印のもとに

恥と滅びの美学というものを失くした魑魅魍魎どもが跋扈するこの世界を紐で括られたシシャモを高々と振りかざし進むのだ。

シシャモの旗印のもとに。

晴れ渡った空の下、青い海の上に虫のように一面黒い船がぷかぷか浮いていた。まるで戦争みたいに。見とれてたら道路わきのフェイクメタルのラバーポールにぶつかりそうになる。こんちくしょうこんにちわ。悲しみよこんにちわ。

水辺の景色はいつだって綺麗で、わたしのこの酸っぱい魂ですら、油断したら奪われそうになってしまうのだけれど。
うっとりとばかりしてもいられないのが人生ってものだから、うっとりとばかりもしてられない。そういうわたしって結構素直。

さあ、夏を渡るのだ。いのちがけの夏を。
灼熱の太陽に焼き焦げるシシャモの無念の塩味に、色めき騒ぐ猫どもの林立する尻尾をも跨いで進むのだ。








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