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2020年/年間ベストアルバム10選

Primitive Man  “Immersion”

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現行Doom/Sludgeの帝王(と自分は勝手に崇拝している)が放った快作アルバム。語弊を恐れずに言うと「キャッチー」に、しかもマックスクオリティでその漆黒世界の啓蒙活動を続ける彼らも今作でついに3枚目。途中、ブラストを入れたり、雲間から陽が差すようなメロディを挿入してみたり、所々で優男感を見せつつも、結局最後はズルズル引きずり回して底の底まで突き落とす重遅音。擬似的にDV彼氏持ち体験が味わえる。日常生活でちょっとだけ落ち込んだけど、何かハッキリしない気分の時、もう少し致命的に「追い込み」をかけたい時の音楽として大変重宝した。
お気に入り:Track 1 / The Lifer


ANISAKIS  “大いなる”

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本当に偶然Twitterで誰かの発したツイートを元に存在を知ったポストパンクバンドの3作目。「銅像の裏に哀しいって、油性のペンで哀しいって哀しいって」という歌い出しから感じられるシュールレアリズム味。所々挿入されるコーラスパートもだいぶイカれていて、つい一緒に歌いたくなってしまった。というか、仕事中不意に思い出してはつい歌ってしまっていた「たぶん犯罪♪」もしかすると自分が知らなかっただけで、もうすでに知る人ぞ知るバンドなのかもしれない。しかし、国内で活動するバンドの数を考えると、このタイミングで遭遇できたことはやっぱり一つの奇跡だと思う。
お気に入り:Track 1 / 銅像の裏


macaroomと知久寿焼  “kodomono odoriko”

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「元たま 知久寿焼のソロ楽曲をエレクトロニカアレンジ」という取り組みに惹かれて注目していたmacaroomと知久寿焼の共作アルバム。知久さんのあの特徴的な歌声や牧歌的な空気感を壊さないように、ギリギリの塩梅で彼のこれまで手がけたソロ楽曲を電子音コーティングしていて、興味深かった。ウクレレだけで表現するよりも感情の矛先があちこちに向かって伸びているのを感じ取れ、知久さんの声の魅力がグッと広がった秀作。
お気に入り:Track 1 / kodomono odoriko


Venom Prison  “Primeval”

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UK発Extreme Death Metalバンドの初期デモ音源の再録と新曲をカップリングした編集盤。ラリッサ嬢の発狂Voが本当に魅力的で、感覚としてはArch Enemyにアンジェラが参加した時の衝撃に近い。モダンでテクニカルに寄せすぎないOSDMへのリスペクトもしっかり感じられる楽曲で、尚且つ踊れるパートもちゃんと用意してある親切設計。ラストの新曲2曲では、効果的なシンガロングパートや発狂したままメロディアスに歌いあげる疾走パートがあり、更なる進化を感じつつ2021年発表予定の新作フルアルバムに期待が高まる。
お気に入り:Track 12 / Slayer of Holofernes


eastern youth  “2020”

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真っ赤なアートワークに直球タイトルそして全力の熱唱。今作はBa村岡さんの歌唱パートこそ無かったものの、前作以上に全編に渡って彼女のコーラスが効いており、歌詞に潜む叙情性がよりドラマチックに感じられた。吉野さんの歌も徹頭徹尾「俺はこんな感じだ」を貫いており、変に優しく寄り添わない「他人」のスタンスが心地よい。気がつけば、この「他人」の独り言に共感したり励まされたりを繰り返しながら、もう20年以上の月日が流れたことになり、改めて彼らの精力的な活動に感謝。
お気に入り:Track 8 / 月に手を伸ばせ


GEZAN  “狂(KLUE)”

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年明け早々1月末にリリースされたにも関わらず、バンド演奏だけでなく、声のサンプリングやポエトリーリーディングなどを交えた混沌とした音世界は、結果的にその後の2020年を象徴する歴史的作品となった。いわゆるロックのフォーマットを逸脱したような色とりどりの楽曲が数珠つなぎに高いテンションをリレーし、11曲目「東京」でピークを迎え、アドレナリンが一気に噴き出す。何度聴いても痺れるし、毎回何かしら新しい発見がある魔作。
お気に入り:Track 11 / 東京


Climb The Mind  ”蕾”

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2018年に出したDischarming manとのSplit 7inchに収録されている曲がとても美しく、それが再録ということもあり初めて彼らのフルアルバムを購入。定例文フレーズで説明すると「ハスキーな歌声がバックの演奏をグイグイ引っ張る歌物ロックスタイル」で、短くありふれた言い回しながら情感溢れるワードセンスが本当に素晴らしい。旧作のほとんどが廃盤ながら一部でカルト的人気を誇っているというのも頷ける。購入以来、毎朝の散歩のお供に。
お気に入り:Track 4 / 歩み


ZVIZMO  “II”

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蛍光灯を発光させて出すノイズ楽器「オプトロン」奏者の伊東篤宏と元BiSのテンテンコによるユニット2作目。ノイズとトライバルビートの組み合わせから抜きを効果的に取り入れたミニマルテクノ(?)と説明がすごく難しいが、とにかく無心になって首振れる素敵音楽。作業中仕事中ランニング中、何かしら集中の必要なタイミングで活躍。
お気に入り:Track 7 / Killller FxxxxxK feat. K-BOMB


環ROY  “Anyways”

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5lackやBesなどベテラン勢から¥ellow Bucks、LSBOYZ、LEXなど挙げればキリがないほど、界隈で括れば2020年も日本語RAP豊作の年だったに違いない、が、サブスクでチラッと1~2周チェックしただけで何となく聴いたつもりになってしまうものが多かった。結局フィジカルでパッケージされたものに感動したいタイプなので、このブックレットの面倒臭い仕様がとても興味深かった。彼ほどのキャリアのラッパーが、このタイミングで全トラック自前というのも面白く、また特徴的な語感で耳に突き刺すライミングも、日常に変な脚色しないリリックも全てが丁度良く、2020年の自分にはもっとも共感できたラップアルバム。
お気に入り:Track9  / on the park


preparationset  “perception”

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2020年も残すところ1週間を切ったタイミングで、滑り込みリリースされた傑作。あのリー・ペリー来日公演でオープニングアクトを務めたことで一躍有名になった茨城拠点のダブバンド初のフルアルバム。個人的には名前だけぼんやり知ってる状態が数年続き、そして今年EARTHDOM支援コンピレーション “2020, the Battle Continues Vol.5” に参加していたのをきっかけに、ようやく彼らの楽曲を耳にすることができた。ダブを基礎にジャズやアンビエントノイズを旨味成分として加えたような重音チルサウンド。年の瀬の喧騒に、元旦の朝焼けに間に合って本当に良かった。
お気に入り:Track 4 / stagnant

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