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キャンプ場×林業の聖地?! ふもとっぱら

いま、日本で一番有名なキャンプ場といえば、やはり「ふもとっぱら」ではないでしょうか?

富士山の雄大な景色が真っ正面に見える広大なキャンプ場で、長渕剛の「10万人オールナイト・ライヴ2015 in 富士山麓」や「ゆるキャン△」の舞台にもなった「キャンパーの聖地」です。
私も年に3~4回利用させていただいています。

ふもとっぱらのキャンプ場についての情報はたくさんあるので、今回は「ふもとっぱらと林業」というお話です。

ふもとっぱらの歴史

「ふもとっぱら」と今川義元の関係

「ふもとっぱら」といえば、なんと言っても、真っ正面に広がる雄大な富士の姿に魅了されますが、
実際にキャンプすると、振り返った時に見える迫力満点の山にも目を奪われます。

筆者撮影

背後の山は毛無山といって、標高1,964mで日本二百名山にも選ばれています。
この毛無山の富士山側は「富士金山」と呼ばれる金鉱脈があり、この地を領有した今川義元や武田氏、後北条氏、そして徳川家の財政と軍事力を支えてきたそうです。
「毛無山」という名前も、ピーク時には数千軒もあったという金掘り工夫の薪のために、山の木がことごとく伐採され丸裸になったから...という説もあります。

「ふもとっぱら」と竹川家

その後、この毛無山地とその麓に広がる土地は、ふもとっぱらキャンプ場を経営する「株式会社ふもとっぱら」社長の竹川将樹さんの祖先が、約440年前に戦功として下され、森林管理を任されたそうです。

里人竹川藤左衛門某は竹川肥後守の末孫なり、天正中、甲州後陣の時、大神君に属し奉り彼地にて討死す、其恩賞に富士野三里の間の御朱璽を賜うといへり、今は富士山公林の山守なり

『駿河国新風土記』

のちの話ですが、キャンプ場のあの広大な土地が竹川家だけの所有地だからこそ、他の地権者との面倒な調整とかをせずに、ロックフェスや長渕剛の10万人ライブも実現できたそうです。

「ふもとっぱら」と東京農大

毛無山地の麓に広がる原野は、
1932年に当時の国策だった満州開拓のため、寒冷地での農業実習や作物の栽培の実験農場として、東京農大が借りうけました。
しかし、火山特有の岩石が多く酸性土壌のため、農場開墾はうまくいかず、戦後まであまり利用されていなかったそうです。

その後、農大の実験牧場を経て、竹川家に返還され、
2006年「ふもとっぱら」がスタートしました。
ちなみに、「ふもとっぱら」は、元々の地名「富士宮市麓(ふもと)」+「原っぱ」から名付けられたそうです。

「ふもとっぱら」のもうひとつの顔

今では、「ふもとっぱら」=「富士山がきれいに見える広大なキャンプ場」というのは、キャンプに少しでも興味のある人ならだれでも知っていることですが、実は、「ふもとっぱら」はキャンプ場だけではないんです。

竹川家の家業?「富士山公林の山守」

ふもとっぱらキャンプ場を経営する「株式会社ふもとっぱら」社長の竹川将樹氏は、林業の発展のための団体である (公益社団法人) 静岡県林業会議所の副会頭や、(NPO法人) 富士森林施業技術研究所の副理事長などに就任されています。
また、「株式会社ふもとっぱら」の設立目的はキャンプ場経営が一番目ではなく、牧場・農園経営と産品販売、林業・造園業となっています。

「株式会社ふもとっぱら」会社設立の目的
1.牧場、農園の経営および畜産品・農産品の生産・加工・販売並びに輸出入
2.林業及び造園業
3.不動産の売買、賃貸、仲介、斡施及び管理
4.キャンプ場、宿泊施設及び飲食店の経営 ・・・

株式会社ふもとっぱら公式HPより

駿河国新風土記に「今は富士山公林の山守なり」と記された竹川家は「今も富士山公林の山守なり」です。

林業との相乗効果

GWや夏休みなどの繁忙期に「ふもとっぱらキャンプ場」を利用した際、直接、入場ゲートに行くのではなく、混雑緩和のため、道路の反対側に広がるスギ林の中に誘導された経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。

もちろんそのスギ林も「ふもとっぱら」の敷地であり、一帯のスギ林は「キャンプ場整備のため」ではなく、「林業」として、間伐や枝打ちなどがきちんと管理されています。

伐採の様子 公式instagramより

毛無山一帯で産出された木材は、建材や家具製造に使われ、端材などはキャンプ場の薪やコテージのボイラー用として有効に使われています。

FOREST JOURNAL 2020/10/15

「ふもとっぱら」がファミリーや女性から支持される大きな理由のひとつである清潔な多目的トイレも、自社のヒノキ材が使われています。

FOREST JOURNAL 2020/10/15

持続可能な林業を実現

「ふもとっぱら」では、独自の「林業兼業」が機能しているそうです。
冬が本場の林業と夏が繁忙期のキャンプ場の組み合わせにより、林業に携わる一方で、夏はキャンプ場のスタッフとして働いたり、地域の鳥獣対策としてのワナ猟や鹿のジビエ加工をしたり、星空ツアーや森林セラピーのガイドなど、収入とやりがいの面でも相乗効果を生んでいるそうです。

また、キャンプ場による収益のおかげで、林業に必要な機材導入もできるそうです。


コロナによる外出や旅行の自粛の受け皿が発端となったキャンプ・ブームですが、コロナによる制約がなくなっても、人気は衰えていないようです。

「ふもとっぱら」のような相乗効果、好循環が日本各地の森林で増えていくといいですね。

最後までありがとうございます。



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