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ウェザーニュースで振り返る「熊本地震(4月15日)」

【はじめに】
この記事では、2016年4月14日に1回目の「震度7」、4月16日に2回目の「震度7」を観測した「熊本地震」について、ウェザーニューズ(WNI)社の「SOLiVE24」で放送された報道特別番組を振り返りながら、熊本地震の当時の状況をコメンタリーしていきたいと思います。

今回は、震度7を観測した日“ではなく”、敢えて「ウェザーニュース」地象センター(当時)の山口剛央さんの地震解説が冴え渡っていた「4月15日」を先に振り返っていきたいと思います。

4.4月15日 午前0時台

動画内の時間では「32分20秒」過ぎから『最大震度6強の緊急地震速報』が入ります。午前0時03分に発生したM6.4の地震です。

最初の震度7の地震が「M6.5(速報値M6.4)」だったのに対し、この地震も緊急地震速報の段階では「M6後半」で推移。実際「M6.4・最大震度6強」でした。(私は瞬間的に「双子地震」かなと当時は思っていましたね。)

そして、地震発生から3分あまりで、震源情報が発表された際、冷静にアナウンスを続けてきた「宇野沢」さんの本音が思わずマイクに乗ります。

(35:35)
宇野沢「何これ……(小声)」

「はい、こちら、震源の深さ10km、地震の規模を示すマグニチュードは6.4とされています。『若干の海面変動あり』と出ています。」
「もし……これまで内陸の地震でしたけども、一部震源の断層が海底まで伸びた可能性もありますね。ですので、海の中で作業をされている方は海から離れて下さい。」

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コメント欄では「何これ」と呟いた理由について幾つか考察されていましたが、私は「これまでは『津波なし』だったのに、『若干の海面変動あり』と津波に関する情報が発表されたこと」に驚いた(報道姿勢としては、間違いでないかスタッフに確認したかった)のではないかと思います。

4(1)山口さん解説

そして、地震発生から約15分後、地象センターの山口剛央さんが「解説」を行います。極力、多くの言葉を引用して振り返っていきたいと思います。

(48:00)
宇野沢さん「今回の大きな地震で、内陸から始まって、ちょっと震源の場所が海寄りに寄ってきたかなという感じはするんですが、いずれにしても狭い範囲で激しい揺れが続いてるなという感じがします。そこらへんについて、教えて下さい。」

(注意)2021年現在「震度データベース」で調べると、14日21時の地震と、15日00時の地震では震源位置(破壊開始地点)は、数キロ程度の差で、明瞭に海側に寄ったとは言い難い印象であることを申し添えておきます。

(48:20)
山口さん
「先ほどまで『本震がM6.5で、その後の余震に対して警戒を』とお伝えをしてきたんですけども、ちょっと1個注目に値するのが、先ほどの00時03分の地震ですね。速報のマグニチュードで6.4と発表されましたけれども、本震とほぼ同じ規模です。
 典型的な地震ですと、最大余震でも、本震から一回り小さい規模というのがセオリーですけども、同じ規模のものが短時間に2回来ている、と。」

この段階で既に「普通の本震-余震型」ではないかも知れないと開口一番、語っています。そして、

(49:05)
「最初の地震で震度6弱だった『宇城市』は先ほどの地震で6強と、1つランク強まっています。そして、最初の地震で震度7を観測した『益城町』は今現在『震度5弱以上と推定』されるんですが、今の所データが入ってきていない状況となっています。ですんで、益城町の0時3分の地震の震度、まだ分からない状態です。」
「過去を遡りますと、2003年の宮城県で同じような事例がありました。」

宮城県北部(現・中部)地震
・2003/07/26 00:13 12km M5.6 最大震度6弱
・2003/07/26 07:13 12km M6.4 最大震度6強
・2003/07/26 16:56 12km M5.5 最大震度6弱

 強い揺れが何回か来た地震。また、九州では1968年の『えびの地震』。

えびの地震
・1968/02/21 08:51 M5.7
・1968/02/21 10:44 M6.1 (震度6:えびの町真幸)

 これも、本震と近いような地震が立て続けに起きて、被害を拡大した。
「今回の熊本県の地震でも、典型的に余震活動が落ち着いていくというより、比較的長い期間、少なくとも一週間だと思うんですけれども、かなり強い揺れが繰り返して来る可能性があるのではないかと、先ほどの地震を見て思った所です。」

結果的に、「震度3以上を2桁の回数」記録したのが、最初の地震発生から1週間後の4月21日までだったことを鑑みると、的確な見通しだったと言えそうです。

(50:50)
山口「色んな地震のタイプがあるんですけれども、本震で岩盤に溜まっているストレスが全て開放しきれず残してしまった場合は、後々になってバリバリと壊れることもある。まだ最初の地震から3時間でこれだけ地震が頻発しているということは、また強い地震が来ることは想定した方が良いのかなと思います。」
「最初の地震で壊れかけた建物ですとか、被害が大きくなる可能性も。先ほどまでお伝えしていた以上に、頭の中に入れておく必要がある状況になってきたのかなと思います。」

↓ 実際、NHKではこの地震で「建物」が崩れるシーンも捉えられています。

(52:00)
宇野沢「少し地震の発生場所が変化していることもあって、元々大きな地震があって、余震という形で、少し規模の小さいものが段々発生していく流れよりも、また違う場所で大きめの地震がまた新たに発生したというイメージに近いんでしょうかね?」
(要約)先ほどまでと別の場所で、別の地震が起きたと見た方が良いのか?

山口「別のものかは震源の位置を精査する必要があるので何とも言えませんが、余震と言うには余りにも大きな部類になるんで、そういったものが続いているということは、恐らく震源自体はそこまで大きく動いている感じでは無いんですけども、少し場所を移した形で立て続けに起きている状況にはある。」

と、『震源が動いている』という誤解を可能な限り解こうとされています。更に、宇野沢さんの質問で、

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(53:00)
宇野沢「となると、一番最初に揺れた所から少しずつ沿岸に近づいているということもあります。今回の一連の地震で、今まであまり大きく揺れなかった所(熊本市内など)でもまた大きく揺れる可能性もあるんですかね。

山口「そうですね、どこまで広がるかというのはあるんですけれども、実際問題、宇城市ですと、21時26分の地震で6弱、0時03分の地震では6強と。で、6弱と6強で1ランク差なんですけど、被害という点からいくと格段にやっぱり大きくなります、6弱と6強はかなり違ってくると思って頂いて結構です。
 今までの最大震度だった所についてもですね、同じ規模か、ちょっと何とも言えないですけれど、震源の場所によってはもう1ランク大きなものが来てもおかしくはない状況にはあるんではないか、とここ1~2時間の地震を見ていても感じる所ですね。」

ここが、ウェザーニュース山口さんの真骨頂といいますか、地上波テレビでは殆ど言及されていなかった部分だと感じます。

『憶測での発言を避け』、『実測の宇城市の震度を例に取り事実を伝え』、『混乱を極力招かない表現で適切に注意喚起をする』ことをしています。

結果的には、宇野沢さんの勘と、山口さんの危惧が的中する形となります。

4/14 → 4/16
7(6.6) → 7(6.7) 益城町宮園
6弱 → 7(6.6) 西原村小森
6弱 → 6強 熊本西区春日(熊本地方気象台)
4  → 6弱 南阿蘇村中松
2  → 6弱 (大分県)別府市鶴見

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軒並み「最大震度」を更新する結果となり、特に南阿蘇から大分県にかけては、全く予期していないような烈しい揺れとなりましたから。

4(2)山口さん解説

動画変わって、0時40分台の解説では、上の解説よりも更に踏み込んだ解説となっています。

(12:10)
山口さん
「かなり余震の数が多くなっている。一連の地震活動の最大の特徴となっているかと思います。午前0時までに有感地震40回、非常に強い揺れを含んで起きている。」
「そして、先ほど『震源の位置が動いているか』という点につきましては、速報の段階では、大きくズレている兆候は今の所は見受けられないです。」

「M6クラスの地震ですので、断層の壊れた長さは10kmとかに及ぶかと思うが、そのどこかで余震が起きた時に、地震の起きる場所によっては、今いる場所、住んでいる場所に近寄って起きる場合には、最初の地震よりも一回り揺れが強くなる可能性は含まれています。宇城市がその例ですね。」

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(14:55)
山口「一連の地震で、例えば家が傾いているとかいうことがあれば、もうその中には今晩は入らない方が良いかと思います。ブロック塀とかの下敷きになった方の例も過去には多数あるので、倒れかかっているものなどには暫く近づかないようにして下さい。」

5.4月15日 午前1時台

(51:15)
山口
「今後の見通しとしても、すぐには収まることはないと思います。過去に余震が活発だった事例:2004年の新潟県中越地震では、最初の地震から4日経って震度6弱の地震があった。少なくとも1週間ぐらいは強い余震の恐れがあります。
「ひび割れた家やブロック塀などには、当分の間、近づかないで下さい。」

この後も夜を徹して地震に関する情報を伝え続け、結局、その翌日4月16日の深夜1時25分の「熊本地震(いわゆる本震)」に繋がっていくこととなります。

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