見出し画像

「中田敦彦×村上健志」同期対談で学ぶ ~俳句とは~(その2)

【はじめに】
この記事は2021年6月14日、フルーツポンチ村上のムラカミーチャンネルに投稿された『同期芸人・中田敦彦さんとコラボ! あっちゃんありがとう。』を通して、「俳句」に関するトークを中心に纏めていきます。

前編(その1)はこちらからどうぞ( ↓ )

4.村上:俳句なら、文字に『耳を傾けてもらえる」

芸風もあるでしょうが、伝えたいことを一生懸命、言葉で伝えようとすればするほど聞いてもらいづらくなるという村上さん。しかし文字のみを届ける「俳句」では、読み手の方から「耳をすませて」貰えると感じるんだとか。

一方、あっちゃんは、本人談では「文字が苦手」で、言葉に(妙に)重みがあるから、毎日書かずに(生配信やYouTubeなど)しゃべっていると語り、文字に自信があるという村上さんと真逆だと感じている様子でした。

はんにゃ金田さんなどを含めて、三者三様の個性について一通り語った後に再び「俳句」の話題に繋がっていくパートに戻ってきます。

5.村上:俳句や短歌なら「水たまりとかチョコレートの包み紙を主役」にさせてあげられる

画像2

「ムラケンの思うカリスマ性って何か」というあっちゃんの質問から派生をして、村上さんは、俳句や短歌なら、

(10分35秒)
水たまりとかチョコレートの包み紙を主役にさせてあげられるな。

と感じたと語り、あっちゃんの関心を呼びました。

画像1

(多少ギャグみたいな風に言ったけど、)思っている自体は本物で、だからこそパワーがある。と、あっちゃんはその感性を褒めていました。

中田「もはや松尾芭蕉の境地だもんね。」  →
村上「ちょっと芭蕉(バショ)ってるかもしんない。」 とか、

村上「ついつい細道見つけたら、奥へ奥へって感じで。」 →
中田「あれってそういう習性の病理を描いた本じゃないからww」

などと軽快な小ボケを挟みつつも、俳句への境地に足を踏み入れている村上さんと、そんな同期を温かく見守るあっちゃんの同期トークが続きます。

6.恋の俳句『君の足這う蟻のこと教えずに』

複数回1対1でデートに誘ってから、お付き合いをしたいと打ち明けても、その相手はキャッチャーミットを構えているのではなく、佐世保バーガーを食べているだけだった、というたとえ話もありましたが(文字にして書くと謎過ぎるなww)

プライベートでの恋愛は、なかなか実を結ばない村上さんですが、恋の俳句については、前回もご紹介した著書『俳句修行』や、「プレバト!!」でも、名句が幾つも紹介されています。この動画の中では、本から1句紹介して、

『君の足這う蟻のこと教えずに』/村上健志

という自作の句を選んで披露していました。(20分過ぎ)

画像3

(20分20秒)
あっちゃんは目を瞑ってやや緊張した表情で聞いていましたが、聞き終えた瞬間に、目を見開いて味わい、すぐさまもう一度、俳句を復唱して、味わい直していました。(俳句は詩歌ですから、覚えやすいのも大事!)

7.解釈の一致と不一致

『君の足這う蟻のこと教えずに』という句について、作者の村上さんは、

【村上さんの解釈】
・「君」という【まだ付き合っていない】異性の人が、
・【起きていて】一緒に話している。
・蟻のことを教えると、会話が止まってしまう。それは嫌なので、
 蟻のことは教えずに、君と会話する時間に集中している。

といった自句自解を、(あっちゃんに迫られて)していました。それに対してあっちゃんは、

【あっちゃんの解釈】
・「君」は、【もう既に付き合っている】異性の人で、
・その人は足をむき出しにしたまま【寝ていて】、
・その蟻を追い払うことも、起こして教えることもせずに、
 ただボンヤリと眺めている。

「君」が【起きているか寝ているか】や【教えない理由】については、解釈に《不一致》の面もあったものの、
「君」が好きな異性であって、白い足に黒い蟻というコントラストを通じて「男子の心情」を詠んでいるという観点では《一致》していました。

こういうことは、この句に限らず、俳句という十七音の短い文学においては頻繁にあることです。(句の解釈がブレる表現が良いかどうかの議論は今回置いておきますが。)

8.俳句は文字面だけが勝負

あっちゃんは、村上さんの俳句について鑑賞し合った後で一言、

(24分)
全然違うこと想像してたのに、同じ句で良いなって2人が思えたこと自体が凄いし、そこに『村上を全く感じなかった』。俺のもの(思い出のように)なっていた。

と語って、あっちゃんは『俳句は俺には読めない』と繰り返していました。

画像4

俳句の歳時記を読むと、その中には「季語」だけでなく、その季語を使った古今東西の名句も紹介されています。その句を始めとする名句というのは、『季語を疑似体験/追体験』できる作品が多いと思います。

十七音の制約の中で、俳句に描かれている文字面を脳内再生するとともに、その作品に描かれていない「文字外」の部分を個々人が思い思いに「補う」ことで、俳句の鑑賞にも違いが出て、それでいて共通する部分がしっかりとあって共有できるのです。

このことを、たった1句だけで共有できたという点で、村上さんの選んだ「例句」もチョイスが抜群に良かったですし、2人の鑑賞も良かったのだと思います。きっと中田敦彦のYouTube大学の視聴者さんも、かなりしっかりと追体験できたのではないでしょうか!

9.(参考)村上名人が「プレバト!!」で披露した恋の句

ここからは、おまけ(?)として、過去、村上名人が「プレバト!!」で披露した恋の名句を簡単にご紹介します。
特に「中田敦彦のYouTube大学」で俳句に興味を持った方に向けています。

プロキオン氏の『プレバト!!で芸能人が詠んだ俳句を徹底紹介するブログ』さんのリンクを貼らせて頂きます。(↓)
(1)コスモスや女子を名字でよぶ男子

初登場にして「75点」という高得点で鮮烈デビューを飾った作品。秋の季語である「コスモス」を置いた上で、「女子を名字でよぶ男子」という季語と関係のないフレーズを『取り合わせ』た手堅い1句です。

画像5

ここを「コスモス」でない季語にした時に、句のイメージが変わることとかを皆さんにも感じ取って頂ければと思います。(「紫陽花や」とか「たんぽぽや」だと微妙に変わってきそうです、色々考えみるのも面白いかも。)

(2)テーブルに君の丸みのマスクかな

画像6

ここ5年間での最高得点となる「78点」を記録し、初登場から僅か2回で、特待生昇格を決めた実質的な「代表句」。

この句の季語は「マスク」で、昨今の情勢となる前の平成の作品ですので、流行性感冒などを防ぐために冬場につけていた頃のマスクのイメージです。

先ほどの「君の足這う蟻」の句や(1)の句とも同様に、「微妙な距離感の女子への恋心を抱く男子」を描かせたらピカイチです。『マスクの丸み』に思いを託すという姿勢が、まさに俳人だと思いました。

(3)二枚目はベランダで読む手紙かな

画像7

読んでいるのが何歳ぐらいの人間なのかで句の趣きが変わってくる作品かと思います。しかし、「二枚目【は】」とすることで、一枚目はベランダ以外の所(例えばリビングなど)で読んでいて、二枚目は場所を変えて読んでることが文字から伝わってきます。

もちろん、もっとシリアスな内容で、恋愛とは無縁……という読みもあろうかと思いますが、大人になっての恋愛の句だと思って読むと、作品の純度が増す感じがして良いのではないかなと思いました。

【おわりに】

ここまで俳句を5年近く追求してきた村上健志名人と、俳句については初心者な中田敦彦さん(あっちゃん)の同期対談を振り返ってきました。今回の動画によって、「俳句に興味を持った」方も、YouTube大学の視聴者層の中には結構いらっしゃったんじゃないかなと感じました。

次回は、あっちゃんの提案によってスタートした「俳句実況」についても、お話ししていこうと思います。それではまた次の記事でお会いしましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?