【視聴録】村上健志の俳句実況(月百句Vol.4)《自作句あり》
【はじめに】
この記事では、2021年8月20日に「フルーツポンチ村上の俳句の部屋」で、行われた俳句実況「月百句」の第4回放送を視聴した記録を、私の添削句や自作句を交えてご紹介していきます。
0.オープニング
今回は、初めて「平日昼」という時間帯だったため、(流石に私も仕事中)リアルタイム参加できず、アーカイブ視聴となりました。終わってみれば、2時間超という長尺での配信となっていました。
前回が8月4日で約2週間ぶりとなった今回。お盆シーズンだから帰省? かとも思いましたが、やはりタレントさんということもあって、「ロケ」が立て込んでいたり、YouTube以外の俳句の仕事があったりしたんだそうで。
残り89句と、まだまだ1割を終わったという“先は長い”月百句の修行です。今回は、時間無制限で「5句」を目指す方針でスタートしました。
オリンピックも終わり、季節も立秋を過ぎて、いよいよ秋。さらには、前日が「8月19日(俳句の日)」という絶好の俳句日和の昼間にスタートです。
1.席題:雑誌
1つ目の席題は、村上さんが得意そうな『雑誌』と決まりました。ただ一言で「雑誌」と言っても、一般誌の種類だけで数十種あるんですから、本気で考えれば「雑誌百句」だって行けそうな勢いです。
《 雑誌名 》
・『週刊少年ジャンプ』(一種の文化になっている)
・『non-no』
・『女性自身』
《 場所 》
・電車に置き忘れ
・中吊り広告
・コンビニでの立ち読み
・喫茶店
・美容院
・新幹線
《 雑誌の内容 》
・グラビア写真
・ゴシップ誌
・クロスワードパズル
・合併号・増刊号
・懸賞
・付録が凄い
《 雑誌にまつわるあれこれ 》
・資源ごみ(古紙)に出す
・新刊のにおい
など色々なアプローチが出ましたが、これを通じて出来た1句目がこちら。
【 1句目 】
『夜半の月捲れたままのゴシップ誌』 村上健志
『捲れたまま』なのが、誰かが見たのか、秋風に靡いたのかは分かりませんが、それなりに出来ていると思います。欲を言えば、『夜半の月』よりも、ちゃんと道に落ちてる場面描写をした方が? とも思いました。例えば、
【 Rx添削私案 】
『 帰路に月めくれたままのゴシップ誌 』
など、帰路+「月の表現」は何種類も浮かびますが、例えばこうすれば、『帰り道』だという情報がプラスできます。原句よりも現実味が増すのかなと。それと、月の後に「捲れた」という漢字が来ると、一行に書いた時に一瞬迷いが生じてしまう恐れがあると思ったので、「めくれた」は平仮名に。何て読むんだっけ? もなくなるかなと思いました。
いずれにしても「エロ本が河川敷に落ちている」という卑俗なベタを、作品に仕立て上げる、村上さんの技量と着眼点は流石だと思いました。
さらに、「コンビニでの雑誌の立ち読み」という、こちらも村上さんらしい若者の感性で、句作に臨みました。良いテンポ感で句が出来ていきます。
・彼女が買い物をしている間、立ち読みで時間を潰す
・立ち読みでヨレヨレになってない雑誌を選んで買う
【 2句目 】
『立ち読みで済ますマンガ誌月の夜』 村上健志
まずこの句の口誦性の高さに驚かされました。秋の月夜の豊かさにもマッチしていると思います。さらにもう1句、視聴者に示されたのが、
【 ボツ句 】
『立ち読みされ萎(しお)れし雑誌買う月夜』 村上健志
というものでした。「ヨレヨレになる」ことの表現を『萎れる』としましたが、コメント欄にもある通り、まず、「し(直接過去の助動詞「き」の連体形)」でなく、他の時制の方が内容に合っているのでは、との指摘が。
原句が「し」と古語だったため時制を揃えて、『萎(しお)れたる』とし、その結果、音数が足りず「雑誌」を「誌」と省略する添削例が示されていましたが、多少強引な気がするという判断から『月百句』不掲載となります。
ただ、コメント欄にもありましたが、内容的には口語で揃えるべきだと思うし、口語なら助動詞が結構曖昧でOKになるので、ここは素直に、
【 コメント欄添削例 】
『立ち読みされ萎れた雑誌買う月夜』
なら、掲載しても良かったのではないかと思っています。ただ、目線を変えれば、『月百句』に掲載する句の数が圧倒的に足りていないという認識なのに、自分の認めない句は掲載しないという村上さんの姿勢が素敵です。
《 Rx自作「雑誌」五句 》
ではここから、新コーナー「◯◯五句」です。村上さんもおっしゃっていたとおり、『雑誌』は、かなり句材としては優秀だと思ったので、ここで句数を稼ぎたいと思います。Rx自作句を、コメント欄のアイディアをヒントに作っていきましょう!
① 『『MEN'S NON-NO』照れつつ上り月の帰路を』 Rx
自慢じゃないですが(本当に、)『メンズノンノ』を買ったことないっす。中高生あたりからでしょうけど、『メンズノンノ』みたいなファッション誌を意識するようになる小っ恥ずかしさ表現してみました。
多分女子中高生がファッション誌を買うのと違うハードルがある気がして。
② 『中吊り広告や下弓張ふとき』 Rx
中吊り広告を廃止するゴシップ誌のニュースが飛び交う令和3年。月までが太ましく感じるようで。「下の弓張(しものゆみはり)」は、「下弦の月」の異名です。やや強引ですが、無季でも上等という思いで作りました。
③ 『月見酒きみの買う間の立ち読みは』 Rx
『月見酒』なんていうと、普通は上等なお酒(日本酒)だったりもするんですが、下五に「立ち読み」とすることで、若者や家族など親しい間柄のコンビニ的な雰囲気が出てこないかな、と。
はい、ここでもアポロ杯で大金賞を頂いた時と同じく、下五を『は』で締めてしまいました。私、完全に味をしめてますねww
④ 中秋無月『Wedge』すさびの10号車
新幹線は使っても自由席という庶民ですが、以前はグリーン車の座席すべてに雑誌『Wedge』が並んでいる様を壮観にとららえていた覚えがあります。グリーン車料金に含まれているの(?)定価500円の雑誌を持ち帰りOKだとかいう話しを聞いたような。私には一生使わない豆知識な気もしますがww
⑤『『名月つくろう』創刊号は「初月(はつづき)」です』 Rx
雑誌で思いついたのが『デアゴスティーニ』でした。こんな長くてチャレンジングな句、私史上初めてです。でも、頑張って作ってみたので、どこかで日の目を見たら良いなって思っています。でも結構ベタになってるのかな?
以上、『雑誌』五句でした。皆さんも雑誌で一句!
2.席題:会話文「 」だけ
特に、下鴨神社の夏祓に詣でることを指す「御手洗詣(みたらしもうで)」に由来して、「みたらし団子」が夏の季語だというのを今回の雑談で初めて知りました。
ただ、コンビニなどで売ってる現代の「みたらし団子」が季語かと言われると微妙なのにも同感で、「鮓(すし)」が江戸時代由来の夏の季語だからと言って、『100円 回転寿司』が夏の季語かと言われると微妙ですもんね。
そうした伝統的な季語の話から一転して、2つ目の席題は、『会話文だけ』というもの。コメントで鉤括弧(「 」)と共に寄せられていました。
短歌ではかなり多い印象の「会話文」ですが、俳句という少ない文章では、口語の俳句こそ多いものの、会話文“のみ”というのは結構なハードルです。だって、主役たる「季語」も会話の中に盛り込まねばならず、その実体が、大きく削がれてしまうからです。(まして今回『月百句』ですからね。)
村上さん10分近く悩みましたが、出来た句、個人的には傑作だと思います。
【 3句目 】
「三日月に乗れるとしたら何着ます?」 村上健志
会話文であり、そして極めてオシャレで「秋っぽさ」も感じる口語句です。ここまでの「月百句」の中でもずば抜けて良い句だという風に思いました。
『乗れる』という口語で前半に勢いを付け、着地が『何着ます?』という、上品な女性言葉を使っている部分も新鮮に感じました。いやぁ、名作です!
村上さんが続ける様に、危ないかも知れないから作業着的なものを想像する人も居るでしょうし、『ファンタジーをリアルに考える』タイプの投げかけは、俳句で五感を使った妄想を広げてくれますね。
《 Rx自作句:人間以外との会話文で1句 》
今回の席題「会話文だけ」で私も1句。こちらもチャレンジしてみました。だって、「人間相手じゃない」んですもんww
⑥「この月に合う曲掛けて?」「アリマセン。」 Rx
こういった作品を作ることで、『令和の時代にスマートスピーカーが日常に普及していく』ように、俳句の世界でも違和感少なくなっていけば良いな、と感じている2020年代初頭です。
オチみたいな感じで、滑稽味を出せたのが、ある種「月の句」としては良い引き出しを出せたかなと思います。これも席題あればこそですね。
3.席題:「旅」
松尾芭蕉が『荒海や佐渡によこたふ天の河』という句を詠んだのは、旧暦の七夕も近い旧暦7月4日(新暦でいう8月18日)だったそうです。そこから数日というタイミングの8月下旬、夏休みも、帰省や旅をしづらい現代日本において、3つ目の席題は「旅」となりました。
村上さんボソッと『旅で月みれたら良いもんな』と仰ってましたが、同意。
さらに、ドラマとかでも夜空を映す時は「月映ってて欲しい」と仰っていましたが、これも同意です。確かに、月のパワーって大きいですね。
旅と宿と月を、こういった道で村上さんは描きました。それがこちらです。
【 4句目 】
『初月や宿へはY字路を右へ』 村上健志
or
『初月や宿へはY字路を左』
宿『へは』という助詞2連続も臨場感を演出しています。村上さんは「右」か「左」かで(句の着地を)迷っていました。ノートに書く前までには決めるつもりなんだそうです。文法的な弱点はあるものの、個人的には「右へ」の方がスキですね。
そして、三叉路やT字路ではなく、「Y字路」とすることで、一目で二股に分かれた道の先が見える世界の広がりを感じ取れます。これもセンス光った作品だったと思います。
《 Rx自作句:「旅」三句 》
私も句を作ろうと思います。「旅」と言っても広いですからね、本当にww
⑦『地図アプリ片手の助手席や十六夜』 Rx
『月百句』なはずなのに、伝統的な句材が全く頭に浮かばない程に現代社会に染まっているのかも知れないと思いつつ、旅で私が欠かせなくなったのが「地図アプリ」です。本当に怖いものですね。街中の地図看板を頼りに迷走していた頃が遥か昔のようです。
⑧『広漠を客船とゆく良夜かな』 Rx
「船旅」というコメントもあったので、確かになぁって。現代人は「船旅」が身近でなくなりつつある気がしたので、こういった句も。ゆったりとした空気感を出すのがかなり難しかったです。
そして、こんな「旅」も、『月百句』ということで作ってみました。
⑨『月旅行前夜 遺書なんて書かない』 Rx
昔なら飛行機旅行の危険性も高かったですが、今世紀の後半とかには月旅行が現実味を帯びてくるかも知れません。さらに、今は事故率も高いですが、宇宙船も安全に運行するようになったら、『遺書かくなんてバカバカしい』と言われるような時代が来るかも知れませんね。なんて。
4.兼題:猫
最後の席題は「犬や猫」となりました。村上さんが圧倒的「猫派」だということで、猫で句を作ることに。
【 5句目 】
『夕月の門柱の猫無音鳴き』 村上健志
『無音鳴き』という言葉は、猫好きの間では結構知られた言葉なんだそう。なるほど、人間の可聴域外っていうのが関係してくるのですねー
さらに「門柱」という言葉も意味がわかってくると、句として、情景が浮かんできますねー、面白い、猫好きの方らしい作品だと思いましたー。
それを受けて私の自作句10句目です!
⑩『猫語る君つぶらなる盆の月』 Rx
そんな『無音鳴き』みたいな知らない言葉をテンション高く語る姿をみて、こんな句を作ってみました。「盆の月」という季語に至るまでに色んなミスリードを盛り込もうとしただけの句です。色んな挑戦をしようと。
【おわりに】
更に、翌21日午後9時からは、2日連続の『月百句』俳句実況となります。皆さんも次回の記事をお楽しみに~
そして、今回作った10句がこちらです。
①『MEN'S NON-NO』照れつつ上り月の帰路を
②『中吊り広告や下弓張ふとき』
③『月見酒きみの買う間の立ち読みは』
④『中秋無月『Wedge』すさびの10号車』
⑤『『名月つくろう』創刊号は「初月(はつづき)」です』
⑥「この月に合う曲掛けて?」「アリマセン。」
⑦『地図アプリ片手の助手席や十六夜』
⑧『広漠を客船とゆく良夜かな』
⑨『月旅行前夜 遺書なんて書かない』
⑩『猫語る君つぶらなる盆の月』
引き続き、『月百句』完成を目指して修行していきますー
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