見出し画像

【参加録】村上健志の俳句実況(月百句Vol.20)《自作句あり》

【はじめに】
この記事では、2021年10月23日に「フルーツポンチ村上の俳句の部屋」で、行われた俳句実況「月百句」の第20回放送に参加した記録を、私の添削句や自作句を交えてご紹介していきます。

0.オープニング

直近2回が「カクカク」で配信を途中で打ち切るアクシデントに見舞われた『月百句』の俳句実況。

前回からの1週間で、何と『パソコン』を買い替えたんだそう!

確かに動画を見てみると、画質も良くなっている気がします。そして何より前回あったような「コマ送り」になる感じは一切見受けられませんでした。
「カク付き」というストレスから解放されるだけでも大きく違うでしょう。

ちなみに、新パソコンを買った直後に、Appleから「MacBook Pro」の新型モデルの発表があり、若干落ち込み気味の村上さんでしたが、生配信のためであれば、今のモデルでも十分そうですよ!

1.席題「パソコン」

そんな流れもあって、1つ目の席題は「パソコン」に決定しました。1980年生まれで、大学で必要となり、初めてパソコンを手にしたという村上さん。

『月』を含んでいないため、月百句には数えられませんでしたが、サクッと口にしたこんな句も、村上さんらしさが溢れていました。

【 非「月」の1句目 】
『パソコンは不具合以来閉じたまま』 村上健志

少なくとも前回を思えば、ふと口をついて俳句が出来るぐらいな方が、調子は良さそうです。早速、10分足らずで1句目が出来上がりました。それが、

【 1句目 】
『タイプ音一気にさかり窓の月』 村上健志

キーボードのタイプ音が案外好きだという村上さん。『一気に盛り』という描写で、その感じを表現していました。

そういえば、先日の「プレバト!!」でも『エンターキー中指で押し涼新た』という句を詠んでいらっしゃいましたね。

画像1

私を始め、コメント欄から助詞についてアドバイスがあり、それが採用されました。下五の「の」を「に」に変えるというものです。

【 1句目(Rx添削・採用) 】
『タイプ音一気にさかり窓に月』 村上健志

「窓の月」でなく「窓に月」とすることで、『窓に月【がある】』と発見をする様な、「気づき」の思いを助詞1つに託せると思いました。「窓の月」だと、既に「窓」にずーっとある様な感じになるかなと思いましたが、複数の方が同意見だったので、これは良い意見が出せたかなと思います。

《 Rx自作句① 》

私も「パソコン」で俳句を何句か作ってみようと思います。コメント欄から寄せられたネタが案外面白く、懐かしかったですねー

①-1『かな入力らしき誤字あり豆名月』 Rx

他人の文章をチェックすると、誤字にもパターンがあって、「かな入力」の人っぽい/ありがちな誤字ってありますよね。濁点が無いとか。打つ癖を介して、チェックポイントを人によって変えるってのも一つのテクだったり。

①-2『心地よい室温パソコン部から月』 Rx

1980年生まれの村上さんでも、「パソコン室(情報処理室)」が学校にあったと言います。今やプログラミング教育が必修化されるご時世ですが、パソコン室という文化はいつまで続くのでしょうか。「タブレット」ならば個別に部屋を設ける必要もないでしょうからねぇ。

2.席題「オノマトペ」

ここ最近で一番良い感じでスタートしましたが、やはり今回も敢えて難しいお題を選んで自滅してしまいました。「オノマトペ」が2つ目の席題です。

そもそも『オノマトペ』というのは、描きたい光景などを、文字の音で表現するから効果的で作句意欲が広がるのであって、描きたい光景もない中で、漠然と『オノマトペ』という縛りが掛けられては、難くて溜まりませんww

さらに悪い流れが続いてしまって、コメント欄からは「オノマトペ」の音が寄せられますが、それを使っては『自分の俳句にならない』として、むしろ『何をオノマトペで表現して欲しいか』を募集する方向に展開します。

画像2

この判断自体は良かったのですが、俳句好きからコメントが来る前に「月」そのものに関する答え(月の光の音、月が膨らんでいく時の音、月が上る時の音などといった具合)が寄せられてしまいます。

その後にはちゃんと「歩く擬音」とか、「川の流れの音」とか作りやすそうなオノマトペ案が来ていたのですが、村上さんの見切りのタイミングが早かったこともあり、自ら最難関ルートである『月の光や月のオノマトペ』を選ばざるを得ない展開となってしまいました。

私はこの段階で『あ、これは句が出来ないかも知れない。少なくとも、20分以上は拘束されて、折角1句目の良い流れがリセットされてしまう。もしくは今日これで終わるかも知れない』という強い危機感を覚えると共に、「月百句」全体としても、10月中に完成できなくなるかも……と思いました。

村上さんの性格や、俳句における難しさが良く分かっていないコメント欄をしっかりと制するのも俳句に多少詳しい人間の役目ではあるのですが、これを私の力では止めることは出来ませんでした。

画像3

画像4

などとコメントするだけで精一杯でした。結局、村上さんは『月百句』終盤で遅れを取り戻しておきたい配信で20分近くの沼にハマってしまい、『何の成果も得られませんでした!』状態になってしまったのです。

それでも何とか踏ん張って、腕を伸ばして無言になり、何かを下ろしている感じになりながら出来上がった句がこちら。

【 2句目(採用ならず) 】
『むううんと君の眉毛へ月明かり』 村上健志

出来上がったオノマトペが「むううん」でした。そしてこの句を見せた所で衝撃の事実が発覚。「むううん」は『MOON』と掛けた洒落に違いない! とコメント欄の皆が思っていたそうですが、村上さんは天然でそういうつもりもなく詠んでいたんだそう。

画像5

この気付きがダメ押しとなり、正式に「数には含めない」幻の作品、いわば「ボツ句」となってしまい、『オノマトペ』はギブアップとなりました。
でも、二十数分を費やした席題をギブアップできる勇気は流石の一言です。

ちなみに、コメント欄にもありましたが、結構前の「プレバト!!」の中で、「オノマトペれてる/オノマトペれてない」論争があったかと思いますが、今回の配信で新たに『ツキマトペ』という言葉が生まれたことだけご報告しておきたいと思いますww

《 Rx自作句② 》

さて、2つ目のテーマが決まった時に、私が軽く触れたのですが、

千原ジュニアさんとのコラボ動画で、この生配信のことも軽く触れられていました。千原ジュニアさんは、「参加者から即興でお題を募集」して俳句を作ることを『普通の人が3週間掛かることを10秒で!』と驚いていらっしゃいました。実際には10分ぐらい掛かるのですが、それでも画期的でしょう。

ひとまず、そこの誤解は動画上は解かずに進行していましたので、それを受けて私も即吟10秒で1句作りましたww それがこちら。

②-0『10秒で即吟1句 良夜かな』 Rx

これは「オノマトペ」とは関係のない自作句ですww ご容赦下さい。でも千原ジュニアさんとのコラボ動画も面白かったので、余裕があれば振り返りの記事も書かせてもらいたいと思いますね。

②-1『ゴロコロと沈みゆく街夕月夜』 Rx

そしてもう1句作ったこちらは、即吟10秒(は言いすぎだけど)で作った句です。良く考えずに「オノマトペ」にそれっぽい言葉を付けて作品風に仕上げたという技です。

詠み手に委ねることを悪用して、詠み手が「勝手に『深読み』してくれる」ことを期待してのものですww オノマトペは感覚によるものだから、詳しい説明を求められても逃げられますしねwww

3.席題「郵便」

仕切り直しで2句目を目指す村上さん。今度は作りやすそうな広い「郵便」というお題です。ただ、通信技術も発達し、様々な媒体がある中で、敢えての「郵便」を選ぶ瞬間というのは、日常の中では特別かも知れませんねー

「郵便」という席題で皆さんからも沢山のアイディアが寄せられましたが、どことなく『平成』の時代を思い返す様なコメントが多く感じられました。

例えば、「不在票」とか「速達・(簡易)書留」、「郵便局員」、「ポスト」などのアイディアは沢山寄せられましたが、村上さんはそういったものの中から、「切手」に着目し、こんな奥行きのある秋の作品を作りました。

【 2句目 】
『月影や切手を舐めるため外へ』 村上健志

なるほど。『切手を舐める』という動作に対して、多少の「気恥ずかしさ」があるのは、多くの方が共感できるのではないでしょうか。ひょっとすると「月影」なので、郵便局とは限らず、コンビニなどかも知れませんね。

画像6

郵便局の窓口ならば、起票台に「脱脂綿」とかあって舐めずに済みそうですから、私は「コンビニ」で切手を買って、店内で舐めるのは憚られるから外へ出て、コンビニ前のポストに投函するに当たって、店外の「月」にふと気づいたのかなと詠みました。

画像7

ちなみに、コメント欄では、私を含め有経験者からは、

『切手を舐め【に】』

としたら「ため」とかいう理屈の部分を和らげられるのではないか? との声もありました。ただまあ、村上さんの句柄も含めて考えた時に、

『月影や切手を舐めるため外へ』

画像8

という句の散文っぽさも含めて、良いバランスで17音に収まっているな、と感じましたので、これはこれでOKだと思いました。いずれにしても村上さんらしい着眼点で素晴らしい日常の作品でしたねー

《 Rx自作句③ 》

さて、私も「郵便」という席題で何句か考えてみましょう。改めて考えてみると、郵政民営化して幾つかの企業が誕生しましたが、郵便事業の幅広さは奥深いものがありますよねー

最初は力を抜いたこんな句から。コメント欄を参考にしました。

③-1『三五月 記念切手のたまりゆく』 Rx

画像9

記念切手を買っても、1枚も使わずに取っておきたい派、結局使わないことを知っているからそもそも買うのは慎重派な私の心情を複合動詞に乗せて。ちなみに、「三五月」は「十五夜」のことだそうです。コメント欄で触れられていたので、ここで使ってみました。切手と数字は相性良さそうですし。

③-2『プーさん切手で願書を送る良夜かな』 Rx

もう1句即吟できたのが、「切手」の句からの『プーさん切手』です。ギャップを楽しんでもらおうと、「願書」に着地しました。ただ恐らく、お固い文書にゆるい切手を貼るというのは「ベタ」なのだと思いますね-

画像10

あと、私は馴染みが無いので作句しませんでしたが、「郵便船」なんてのも、風情があって良いかなって思いました。これ自体凡な発想ですか?ww

4.席題「ネットライブ/オンラインライブ」

香港からジミーさんがスパチャで送ってくれた「ネットライブ/オンラインライブ」が、今日4つ目の席題となります。

画像11

私も幾つかの「オンラインライブ」に参加したことがありますが、やっぱりオフラインでのライブとは違う楽しみ方が出来、個人的には相性が良かったです。個人的には「併用」が定着することを期待しているのですがねぇー

『ボレロ』の句だったり、幾つか音楽に関する句も『月百句』では披露されていますが、難しいのは「月」をどう入れ込むかですよね。今回、村上さんはこういった形でオンラインライブと月を詠みました。

【 3句目 】
『観客はなくアップされている月』 村上健志

「サッ」と作ったと仰っていますが、繊細に作れている句だと思いました。今こうして見ると、例えば、『観客はく』と敢えて漢字表記することで、「無観客」を字面でも意識させつつ、「はなく」と誤読されるのを防ぐ意味でも効果を発揮するかなと思いました。

《 Rx自作句④ 》

音楽のオンラインライブにおいて、「無観客配信」に切り替えた場合は別ですが、ビッグなアーティストでも、ハコ(ライブ会場)の大きさを気にせずに開催できるメリットが出てきていると聞いた覚えがあります。

④『我がライブハウスハコにこんな大御所ビッグが月渡る』 Rx

そこでこんな句を作ってみました。私はライブハウス経営なんて経験ないので完全な妄想ですが、ここまで大胆にルビを使っても面白いかなって。

画像12

5.席題「香り」

ここまでの1時間弱の生配信を振り返って、まだ「3句じゃダメだよ」と、気合を入れ直す村上さん。今日5つ目の席題を選ぶ中で『香る俳句』というものが目に止まります。

しかし、『オノマトペ』で苦しんだことを思い出し、『今日は難しいの止めといた方が良いか?』と躊躇するも、結局5つ目のテーマに「香り」が採用され、作句に取り掛かります。

でも冷静に考えてみると、「嗅覚」を刺激するものを感じ取れば、それ即ち全てが「香り」であり、少しでも「月と香り」の要素を取り入れればお題をクリアできるという点では、案外ハードルが低いのかも知れません。

村上さん、筆が載っていますから、こんな“らしい”句が完成します。

【 4句目 】
『落月や袋の上からバブを嗅ぐ』 村上健志

画像13

「バブ」はご存知、花王から出ている「入浴剤」シリーズです。私、最初、「箱型のヤツ」の箱を開けて、ビニールの封を開けていない状況を詠んだのかと思ったのですが、「個包装のヤツ」をってことですね、理解しました。

なんか分かりますよね。封を開けていないんだから、無臭なはずなものでもとりあえず嗅いでしまいたくなる感覚。それに「バブ」を持ってきた辺りも非常に村上さんらしい良いチョイスだったと思います。

【 村上さん推敲案 】
『パッケージ越しにバブ嗅ぐ月の夜』 村上健志

さらに言葉が洗練されて、上の様になりました。どちらで収録されるか分かりませんが、千原ジュニアさんとのコラボ動画でもありました、「あるあるネタ」としても使えそうなぐらい上質な日常の切り取りに成功しています。

《 Rx自作句⑤ 》

先ほどの「郵便」の残り香(テーマに掛けてみた)があるのか、思いついたのが「郵便」に関する俳句でした。

コメント欄にも書きましたが、『○○○○や月の香りの○○○○○』みたいな埋め字で、1句出来るんじゃないかと思い挑戦してみました。それがこれ。

⑤『バイク見送り月の香のする封書かな』 Rx

画像14

切れ字の「かな」を使って着地し、「動→静」を意図的に作ってみましたが如何でしたでしょうか。「月の香り」というのは詩歌の世界ではベタなのでしょうかね。

6.席題「スプーン」

最後の席題も、非常に村上さんが得意としてきそうな、「スプーン」です。こういう小物って、俳句というより川柳や短歌で重宝されるイメージでしたが、村上さんは二刀流なればこそ、これらのアイテムを俳句の中の名脇役にするテクニックをお持ちですよねー

細かく考え出すと色んな「スプーン」が巷には溢れていますが、村上さんは時間も気にしつつ、最後まで“らしさ”を出した作品を提示します。それが、

【 5句目 】
『スプーンを上手に使うと月夜』 村上健志

村上さんはという日本語が好きで良く使われる印象ですが、個人的にはあまりにも古風過ぎて、村上さんの句柄とは合わないかなと正直感じています。だって「記紀」の時代の言葉と、現代の情景は取り合わないと感じるんですよねー

画像15

なんて話しはさておき、「スプーンを上手に使う異性」に惹かれるという、ある種のフェチズムでもありそうな洞察力、本当に素晴らしいです。他人に真似できる感性ではないとつくづく思います!

そして、最後の推敲として、「汝」は「君」と似て恋愛対象として限定する印象が強い言葉であるため、「ここは敢えてそういった限定を掛けない方が面白いのでは?」と考え、さらなる抽象名詞に置き換える手を使ってきました。それがこちらです。

【 5句目(推敲後) 】
『スプーンを上手に使う【人
と月夜』 村上健志

「人と月夜【を過ごす】」という省略の形と見れば、下五の「と」も許容できるかなと感じました。そして何より、「スプーンを上手に使う人」という描写が、『君』などと明言していないことで却って奥ゆかしさが出ていると思いました。最後の最後に、特に月夜にふさわしい句が出来ましたねー

画像16

この瑞々しい感性を活かしていけば、『サラダ記念日』など以来、若い世代に絶大な支持を得る詩歌の作品が出来るのではないかと感じるこの頃です。

《 Rx自作句⑥ 》

さて、私も色々と考えていました。最初に思いついたのは……捻くれていますねww ゴルフの「スプーン」でした。料理に使うスプーンとは限定されていませんでしたからね!

画像17

いや、ゴルフを避けてきた私が「ゴルフ・スプーン」で1句なんて出来る訳がない! 次だ!

そして思いついたのが、コメント欄と同じタイミングで『計量スプーン』。しかし、計量スプーンも意識的に使ったのは家庭科の授業以来ではないか? と思い、断念。(いや調味料を取る時には使ってんだけどさww)

たどり着いたのが、何故か『スプーン曲げ』でございましてww こんな句が出来上がりました。村上さんと似て「異性」との感じな作品です。

⑥『満月や君の特技はスプーン曲げ』 Rx

曲げるのは、必ずフォークやナイフではなくスプーンですよね。非常に俳句の心とは遠い所の着眼点かも知れませんが、これも「スプーン」という席題が無ければ私から一生できなかった句だと思います。

画像18

ちなみにこの句には裏話があって、声優・麻倉ももさんがゲスト出演した番組の中で、一応「特技欄」に記載している『スプーン曲げ』を久々に披露し成功させたというエピソードが元になっています。

男性でも女性でも良いですが、思いを寄せ合う中、ちょっとした特技である「スプーン曲げ」を披露して談笑する姿が微笑ましいなと思い作品にしてみました。如何でしたでしょうか。

【おわりに】

今回は、ひとまず、「カクカク」が解消されただけでも大きな収穫でした。一つ「オノマトペ」という席題がギブアップとなりましたが、その他で巻き返して、実に5句も村上さんは作ることに成功しています。

私も振り返ってみたら、9句も作っていまして、頑張れば『月2百句』も狙えるのでは? と思いつつも、まったりと100句を厳選する方針で考えています。

①-1『かな入力らしき誤字あり豆名月』
①-2『心地よい室温パソコン部から月』

②-0『10秒で即吟1句 良夜かな』
②-1『ゴロコロと沈みゆく街夕月夜』

③-1『三五月 記念切手のたまりゆく』
③-2『プーさん切手で願書を送る良夜かな』

④『我がライブハウスハコにこんな大御所ビッグが月渡る』
⑤『バイク見送り月の香のする封書かな』
⑥『満月や君の特技はスプーン曲げ』

後半に行くほど(?)自分のやりたいことが出来てるかなと思うので、残り数回であろう「月百句」の俳句実況にも期待していきたいと思います!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?