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「超巨大地震」についてまとめてみた

【はじめに】
この記事では、自分の学習用に「超巨大地震」のウィキペディアの記事を、纏めていきたいと思います。

1.「超巨大地震」って?

「超巨大地震」が何でしょう。Wikipedia 冒頭の一文を引用してみます。

超巨大地震(ちょうきょだいじしん)は、巨大地震の中でも特にモーメント・マグニチュード尺度でMw9程度以上あるいはMw9クラスのものに対し使用される名称である。しかし、地震学的に厳密に定義付けられているわけでもなければ学術用語でもない。

ポイントになるのは「地震学的に厳密に定義付けられているわけでもなければ学術用語でもない。」という点でしょうか。少し定義を平易に変えると、

超巨大地震とは、M8以上の地震を指すことの多い「巨大地震」の中でも、特にMw(モーメント・マグニチュード)が「Mw9(程度)以上」のものに対して使用される呼び名のこと。

ぐらいに置き換えて良いかと思います。ただ、巨大地震をM7.9以上、超巨大地震にMw8.8の2010年チリ地震を含む考えの方もいらっしゃるので、飽く迄『最大公約数』的な定義付けとお考えいただければと思います。

2.超巨大地震の概要

ここからは、概要にある文章を抜粋していきます。

① 超巨大地震とされる地震は、確認される範囲では全てがプレート収束帯で発生する低角逆断層のプレート境界型地震であり、断層長がおよそ500km以上に達する。
また、長大な破壊域をもつ海溝型巨大地震は複数のセグメントが連動して断層破壊する連動型地震を仮定すれば説明できるとされる。
海溝沿いで海底地形の大きな変異を伴うためいずれも大津波を伴っている。

ここらへんは、2004年のスマトラ島沖地震や2011年の東北地方太平洋沖地震から想像される通りかと思います。また、その頻度については、

② 観測時代におけるデータの蓄積では発生頻度を論ずるに充分ではないが、地球上においておよそ1世紀の間に数回程度発生しているものと見られる。Mw9クラスの地震の発生頻度は1世紀の間に1 - 3個程度との見積もりもある。

100年で数回程度ですから、詳細に検討できるほどのデータ蓄積は不十分。

③ またその発生間隔は一様でなく比較的短期間の間に数年の間隔を空けて集中的に発生する傾向が見られる。
地震モーメント放出の時系列から、このような超巨大地震のクラスタリングの傾向は明らかであるとする説がある一方で、クラスタリングはランダムな変化に局在化した余震活動が加わったものにすぎず見かけのものであるとする説もある。

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20世紀においては、1952・1957・1960・1964年と12年の間に、21世紀でも2004・2010・2011年と7年の間に集中して発生し、その他の時期は発生していないことから『集中的に発生する傾向がある』と考えられてはいます。

ただデータ・クラスタリング(クラスター分析)的に、それが「偶然なのか必然なのか」は意見が分かれている段階のようです。

「マグニチュードの飽和(頭打ち)」も参照。
超巨大地震の規模になると最大振幅に基づくマグニチュードは数値が飽和して頭打ちとなり、規模が適切に表されていなかった。1977年に金森博雄が、断層活動のモーメントに基づくモーメント・マグニチュードを提唱して以来、1960年チリ地震など幾つかの地震がMw9以上と推定され規模が適切に表されるようになった。

これは、東日本大震災の時も苦い経験がありますね。
超巨大地震(Mw9.0)だった東北地方太平洋沖地震も、気象庁も経験したことのない規模だったこともあり、当初は「Mj7.9」として津波警報を発表し、1時間後に「Mj8.4」、3時間後に「Mw8.8」と修正。『飽和(頭打ち)』を解消する前に大津波が沿岸を襲い甚大な被害が出てしまいました。

⑤ 比較沈み込み学やアスペリティモデルから超巨大地震の発生する場所は若いプレートの沈み込み帯に限定されるとされてきたが、2004年スマトラ沖地震や2011年東北地方太平洋沖地震は従来の理論を覆すものとなり、特に高感度地震観測網など高密度の観測網が整備された日本付近で発生した東北地方太平洋沖地震は超巨大地震に関して新たな知見を与えるものとなった。

3.超巨大地震が発生する場所

(1)比較沈み込み学

上田誠也および金森博雄 (1979) は地球上の沈み込み帯を海洋プレートの沈み込み角の違いから「チリ型」と「マリアナ型」に分類し、連動型の巨大地震はチリ型の沈み込み帯で起こると考えた。
上田らはチリ型に属すのは南チリおよびアラスカ等であるとしたが、Heuret (2011) らによれば、沈み込み角が15°以下の低角であるのは、南チリの他、プエルトリコ、ココス、カスケード、南海トラフ、スマトラ-アンダマンおよび地中海東部の各海溝である。
「チリ型」
比較的若いプレートが低角で沈み込み、プレート間の固着が強く、超巨大地震はこのような沈み込み帯のみで起る。
「マリアナ型」
古いプレートが高角で沈み込み、プレート間の固着が弱く、プレート間の非地震性の滑りが大きく巨大地震は起こりにくいとされる。

(2)アスペリティモデル

・カテゴリ1:チリ南部
・カテゴリ2:アリューシャン
・カテゴリ3:千島列島
・カテゴリ4:マリアナ

比較沈み込み学では古いプレートでは連動型地震は起こりにくいとされ、アスペリティモデルも沈み込みがやや高角の古いプレートは固着領域が小さく連動型の超巨大地震は起こりにくいとされてきた。
しかし2004年スマトラ沖地震はこの法則には当てはまらないとされ、2011年東北地方太平洋沖地震の発生した日本海溝もアスペリティモデルではカテゴリ3の千島列島に類似すると考えられ連動型の巨大地震が起りにくいとされていた。

(3)プレート間カップリングと超巨大地震
(4)付加体形成と超巨大地震
(5)地震の発生頻度と超巨大地震

4.地震計による観測時代の超巨大地震(20世紀)

(1)1952/11/04・カムチャツカ地震

震源域の長さは約600km。ソビエト連邦(現 ロシア)観測史上最大の地震。(表面波)Ms8.2、(モーメント・マグニチュード)Mw8.8~9.0。

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カムチャツカ半島から千島列島で最大18m、北海道から本州太平洋側にも、最大3mの津波が来襲し、浸水被害がありました。

(2)1957/03/09・アリューシャン地震

震源域の長さは約700 - 900 kmに及び、津波マグニチュード(Mt)は9.0とも。モーメント・マグニチュードは、Mw8.6程度~9.1と推定。

アリューシャン・ウニマク島で22m、ハワイにも16mの津波が襲った。

(3)1960/05/22・チリ地震(バルディビア地震)

震源域の長さは800~1000km、幅は約200km、平均滑りは20m程度、最大滑りは約40m。前日にMw8.2、当日にMw7.9の前震も発生。
一般に、モーメント・マグニチュード(Mw)9.5という値が、観測史上最大の規模の「超巨大地震」として有名です。(但し、こんな記載もありました)

金森(1977)は地震データ解析および津波規模などからMw9.5と推定したが、地殻変動からこの値は過大評価であるとされ、Mw9.3、あるいはMw9.2程度が妥当ともされる。

太平洋沿岸全般に津波が来襲、日本列島にも津波が収斂し、死者行方不明者142名を数える大津波が到達しました。揺れが無くても大津波が襲うという経験は、このチリ地震津波が最大最悪のケースとなっています。

(4)1964/03/27・アラスカ地震

アメリカ合衆国の観測史上最大の地震。モーメント・マグニチュード(Mw)9.1~9.2。

津波はシャウプ湾で67.1mを観測、日本でも大船渡で90cmを観測しました。

5.グローバルな観測網整備下の超巨大地震(21世紀)

(1)2004/12/26・スマトラ沖地震

インドネシアの観測史上最大の地震。震源域はスマトラ島沖からアンダマン諸島まで約1300 km、幅は約180 kmに及ぶ。インド洋全域に津波が波及。
モーメント・マグニチュード(Mw)は、Mw9.1~9.3とされ、21世紀最大値。

インド洋全域に平均10mとも言われる大津波が来襲し、死者・行方不明者は22万人とも。津波の馴染みの薄い地域の観光客などが多く犠牲となった他、家庭用カメラなどで、多くの津波映像が撮影され、世界にテレビを通じて報道されたことも特筆すべき点かと思います。

(参考)2010/02/27・チリ地震(チリ・マウレ地震)

モーメント・マグニチュード(Mw) は8.8と、Mw9には届かないものの、超巨大地震に準じるものであり、参考情報として掲載します。

ちょうど50年前のチリ地震で甚大な被害が出た教訓から、気象庁は27年ぶりに「大津波の津波警報」(当時)を発表し、警戒を呼びかけました。
日本では「津波注意報から警報」クラスの津波は襲ったものの、上振れした予想に基づく避難行動もあり、大きな被害は出ずに済みました。

(2)2011/03/11・東北地方太平洋沖地震

震源域の長さは約500km、幅は約200kmに及び、宮城県沖の震源付近に地震モーメントの大半が開放された約50m以上に及ぶ超大すべり域が推定。日本の観測史上最大の地震。

当初は気象庁マグニチュード(Mj)7.9と発表され、それに基づく津波警報・注意報が発表。その後、Mj8.4(頭打ち)→モーメント・マグニチュード8.8、更にMw9.0と気象庁が上方修正を重ね、日本で地震観測が始まった明治以降で最大規模の地震となりました。
(※)ちなみに、USGS(アメリカ地質調査所)は現在、Mw9.1を採用。

震度は、気象庁震度階級で最大の7。津波は速報値で相馬港で7.3m以上で、最大遡上高は綾里湾で40.1mに達しました。地震の規模・津波は明治以降で最大、死者行方不明者も2万を越え、戦後最悪の地震災害となりました。

6.地質調査・歴史時代の超巨大地震

「超巨大地震」は、人類によって国際的な観測網が整備される遥か以前から繰り返されてきました。「地質調査(津波堆積物、隆起痕など)」と「歴史資料」のアプローチから、過去の地震の履歴の調査が進められています。

(1)南アメリカ大陸

観測史上最大の地震が起きた「チリ沖」は、数十年単位で(超)巨大地震が発生し、日本の歴史書にも津波来襲の記録が残されている常襲地帯です。

中でも、1575年のバルディビア地震は、1960年にMw9.5を記録した地震の「前回」に当たるものとされるほか、その後も数回に渡って、チリ沖の地震を原因とする(と推定される)津波が日本でも観測されています。

数十年に1回、M8後半の巨大地震が発生していますので、地球のほぼ真裏ではありますが、太平洋を挟んで「お向かい」に当たる日本列島では特に、遠地津波への警戒が必要となります。

(2)北アメリカ大陸

北米大陸の超巨大地震と言うと、1964年・アラスカ地震が観測されていますが、現在のアメリカ合衆国の北東部で1700年に起きた「カスケード地震」もMw8.7~9.2と推定されています。

地質学的記録によれば、カスケード沈み込み帯において、モーメントマグニチュード (Mw)9規模の巨大地震は平均約500年の間隔(1万年間に19回発生)で、多くの場合津波を伴って発生したことが示されている。
過去少なくとも13回にわたり、最短300年から最長900年、平均590年の間隔で発生した痕跡が残っている。以前の地震は1310年、810年、400年及び紀元前170年、紀元前600年に発生したと推測されている。
更に、後年の考古学的手法の調査により過去約1万年間に41回の地震が確認されていて、平均間隔は約240年。

こうしたデータのある沈み込み帯が、シアトルなどの大都市圏を含む西海岸にあり、前回から既に300年を経過している事実は、非常に恐ろしいです。

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またアラスカ沖でも、津波堆積物の分布から、1952年のアラスカ地震と同様かそれ以上と推定される地震が過去発生しています。

(3)アジア ~千島・カムチャツカ海溝~

歴史地震では、1737年の地震も、1952年に起きた「カムチャツカ地震」と同程度とする説があります。

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カムチャツカ半島から千島列島にかけて、巨大地震が数十年に一度のペースで発生していますし、そのたびに大津波が発生しています。2003年に発表された研究論文では、過去7000年に50回程度、大津波の痕跡があるとのこと。

そして、千島海溝の中でも、日本の北海道沖の地域は、ここ10年で「超巨大地震」への警戒感が高まっています。メディアでは、「500年間隔地震」や「17世紀型の地震」などとして紹介されることもある地震です。

詳細は「十勝沖地震・17世紀型の地震」をご覧いただければと思います。

(4)アジア ~日本海溝~

2011年「東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)」が引き起こした日本海溝では、869年に起きた「貞観地震」を始め、明治・昭和の三陸地震津波など大津波をもたらす巨大地震が記録され続けてきました。

“石巻から南相馬に至る仙台平野でBC390年頃、AD430年頃、貞観津波、西暦1500年頃の津波堆積物が見いだされる”とされ、俗に「千年に一度」と報道されますが、実際には「数百年に一度」のペースで襲ってきていた様です。

1500年頃の記録が、1454年の享徳地震なのか、1611年の慶長三陸地震なのか、或いはまた別の地震なのか、そして「慶長三陸地震」が北海道沖の超巨大地震のことなのか否かなどについては、歴史資料の少なさなどもあって、全容は未だ全くもって解明できていません。

(4)アジア ~南海トラフ~

そして、歴史資料が世界で最も充実しているにも関わらず、「南海トラフ」の巨大地震についても不明な点が多数あります。

東日本大震災まで、Mw8.6で日本周辺で最大とされた1707年の「宝永地震」も、超巨大地震だったとする説が出てきています。

高知県土佐市宇佐町蟹ヶ池から宝永地震を始め複数の津波堆積物が見出され、特に紀元頃の津波堆積物は宝永津波をも上回る規模であったと推定される。さらに6500年間の地層から15回の津波堆積物が見出された。

そして、宝永地震が最大規模とは限らず、今から約2,000年前の地震で、更に分厚い津波堆積物が記録されていることからも、歴史資料のみでは分からない部分が多いといえるでしょう。

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(5)アジア ~スマトラ沖~

2004年の超巨大地震の後も、大規模な余震活動が続く「スマトラ」海域は、21世紀に地質調査が進み、過去にも超巨大地震が起きていたことが分かってきています。

特に西暦900年頃の地震は、大津波による被害が「文献」にも残されているほどで、2004年の地震の1~2回前にあたる活動と見られます。

(6)その他の海域

上記が良く知られた「超巨大地震」の発生し得る海域ですが、それ以外でも「超巨大地震」が起こらないとは限りません。スマトラや日本海溝で、M9クラスの地震が起きないと考えられていたように。

ここまで環太平洋ばかり紹介してきましたが、例えば、1755年の「リスボン地震」は、ヨーロッパを襲った(超)巨大地震でありMw8.5~9.0と推定されています。

十数メートルから数十メートルの大津波や火災旋風がリスボン市街地を襲い壊滅。数万人の犠牲者を出したと伝わります。

あまり西ヨーロッパや大西洋と巨大地震が結びつかない方も多いかと思いますが、過去にはこうした地震が起きていることもありますので要警戒です。

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