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【書評】『ファシリテーション型業務改革: ストーリーで学ぶ次世代プロジェクト』(榊巻 亮/百田 牧人/岡本 晋太朗)

先日投稿した記事(「外資IT営業で役に立った本10選」)の中でご紹介した『システムを作らせる技術 エンジニアではないあなたへ』の著者が所属し
ているケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズが出した住友生命でのLief端末更改プロジェクト(”青空プロジェクト”)の始まりから本稼働まで記した本です。

著者はケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズの榊巻氏と、青空プロジェクトに参画した住友生命 百田氏・岡本氏の共著という珍しい構成となっています。(コンサルティングファームが本を出すことは多いですが、実際に携わった顧客と一緒になって、プロジェクトの本を出版するケースは稀だなと思います。)

企業は日々多くのプロジェクトを企画・実行していますが、うまくいくプロジェクトは私の個人の印象でもそう多くありません。特にITプロジェクト(基幹システム刷新や業務アプリケーション導入)は想定していた効果がでなかったり、導入したシステムがあまり使えてもらえず、稼働はしたもののその後活用が見込めず塩漬けになることもあります。本書であげられた住友生命の保険外交員(ライフデザイナー)3万人が使っている営業用タブレット(Lief端末)の更改・刷新プロジェクも、そのうちの一つとして捉えられてたと思います。

本書では、実際のプロジェクト模様の始まりから本稼働までを、プロジェクト支援を実施したケンブリッジの視点のみならず、プロジェクトに参画した住友生命側の観点も入れて、彼らの言葉も交えストーリーでプロジェクトを追っています。ITプロジェクトがどんなものか分からない人や、今までITプロジェクトに携わってきた人にもおすすめの本だと思います。

プロジェクトの流れを、
・構想立案フェーズ
・現状調査/分析フェーズ
・施策立案フェーズ
・実行計画作りと体制構築フェーズ
・基本設計フェーズ
・開発フェーズ
・テストフェーズ
・移行/教育フェーズ
・稼働フェーズ
に分けて、順をおって物語的に記されており、そのときにどんな活動をしたか、各フェーズの目的とゴールは何で、各フェーズのインプットとアウトプット、プロジェクトメンバーの心境やコンサルタント(ケンブリッジ)の知見も見ることができます。

個人的に印象に残ったのは、
・調査や分析にいきなり入る前に、プロジェクトのコンセプトを構想立案フェーズでしっかり決めて、プロジェクトメンバー内で意識統一を行う
・プロジェクトの進め方において、参加者の心理的安全性を担保し、全員参加型を目指す、また、各フェーズ、アクティビティで振り返り(サンセットミーティング)を設けるなどの工夫をする→ファシリテーション技術
・青空プロジェクトでは関係者が多く、各部門から利害関係がどうしても対立していくるので、根回しや事前の雰囲気づくりを徹底する
・システム化のコンセプトを誰もが分かりやい言葉(絵)で表現する。青空プロジェクトでは、現行Liefは「建て増し旅館」型でどんどん機能がが増えていってたが、次期Liefでは、「総合ホテル」型でお客様を起点とした機能配置/画面ルールを設ける(p259)
・稼働フェーズでは、トラブルが少なく、ユーザの声からもかなりよかった→コンセプトがユーザまでしっかり届いてる証左だと思います。
といったところが、実際のプロジェクトに参加した生の声も拾ってくれているので、臨場感をもって認識することができました。

IT営業、とくにITソリューションを販売している身としては、製品を売った後のプロジェクトがより重要で、ここでどういった活動(上記のフェーズ)が行わるのかをしっかり理解しておくのが重要なのと、新しいシステム・仕組みを入れる際は、単にツールの導入・入替えではなく、活用することによってどんなことを目指していきたいのか、ここを顧客と相互理解をしながら提案をしていかないとなと、改めて実感した次第です。



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