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2019年振り返り

2019年の振り返りを書きました。

【アート】

『ドレス・コード?―― 着る人たちのゲーム』 京都国立近代美術館

京都服飾文化研は膨大なコレクション、資料を生かした良質の展覧会を多く企画しているが、その中でも出色。ファッションを「ゲーム」として捉え、服飾資料の他に現代アート、漫画、演劇など分野横断的に見せるキュレーションがとても刺激的だった。カタログもよいでき(東京では代官山 蔦屋書店とかで買える)。
京都近美から熊本美へと巡回中。巡回先が増えるという噂も。


『Meet the Collection ―アートと人と、美術館』 横浜美術館

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現代アートのおもしろさと横浜美術館のコレクションの充実ぶりを楽しめた展覧会。淺井裕介、今津景、菅木志雄らのゲストアーティストが自分の作品と組み合わせたコレクションのセレクトがおもしろかった。


『しなやかな闘い ポーランド女性作家と映像ー1970年代から現在へ』 東京都写真美術館

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今年は「女性」をめぐる言説が注目を集めた年だった。
この展覧会は「女性」であり「東欧」であるという70年代における「周縁」に焦点を当てている。70年代の実験映像には当時のメインストリームとの影響関係も感じられ、また現代の作品も社会のリアリティにうまくつながっているものが多くとてもよかった。会場内で上映されていた出品作家でもあるナタリア・LLのドキュメンタリーは展覧会のテーマを象徴していて非常におもしろかった。


『CHARLOTTE PERRIAND: INVENTING A NEW WORLD』 The Fondation Louis Vuitton

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シャルロット・ペリアンの生涯に渡る仕事の数々を、資料、実物、同時代の美術、そしてインテリアそのものの精密な再現などを通して見られる展覧会。お金もかなりかかっているのだろう。質の高い展示空間と膨大なボリュームをオーソドックスなキュレーションでまとめ、わかりやすいながらも非常に説得力を持ったものになっていた。


弓指寛治ソロエキシビジョン『ダイナマイト・トラベラー』 シープスタジオ

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現実の出来事をリサーチしながら絵画で場面をつないでいき、あるストーリーを物語るという手法で構成された展覧会。弓指さんのストーリーテリングの力を強く感じた。シリアスな事件がテーマだが、負の感情に飲み込まれてしまうことなく登場人物たちの悲喜がまっすぐに描かれていて引き込まれた。まるで大林宣彦監督の映画を見ているようだった。


【映画】

『旅のおわり世界のはじまり』 黒沢清 監督

刺激の強い表現が多い中、じんわりと脳に染み込んでくるような映画だった。静かに変化する登場人物の感情や、シルクロードの風景を捉えたカメラワークがとても美しい。


『ブラインドスポッティング』  カルロス・ロペス・エストラーダ 監督

「オークランド育ちの大親友2人の間にある見えない壁を晒しだすことで、古いオークランド、新しいオークランド、白人労働者階級のオークランド、黒人のオークランド、スラングだらけで芸術的で活気あるオークランド、暴力的で怒れる反抗的なオークランド、これら全てを描いた映画である。
同じ環境、同じ敵、同じ態度、同じイデオロギーで育った2人が、1人は黒人で1人は白人であったため世の中の歩き方を変えなければいけなかったという話しだ。」
(公式サイトより抜粋)
ちょっと感想を言うのは難しいが、いい映画だった。


『冴えない彼女(ヒロイン)の育てかた Fine』 柴田彰久 監督

テレビシリーズの劇場版。王道のオタク的ファンタジーを装いながら、キャラクターやストーリーの類型を次々とメタフィクションに落とし込んでいくすごい作品。さらにこの劇場版では、終盤に見事な主体の逆転が仕掛けられている。
馴染みのない人には辛いかもしれないが、ぜひ見てほしいシリーズ。


【BOOK】

Rondade「displacement」
いつも斬新なアイデアでアートブックを制作しているレーベルRondadeが立ち上げた古本の販売企画。古書店のすみで眠っているような古本をピックアップし、時には本体に手を加えながら価値を再編集していく試み。「作ることも選ぶことも私たちは差がないと考えている」ということだが、たしかに彼らが作るアートブックと同じ質感を持った企画だった。今、本の一番おもしろい風景を見せてくれるのはこのRondadeという活動体だろう。
「displacement」は他の様々なスペースでも継続して展開していくとのこと。

「来るべきブックカルチャーのために」 vol.1vol.2
本の未来と可能性について色々考える機会になった。今後も向き合っていきたい。


【アニメ】

『BEASTARS』

原作が2018年に漫画大賞を受賞している作品なのでもちろんおもしろい。
動物ごとの性質や欲望が緻密に設定の中に盛り込まれているので、人間同士では表現できないような複雑な関係性が描き出されていてすばらしい。

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