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【キネマ宅配便!!】2020年9月の推し映画 #1 『政治と選挙』

毎年の鑑賞映画の登録推移を出すと、6月、9月は鑑賞映画が多い傾向にあるんですよね。今はコロナ禍なので、状況は少し違いますが、6月は春休み公開の映画が終わったあとの中休み、9月は同様に夏休み公開の映画が終わって次のターンまでの中休みで、集客力は高くはないけど、小粒で良質な作品が多く公開される傾向にあるかなと思います。

そんな9月の推し映画は、テーマがいくつかに分かれるので、複数を何回かに分けてお送りします。#1のテーマはずばり「政治」です!

「れいわ一揆」を観ました。
(評価:★★★★★(最高が★5つ、最低が★))

あらすじ: 東京大学東洋文化研究所教授・安冨歩は2013年以来、もっとも自然に生きる事ができるスタイルとして、女性服を着る“女性装”を実践していた。令和元年、彼女は山本太郎代表率いる『れいわ新選組』から参議院選挙に出馬する。「子どもを守り未来を守る」とのスローガンを掲げ、新橋SL広場、東京駅赤レンガ駅舎前、阿佐ヶ谷駅バスターミナルほか都内各地から、旭川、沖縄、京都まで、相棒の馬“ユーゴン”とともに全国遊説の旅に出る姿と、「れいわ新選組」の快進を綴ったドキュメンタリー。

昨年(2019年)夏に行われた参議院総選挙。山本太郎率いた政治集団「れいわ新選組」が起こしたムーブメントは一種の騒動というか、革命っぽい色も帯び、重度脳性麻痺者である国会議員を生み出したということは閉鎖的な日本政治に風穴を開けたともいえるでしょう。

どうしても政治を語ってしまうと、感想に色が出てしまうので極力政策の中身について語ることは避けますが、「れいわ新選組」が起こした風は今までの日本にはなかったものであり、「NHKから国民を守る党」と同じく、こうした極端な色を付けた政党があっても僕はいいと思うというか、むしろこれからの社会はあって然るべきじゃないかと思うのです。

日本は民主国家であり、民主主義の基本は対話です。日本はコロナ禍直後でもそうですが、とかく”空気を読め”という社会構造が至るところに錆びついていて、それが国としての閉塞性を生んでいると今は思います。これが右肩上がりの高度経済成長のときなら、自分の意見は封殺し、家庭のため、会社のため、しいては社会のために黙々と生きることが美徳とされていました。無論、今でも災害が起こったときの助け合いの輪などは、日本人ならではというところでこれはなくしてはいけないと思います。

でも、こうした何かを信じていれば、一人一人が個人を犠牲にして努力すれば、勝手に反映する社会への幻想はバブル崩壊、グローバル化、少子高齢化で完全に消失したといっても過言ではないのです。こうした低成長社会(もとい成熟社会)ではどう生きていくかの個人の選択・主張が大きくなってくること然り。声の小さな人、上げられない人に寄り添うのが今後の政治家像だと思うのです。

その意味で、ワンイッシュー(1つの意見のみ)で集まった個性的な「れいわ新選組」の方々。反原発、反セブンイレブン、環境問題に、ド庶民、、主張はそれぞれ違うものの、これだけ異様な人々が力を発揮したのは、政策どうのこうの以前に、弱い人々の声をすくい取ってくれる希望というのが彼らに見えたからだと思うのです。

それに、これには特定枠という政治制度をうまく逆手にとった山本太郎代表の巧妙さも光ります。この映画のあとの都知事選では轍を踏んだと思いますが、元タレントという雄弁さ・著名さを活かした選挙劇は選挙プロデューサーという名の辣腕さ(これが袂を分かった、元師匠の小沢さん仕込なのか)を感じます。

「NHKをぶっ壊せ」にとどまることなく、「古い日本をぶっ壊せ」。かつて、「自民党をぶっ壊す」で時のヒーローになった人もいましたが、安富先生の話を聞いていると、日本の古い仕組み自体をぶっ壊さないと日本の未来はないように思えてきます。

自分自身の政治思想は「れいわ」とはだいぶ相容れない部分があるものの(笑)、安富先生の選挙劇を観ていると、本当に彼(彼女?)に何年か首相になってもらって、日本を変えて欲しいと感じます。先生の言葉にもありますが、かつて民主党政権になったときは、国民の多くが日本が変わると感じたと思います。でも、変わらなかったのは民主党自体のポンコツさもありますが、日本が大きく変わることを許さなかった見えない力(権力)みたいなものが働き、このままでは日本が崩壊すると国民が怖がった(怖がらせた)から、再び自民党政権に戻ったのではないかと思います。それでも今の自民党はおじいちゃんに感じません? 個々の政策では納得する部分もあるものの、このまま古い昔の政治の方法の延長でやっては、日本はぬるま湯に浸かりながら死んでいくのではないかといつも思ってしまいます。

政治は古臭いという一方的な思考から、政治は私たちに身近なんだと、この映画を通じて感じて欲しいと思います。

最後に、参考書籍。政治というか、社会に対して、どう個人をもっていくかはブレイディさんの著書がおすすめです。

あと、こちらも最近観た作品ですが、どぶ板の選挙を通じながら、政治家個人を洗い出していく作品になっています。形だけの政党政治ではなく、もう少し個人の顔が本作のように見えてくれば、政治の古臭さはなくっていくのかもしれません。


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