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見たもの『鍵泥棒のメソッド』

 プライムビデオで視聴。堺雅人氏、香川照之氏と有名なコンビが主役だったこと、同じくプライムビデオで見た『南極料理人』で堺雅人氏の表情表現力に魅了されたことが視聴に至った由縁。

 あらすじとしては、冴えない貧困元俳優志望の男と、「伝説の殺し屋」業を営む男がひょんなことから銭湯で居合わせて石鹸で転んで記憶喪失になって冴えない方に魔が差して身分そのものが入れ替わって──。という、文章にしてみると唐突だけど分かりやすい導入。

 感じたのは、導入のテンションのまま「ところどころ唐突だったり、フィクション的ご都合展開はあるんだけど、それで白けない、自然な雰囲気と巧みなテーマ配分」でした。「演技をすること」「人を好きになること」という二つのテーマ軸が絶妙に展開と絡んでいて、「ああ、この映画が伝えてるのは、こういうことだったんだね」がとても受け取りやすかったです。

 話の展開は分かりやすかったんですが、じゃあシンプルな話の構成かと言われるとそんなことはなく、中盤辺りで記憶が戻ってから終盤にかけての人物の交錯具合は、群像劇めいたものとなっていました。それでも分かりやすかったのは、ひとえに「観せ方」の妙だったと思います(ヒロインがいきなり塩をなめるところ、積み上げた本の背表紙の図書館シールなどなど)。情報量の削ぎ方の技術。だから、セリフがなくとも表情だけで伝えられる堺雅人氏、香川照之氏、広末涼子氏というキャスティングになったんですねというのも伝わってきました。冒頭の数分、セリフ一切なしで状況がありありと分かる堺雅人×演出のシーンがなんなら一番印象に残っています。

 2時間8分と長すぎることもなく、先に述べてる通り中盤で物語のテイストがガラッと変わるので、飽きずに観られました。シリアス過ぎず、コメディ過ぎず、言ってしまえばどんなテンションの日でも観られて、満足感がある映画だったと思います。オススメです。

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