思い出し日記:メダルゲーム
春、数年ぶりにメダルゲームをした。子供のお小遣いと、溶かされる年金だけで成り立っている娯楽。
ビギーナーズラックのようにヒサシブーリラックという言葉はないと思うが、始めて二時間くらいで、1500枚を吐き出すsuper jackpotを当ててしまった。周りの小学生大興奮。「すげえ!」「やば!」「どうなっちゃうの!」。感想言いすぎだって。
私は、隣に座っていた女子小学生と顔を見合わせて唖然としていた。そりゃそうだ。私からすりゃ、数年ぶりに来て、いきなりこんなことになってんだから。向こうからすりゃ、頻繁にきてるのに、横だけこんなことになってんだから。落ちてくるメダルのあまりの量に焦った私は、その子に「メダルって預けて帰れるの?」と尋ねた。どうやら預けて帰れるらしい。安心、安心。
そして、舞い上がっていた私は、その子に「実は私、大学受験終わったばっかりでメダルゲームするの、超久しぶりなんだよね!」と言わなくていいようなことを言っていた。本当に汚れた人間だな、私は。小学生にも努力を認めてもらいたいのか。まあ、当時は大学に合格したばかりで、本当に調子に乗っていた。そして、小学生が返してくる。「これ絶対、合格するよ!ってことですよ!」と。「くそっ、なんてかわいいんだこの子は」と心の中で強く思った。子供嫌いの私も、受験からの解放感で、ずいぶん簡単な生き物になったもんだ。
目の前ではメダルが怒涛の勢いで落ちてくる。さっきまで丁寧にメダルを投入していたはずの私の金銭感覚はすでに崩壊しており、気づけば落ちてきたメダルを鷲掴んで、その小学生に分け与えていた。
気分は富豪だった。いや、天狗というのが正しいだろうか。そんなことをしても私のメダルは倍以上になった。
しかしどこで間違えたのだろうか。帰りには預けて帰るものなど何もなかった。
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