夏休みのラジオ体操
2019年8月2日(金)息子が小学校2年生の時の思い出。
午前6時。天気は晴れ。蝉が元気よく鳴いている。住んでいる地域は違うけれど、私が小学生の頃、見た景色と変わらない夏の朝だ。ああ、ラジオ体操日和だな、と思う。小学2年生の息子は眠たそうな顔をしながら、パジャマから、Tシャツと半ズボンへと着替え、ラジオ体操のカードを首からぶら下げた。
「もう慣れたでしょう。一人で行ってみたら」
「一人はいやだ」
息子は、まだまだ私から離れることができない。息子と同級生の子は、もう一人でラジオ体操に行っている子もたくさんいるのに…と、少しだけ不満に思う。息子がラジオ体操に行っている間、朝ごはんを作ったり、洗濯物を回すことだってできただろうに。
ラジオ体操会場の公園に向かう途中、息子と同級生の女の子二人に追い抜かれた。
「おはようございます」
と、彼女たちは大きな声で挨拶をしてくれた。
「おはよう」
と、私も元気よく返した。息子にも、一緒にラジオ体操に行ってくれるような友達が近所にいれば良いのにと、仲良く話す女の子たちの背中を見ながら思った。息子は、むすっと下を向きながら、私の後ろを歩いていた。こうやって、ラジオ体操に一緒に参加できるのも今だけか…と前向きに考えることにする。
公園に着くと、子どもたちや、保護者たち、子ども会役員の方々、地域の方々が、もうすでに集まっていて、『ラジオ体操の歌』が始まると、大きな輪の形に広がった。高学年の子たちや、大人たちは慣れた感じでラジオ体操をこなす。最初の頃は、恥ずかしがりながら、見よう見まねで一生懸命こなしていた幼児や低学年の子たちもだいぶ上手くなった。
ラジオ体操第一が終わると、子ども会の役員の方が「はい、お疲れ様でした!」と電源を切った。
初めてこの地域のラジオ体操に参加したとき、
「ラジオ体操第二なんて普通やりませんよー。そもそも、やり方知りませんし」
なんて役員の方が言っていたのを、たまたま耳にして、とても驚いた。私が小学生の頃は、当たり前のようにラジオ体操第二をやっていたが、やらないのがこの子ども会の普通らしい。そんな私も、ラジオ体操第二がどんなだったか、音楽さえも思い出せないでいる。
夏休みの始まりと共に始まったラジオ体操も、うちの地域ではもう最終日。たった10日間の自由参加だったが、休まずに参加することができた。私も、よく毎日、息子と共に参加したと思う。
最終日のこの日は、公園清掃もあった。子どもたちがゴミ拾いをしている間、役員たちは、子どもたちに配るジュースやお菓子を用意する。準備ができたら、清掃終了。ラジオ体操に毎日参加した子も、ときどき参加した子も、最終日しか参加できなかった子も、みんな平等にジュースとお菓子をもらう。息子は、三ツ矢サイダーとポテトチップスをもらった。
さっそく息子は、もらったばかりの三ツ矢サイダーをプシュッと開けて、ぐびぐびと飲んだ。そして青空に向かって「ぷはー」と声を出した。
「帰ったら朝ごはんなのに、お腹膨れちゃうよ」
「平気だよ」
息子は、最近になって、炭酸を飲めるようになったばかり。それなのに、とてもおいしそうに飲んでいた。夏休みだし、周りもみんな飲んでいるし、たまには朝から炭酸ジュースを飲んでも良いか。
まだ7時になったばかりだというのに、夏の日差しがとても眩しい。息子の額には汗がきらきらと輝いていた。
私も三ツ矢サイダーを飲みたくなったから、帰りに買って帰ろうかな。
(翌年以降は、コロナ禍でラジオ体操は中止。その後の話し合いで、役員の負担が大きいため廃止に。この日が最後のラジオ体操となった)