「常識破りの味」餃子に胡椒山盛り事件
いつもの昼下がり、みんなでランチに出かけた時のこと。美味しいと評判の餃子屋に入った時、事件は起きた。
みなさん、それぞれ餃子のタレには宗派があることだろう。私は醤油とラー油とお酢を適度にブレンドして食べるのが好きだ。
すなわち一大派閥と言えば、酢醤油でしょう。しかし、そんな常識を嘲笑うかのように、ある先輩は胡椒を山のように酢醤油にぶち込んでいた。
もはや小皿が真っ黒になるぐらいの尋常じゃない胡椒の量である。
その斬新すぎる食べ方に、女性陣の目は三角。当然、社内の平和を乱す愚行(?)として顰蹙を買い、即座に話題の中心になった。
極端な食べ方は下品な印象を与える。ジョリジョリ音がしそうな胡椒の山に餃子を浸し、舌鼓を打つ胡椒先輩の姿は決して上品には見えない。
社内の和を乱すわけにはいかない。私も適当にドン引きのリアクションをとってお茶を濁したが、実は心の奥底では「それ、試してみたい」という好奇心の声がしていた。皮肉なもので、人の好奇心は禁じ手に惹かれるものだ。
後日、私はついにそのタブーに手を出してしまった。酢醤油に狂ったように胡椒をぶち込む。一口食べれば、あの非難の的は何だったのか。ガツンとパンチの効いた胡椒の刺激が、案外にも酢醤油とマッチしていて、そこには予想外の旨味が広がっていた。これは意外とクセになるかもしれない。
食の掟など、所詮は人の勝手な枠組みに過ぎない。先輩の奇行は確かに周りの反感を買ったけれど、一方で新たな美味の地平を開いたのだから、一概に非難するわけにもいかない。
ジャンクで濃厚な味が好みの方なら、試して損はなし。常識など時には脇に置いて、自分の舌を信じてみるのも一興である。
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