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【ドラマ感想】「アンメット ある脳外科医の日記」がすごすぎる(ネタバレなし)

普段国内ドラマ見る時の私のテンションは「すごく面白い訳じゃないけど、見てられるから見るか……」という感じでごく低い。

だってまず、演技があまり良くないと感じる。
「演技と分かる演技は演技じゃない」とでも言うか。明らかに練習しましたと言わんばかりのセリフ、わざとらしさを出されると、作り物を見ている気分で冷めるのだ。

前提として作り物だと分かっていても、その中に本物を感じるからこそ、人は作品に没入する。

そこを行くと、ドラマ「アンメット」には「本物」が確かにあった。

私はまだ医者なのだろうか——。
朝起きたら前日の記憶はリセットされ、頼みの綱は日記の記録のみ。記憶障害の脳外科医・川内ミヤビ(杉咲花)は、もう一度、医師として患者と向き合うことができるのか——

1年半前、不慮の事故で脳を損傷した脳外科医の川内ミヤビ(杉咲花)は、過去2年間の記憶をすべて失い、新しい記憶も1日限り、寝て起きたら前日の記憶がなくなってしまう記憶障害に。毎朝5時に起きて机の上の日記を読み、失った記憶を覚え直すことから1日が始まる。

現在は、関東医科大学病院脳神経外科の教授・大迫紘一(井浦新)の治療を受けながら、記憶をなくす前の研修先だった丘陵セントラル病院に勤務しているが、医療行為は一切行わず、看護助手として働いている。

ドラマ公式サイトより抜粋

正直、「一日しか記憶がもたない」という設定はどこかで見たことがあるようなものだし、実際に脳の障害で似たような状態になっている方をドキュメンタリーで見たことがある。

でも、脳の障害を負っているのがそれらを治すべき「脳外科医」であるということ。自分も脳障害に悩むからこそ患者に寄り添う医療ができるという物語は十分に魅力的だった。

そして、一見したところ変人にも見える天才脳外科医、三瓶先生との気になる関係、最終話にまで持ち越される丁寧な伏線の数々にハッとさせられる。

でも何よりも素晴らしかったのは、より感情的なシーンで多用される、カメラを持って撮影したかのような臨場感のあるカメラワークと、特に主演二人(ミヤビと三瓶)の演技だった。

その二つが組み合わさると、ドラマを見ているというより、自分もその場で起きていることを目撃しているような不思議な感覚になる。

それが特に素晴らしかったのは、9話のラスト14分。

ミヤビと三瓶の二人がオフィスで会話を交わす、何気ないシーンなのだが、「私は何を見てるんだろう?」とひととき呆然としてしまった。

身体の動き、目線、セリフの言い方。全てが言葉を超えたコミュニケーションだった。それはもう演技には見えず、無意識から生じた絆の表れに見えた。

こんなすごいドラマは見たことが無い。
全てが表現のなんたるかを体現している。
もはや芸術作品みたいだ。

前に話題になった「VIVANT」は伏線やプロット、絵の派手さで魅せる作品だったが、「アンメット」は繊細な心のやり取り、素晴らしい演技、あたたかみのあるキャラクターで魅せている。

最後まで見れば、ミヤビの小動物のような可愛さに隠れた強さ、三瓶の一見そうは見えない情の深さに気づくだろう。そして取り巻く同僚たちがいかにそれぞれの傷を持ち、ミヤビを思い大切にしているかに胸を打たれ、人間同士の絆や愛に、心をあたためるだろう。

ミヤビは大変な状況の中、それでも前向きに生きようとする強さを持っているが、それは彼女一人の強さではない。周りの人々の支えを気取らず受け入れるメンタル。そして自分自身が医師として人を支えることによって力を得ている。それは一見弱くも見えるしなやかな強さで、それは鉄のように凍り付いた強さよりもずっとずっと強い。

アンメットは恋愛ドラマ、医療ドラマとしても面白いが、誰かを信じ、愛し、人と人が支え合うことの意味を教えてくれる。

最終話も、解釈を任せる形で終わり、にくい演出もあり、製作サイドから作品への愛が伝わってくる。

ドラマとその原作に関しては問題提起がなされて久しいが、原作者さんも満足していると聞く。

製作サイドは続編をやりたい気持ちのようだが、スタッフや演者さんがその気なら、ぜひやって欲しい。

今後の展開も楽しみなアンメット、Netflixなどで視聴可能なので、まだ見ていない方はぜひご覧になってみて欲しい。

「名作ドラマ」と銘打つにふさわしい、素晴らしい作品だった。ありがとう。


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