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相槌のバリエーション不足でつい「なるほどですね」を使ってしまう悲哀

 日本では相槌を打つことイコール「話を聞いている」という合図になる。したがって、人の話を聞いている時は「はい」「ええ」「そうなんですね」とタイミング良くこまめな相槌を入れないといけない。話の内容がどうでもいい時はリズムアクションゲームをプレイしているような気分になる。

 とはいえ、日本語は相槌を多く求める割に相槌のバリエーションが少ない。誰にでも角が立たず使えるのは、基本的に先に挙げた「はい」「ええ」「そうなんですね」(「すごいですね」「さすがですね」などは相手を評価する言葉なので場合によって使えない)。だが長く続く話で「はい」「ええ」「そうなんですね」を繰り返していると、「聞いてるんだか聞いてないんだかわからない」という状態になる。そこで仕方なく「なるほどですね」を使う。

 しかし「なるほどですね」という言葉は日本語としては間違っている。「なるほど」という感嘆を示す言葉に「ですね」と丁寧語をくっつけるのはおかしい。そもそも「なるほど」自体が敬語表現ではないので、敬語でやり取りするような相手に対しては使うのをためらう。そこで「なるほど」に「ですね」をつけるとなんとなく丁寧になるので使ってもいいような雰囲気になる。

 あくまで雰囲気である。使われるのが嫌な人もいるだろうから使う相手には気を遣うのだが、気心の知れた相手とのカジュアルなビジネストークだったらいいかなと使っている。ある意味で相手に「許してくれるでしょ?」と甘えているのである。

 一方で、本当に目上の人と話す時は「左様でございますか」と「はい」しか言えない。こちらも緊張しているのでバリエーション不足で飽きることはないが、もっとバリエーションがあればいいのにと思う機会は多い。なんかこう……「Wow!」「Excellent!」「Cool!」みたいな相槌が流行らないものだろうか。

 ということで、「なるほどですね」という言葉を使わない方が良いのは分かっているのだが、相槌のバリエーション不足からつい使ってしまうというジレンマの話だった。

 皆さんにも相槌のバリエーションが少なすぎてイライラする経験があろうと思う。画期的な日本語の相槌が彗星のごとく出現するように祈っている。

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