「アクセシビリティわかってるつもりでわかってなかった」を共有した話
先日「春のアクセシビリティーLT&雑談ナイト!」というイベントでLTで登壇したので発表内容をまとめます。
実は知らずに参加したのですが、同日神戸で行われた「アクセシビリティの祭典」に行けない東京勢の裏番組的なイベントだったようです。
当日の様子はTwitterのハッシュタグでなんとなくわかると思います。
ちょうど仕事でアクセシビリティへの取り組みをしているところだったのでそのあたりの話しました。この記事は話の内容とスライドを元にまとめ直してみました。
「アクセシビリティわかってるつもりでわかってなかった」を共有したい。
仕事で取り組んでいるのは、リリース済みのコーポレートサイトに対してWCAG 2.0のAAに準拠するように対応するというものです。
おおまかな対応の流れは「デザイニングWebアクセシビリティ」に書いてある内容のような感じです。
ただ、実際にやってみると、これまで学んできたことや本を読んだりネットで調べたりしたことと、だいぶギャップがあり迷うことがたくさんありました。
結局答えは出なかったんだけど、そんな悩みやつまづきどころみたいなところから、何か議論やヒントにつながればいいかな、という内容になります。
悩みポイント1:ネットで調べた技術にブラウザが対応していないことがある
技術的には様々な仕様やアイディアが存在はするものの、事前にネットで調べたからできるだろうと思ったらできない、みたいなことがよくありました。
メディアクエリや音声向けのCSSがあまり期待通り動いてくれないとかです。
また、どれも実装のtipsのみで、読み上げられ方のような効果や期待値には触れられていないことが多いように感じました。
悩みポイント2:結局できているのか、できていないのか分からない
特にスクリーンリーダーを初めて使うので、Voice overもナレーターも思うように操作できず、ソフトの問題なのか、サイトの問題なのか、利用者の熟練度の問題なのか分かりません。
参考にと、対応できているであろうアメリカ政府関連のサイトなどを見ても、決してうまく読まれているとか使いやすいとは思えません。
実際に当事者にあたる人たちにとってのベターラインを知りたいと思いました。
悩みポイント3:ユーザービリティへの要求が健常者に偏る
実装をして確認していくなかで、「音声で読んだらリンクの手前で区切られて読まれてしまうのでスムーズに読ませたい」みたいな要求が出てきました。
先の正解の分からなさに通じるこでもありますが、目が見える人のものさしで「使いやすさ」を押し付けてしまうと、利用者の状況によっては操作を妨げる可能性があると思っています。
そのため技術的に最低限アクセス可能、操作の選択が可能というラインを引いて判断するということにしました。しかし一方でこの判断によって当事者にとって使いづらい場合があるかどうかまでは判断できませんでした。
まとめ
要件の視点が足りない
ツールの使い方も含めて前提となるユーザー像をもっと知りたい
当事者の実態が分からない
技術的な有無ではなくどう使われるかを知りたい
具体的なケーススタディが足りない
ユーザー個別の事情とニーズについてもっと知りたい
以上が僕が取り組む中で悩んだことです。情報がいろいろある中で意外と足りないのでは、と思ったことです。今後はハウツー以外のこういったことも共有していけたらいいな、と思います。
雑感
特にネットの記事は技術的にコレをやればOKというものが多いですが、やればやるほどアクセシブルとは何かについて考え方であったり、どういう視点で誰に何を提供するのか、という切り口のほうが重要になると考えました。
ないよりはある、届かないよりは届くことは大前提なのですが、特に受託においての品質としての基準づくりは非常に考えさせられるものがありました。
ある方法が技術的に「ある」ということと、それが「動く」ということと、
提供した手段が「使える」ということは別なので、実際の挙動もふくめて検証を行い、クライアントと期待値をすり合わせる必要があります。
またLTでは触れていませんが、今回は公開後のサイトに対しての適応だったため視覚的なUIを前提にしています。そのためタブや多段的なドロップダウン、地図といった複雑なUIに対しては愚直にやるのではなく、達成したいことや届けたい情報にフォーカスして提供の仕方自体を見直すことも必要です。
このことはDesign systemsでも触れられていますが、今後のデザイン/フロントエンドに対しては、視覚的なスタイルからではなく、UIの役割に応じた各環境に対した表現がなされるような設計が求められるようになりそうです。
追記:懇親会でいろいろ話したことは次の記事でまとめました。
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