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悪くない時間も必ずあるので、困っている状況だけで考えない

(7,954文字/個人差はありますが、約13分~19分程で読めると思います)

おはようございます。よこはま発達相談室の佐々木です。今回は皆さんからお寄せいただいたご質問にお返事していく回になりますので、よろしくお願いします!

Q1:理屈はわかるのですが・・・

「氷山モデルで考えることが大事」というのはよく見聞きしますし、その理屈はとてもよくわかります。ですが、原因がよくわからないこともありますし、実際には難しいなと思うことがよくあります。そうした時には、どういった視点で考えてみると良いでしょうか。

A1:困っているときほど、困っていない場面を意識して

ご質問ありがとうございます。確かに「考えてはいるけれども、原因がよくわからない」ということはよく経験することの一つです。  

こうした時には「視点を変えてみる」のも大切です。当たり前ですが、困っている場面では、

「何が原因なんだろう?」
「どうしてこういうことが起きてるんだろう?」
「どうやったら状況が変えられるんだろう?」
「どうしよう?」
ということを中心に考えがちです。

だけれども、そうした時こそ下記のような視点もあって良いかもしれません
「ん?待てよ。困っていない場面もあるのでは?」
「うまくできている場面ってどんな時?」
「そもそも、その時間はどうしてうまくいっているんだろう?」

よく「〇〇という行動が本当に困ります。なんとかしてほしい」とご相談をお受けすることがあります。そうした状況では、ご本人、ご家族、サポーター、みんなが苦しい状況かもしれません。ですが、「魔法」のような方法はありません。時に、対応を変えることでこれまで困難だった状況が嘘のように変わることもあるかもしれません。でも、それは今の問題に対して、その背景にある理由やご本人の特性を改めて整理し、根拠のある対応をしたからということがほとんどです。

それは、いつも起きているのか?

「そうした苦しい状況は、24時間365日、いつも起きているのですか?」

こんなことをよくご質問させていただくことがあります。

「そんなわけないじゃないですか」

当たり前のようにこうした返答を頂きます。そうなんです。「いつも」じゃないんです。だとするならば、「居心地が悪くなく生活できている時間」がきっとあるわけです。

大事なことは、「こういう場合には〇〇に違いない」と、これまでの自分の経験から憶測だけで対応を決めつけないことです。そうではなくて、それぞれの状況の違いを考え、そこから「うまくできている場面」に近づけていくことです。イメージしやすいように、少し架空の例で考えてみましょう。  

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Aさんは自閉症の特徴を持っています。今やっている活動に関する動機が乏しかったり、何をすれば良いか不明確な時間(休憩中や自由時間)には部屋から出ていこうとします。止めると大きな声を出して混乱します。自分にとって興味関心のある活動やできることは、とてもよく取り組んでくれます。急で不用意な変更は苦手ですが、前もって予定を伝えてもらっていると安心して過ごすことができます。
***

「困っている場面」と「うまくできている場面」に分けて考えてみましょう。

【困っている場面】
・今の活動に興味や関心が薄い
・何をしていいかがわかっていない時間
・急な変更や制止

【うまくできている場面(問題が起きていない状況)】
・興味関心の高い活動
・何をすれば良いかが自分でわかっている時間
・予測がついている

こんな風に整理できたとします。

ここから支援の大枠を考えていくのですが、この場合には「興味関心の高い、あるいはわかる活動や時間を増やす」「予測がつくようにする」というのが大きな方針です。では、そのためには「どんな条件が揃えば、これらを達成できるのか」を考えていきます。

自閉症のこと、アセスメントのことも勉強してこそ意味がある

その際には、周囲の方々から情報をもらったり、Aさんの自閉症特性を考えたりしながら進めていきます。「予測がつくようにする」といっても、何を、どう伝えていけば「Aさんが予測を立てられるのか(見通しを持てるのか)」を考えないといけません。そのためには、Aさんのことを知らなければなりません。こうしたプロセスが、「評価(アセスメント)」とよばれるものです。

ですから、氷山モデルで考える際には、それだけを考えれば良いわけではなくて、自閉症のことやアセスメントのことも勉強する必要があるのではないかと思っています。ご参考まで。

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