FTCの取扱い事例紹介(不当表示)
[前注]
以下のようなペナルティがあります。
1)警告状を送って広告を止めさせる。
2)提訴して、①消費者への返金
②制裁金
③広告の差し止め
④再犯防止
1、「TrueAloe/AloeCran」事件
フロリダ州に拠点を持つNatureCity, LLCをはじめ、Carl Pradelli、Beth Pradelliの計3社が販売するアロエベラサプリ「TrueAloe」と「AloeCran」の2製品が、根拠のないヘルスクレームを無許可で広告に掲載した行為に対し、FTCは消費者保護の観点からこれをフロリダ連邦地方裁判所に提訴した。
被告企業は、主に高齢者へダイレクトメールを送付し、同製品が血中コレステロールとトリグリセリド値を改善することで、高齢者に特有の慢性痛、潰瘍性結腸炎、糖尿病、逆流性食道炎の緩和に効果があると謳っていたが、FTCはこれを何ら科学的検証に基づかない悪質な欺瞞であると断罪した。
その結果、2019年10月に同地裁は、問題とされた広告の出稿差し止めと、被害を受けた消費者22,581名への返金額計470,000ドルおよびその小切手送付に関連する手数料を含む計537,500ドル、さらに被害者への返金完了まで一部猶予される総額18,700,000ドルにおよぶ制裁金の支払いを被告に命じ、これを被告側が受諾したことにより結審した。
また裁判所は、今後製品の効能効果、有効性、安全性および副作用に関する科学的根拠に基づかない表示を禁じると共に、ユーザーレビュー投稿者に対価として無償提供されたとする製品および生涯メンバーシップの実態についても情報公開するよう、さらに被告側企業へ命令した。
2、「Synovia」事件
コロラド州に拠点を置くA.S.Research, LLC の販売するコラーゲン含有サプリ「Synovia」の広告が、何ら合理的な根拠もない「関節炎」や「関節痛」の緩和効果を消費者に誤認させた疑いで、FTCは同社をコロラド州連邦地方裁判所へ提訴した。
同社は、新聞、ダイレクトメール、自社ウェブサイト等の広告上で、「奇跡のサプリが関節にできた『穴』を修復する効果で、従来の医学的な注入式治療が不要となり、また95%の関節痛症状を緩和する」と謳っており、その中にはユーザーを登場させ、「Synoviaを使用してから補助歩行器がいらなくなった」などと訴求するものもあった。
また同社は、広告に複数の医師による偽の推奨文やユーザーコメント(実際には、共同経営者が登場)を掲載したり、通常送られてくるのと同一の商品を「より効果の高い成分強化バージョン」と偽り、不正に追加料金を詐取していたともされた。
これに対し裁判所は、被害者への返金および関連する手数料を含む計821,000ドルと、その返済が完了するまで一部執行が保留される総額4,100,000ドルの制裁金支払いを命じ、被告企業側がこれを受諾することで2019年12月に結審した。
3、「Quality Encapsulations 」事件
独自通販サイトを運営するニューヨーク州のCure Encapsulations, Inc.が、同社の販売するガルシニア含有ダイエットサプリ「Quality Encapsulations Garcinia Cambogia Extract with HCA」の広告で、委託先のamazonverifiedreviews.comへ報酬を与えて偽のユーザーレビューを投稿させていたとして、FTCがNY州連邦地方裁判所へ提訴した事案。
同サプリは、「食欲を抑え、脂肪をブロックし、体重を減らす」としてAmazon.com等を通じ広く販売されていたが、同社は委託先に対し、ユーザーレビューの平均スコアを5点満点中、最低でも4.3点以上に維持するよう指示を与えていた。
またFTCは、同社の広告が、「強力な食欲抑制で、体脂肪が形成されるのを防ぐ」、「週に2ポンド以上の即効的な減量で結果20ポンドもの痩身が可能」などと、何ら科学的根拠のない効能効果を標榜していた点についても悪質性を認めた。
これを受けて連邦地裁は、同社に対し、問題とされる広告の出稿差し止めと今後の出稿に対する信頼性のおける科学的根拠の提示を要求すると共に、滞納する所得税の支払い完了まで猶予される50,000ドルを含む総額12,800,000ドルの制裁金の支払いを命じた。
4、FTC & FDA協力事案~新型コロナ対策製品
全米に新型コロナが蔓延し始めた2020年3月、一部カナダやイギリスを含む全米のコロナ対策サプリ&グッズの販売業者計7社(Vital Silver、Quinessence Aromatherapy Ltd.、N-ergetics、GuruNanda, LLC、Vivify Holistic Clinic、Herbal Amy LLC、The Jim Bakker Show)に対し、科学的根拠なく特定伝染病への予防および治療効果を標榜する無許可のコロナ対策製品を販売しないよう、FTCとFDAが共同で警告状を送付した。
また、当初問題とされた製品は、コロナ感染予防や治療効果を謳うお茶、エッセンシャルオイル、銀コロイド液などが中心であったが、その後、同年5月までに当局が追加で警告状を送付した企業および個人は計120社以上におよび、その製品カテゴリーはサプリメント、中国ハーブ、音楽療法、オゾン療法、電磁波療法など、さらに多岐に渡っている。FDAは、これらの警告先企業の製品がコロナの予防や治療に効果があると証明あるいは認可された例は皆無としている。
さらにFTCは、コロナ問題で消費者が強い不安や関心を寄せている現状、特にその社会的影響が大きい点を重視し、公衆衛生と消費者保護の観点から、オンライン広告やSNSのモニタリングなど、引き続き強力な監視体制を敷くことを明言した。
なお、警告状を受けた各企業には48時間以内に対応状況を報告することを命じ、これに従わない場合には裁判所への提訴や被害者への返金命令を行う旨、警告状は通知している。
5、FTC & FDA協力事案②~各種サプリメント
FTCとFDAは2019年2月、米国内のGold Crown Natural Products、TEK Naturals、Pure Nootropics, LLCの3社に対し、それぞれが販売する各種サプリメント広告が何ら科学的根拠もなく癌、心臓病、パーキンソン病等の重大な疾病治療に有効であるかのように標榜したとして、両局連名の警告状を送付した。
うち、フロリダ州のGold Crown Natural Productsに対しては、同社のメラトニンサプリなど計4商品の広告が、「数多くの試験により、メラトニンがアルツハイマー病治療に効果ありと実証された」と標榜していることの問題を指摘した。
南カリフォルニアのTEK Naturalsに対しては、同社製品「Mind Ignite™」など計5製品が、「アルツハイマーのみならず認知症への効果が医学的に証明された」とした行為、さらに別の同社製品が、「ある種の癌やパーキンソン病、ヒトパピローマウイルス、腎臓結石の予防と治療に有効」とした行為について、その違法性を指摘した。
また、ニューメキシコ州のPure Nootropics, LLCに対しては、同社の「Alpha
GPC」や「Lion’s Mane」をはじめとする計7製品の広告が、認知症、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン病等への効果を標榜した行為について問題を指摘した。
これら3社に対しFTC/FDAの両局は、15日以内にFTC宛て対応状況を報告するよう命令し、これに従わない場合は、当該企業に対して民事訴訟を提起すると共に、損失補償など被害者救済の道を探ることになると警告した。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?