新型コロナ薬事法・景表法事件簿

薬事法(薬機法)・景表法のスペシャリストである薬事法ドットコム(YDC)が、新型コロナにまつわる薬事法・景表法などの事件・出来事をお伝えしています。

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1.新型コロナ対策を標榜する商品広告に対する消費者庁からの警告および注意喚起(景表法・健康増進法の観点から)


 (1)第1回: 2020年3月10日

    新型コロナの感染拡大に乗じ、対象期間である2月26日から3月6日の間、ネット上にウイルス予防効果を標榜する製品広告を掲出していた健康食品、マイナスイオン発生器、空間除菌剤等の30事業者計46製品に対し、消費者庁は景表法上の「優良誤認」および健増法上の「食品の虚偽・誇大表示」にあたるとして改善要請を行った。また、問題とされたいずれの製品にも同様の効果を裏付ける根拠は認められていないとし、広く一般向けに注意喚起を行った。

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 (2)第2回: 2020年3月27日

    対象期間3月9日から3月19日の間、ネット広告上でウイルス予防効果を標榜していた健康食品、アロマオイル、光触媒スプレー等の34事業者計41製品に対し、消費者庁は景表法上の「優良誤認」および健増法上の「食品の虚偽・誇大表示」にあたるとして改善要請を行った。また、「マスクのおとり広告」に対しては、景表法の「おとり広告告示」の観点から再発防止の指導を行い、一般向けにもツイッターやフェイスブックなどSNS経由で広く注意喚起を行った。

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 (3)第3回: 2020年6月5日

    対象期間4月1日から5月22日までの間、ネット上に広告を掲出していた健康食品、除菌スプレー等の35事業者計38製品に対し、消費者庁は景表法上の「優良誤認」および健増法上の「食品の虚偽・誇大表示」にあたるとして、表示の適正化に向けた改善要請を行った。また、SNSを通じ広く一般向けにも注意喚起を行った。さらに、これに先立って3月に行った2回の改善要請についても、対象となった64事業者計87製品の広告表示がすべて改善されたことを報告した。


 (4)第4回: 2020年6月26日

    経産省、厚労省、消費者庁は、「次亜塩素酸水」の新型コロナウイルス除去効果について検証した結果、一定の条件下で有効性が確認されたと発表する一方、製造販売業者に対しては、手指消毒等の効能効果の標榜は医薬品または医薬部外品に該当し、その販売にあたって薬機法や景表法など関連する法令の規制を受けるとの統一見解を、3省庁の連名で発表した。
また、製品の有効性や安全性に関する試験情報の公開を販売者へ促すと共に、品質管理や消費者の安全に留意するよう注意も喚起した。
    これにより、新型コロナの感染拡大以降、市場に数多く出回る次亜塩素酸水製品の表示方法に一定のルールを与え、誤った使い方による消費者側の健康被害や、未知の製品に対する心理的不安を解消することを狙っているものと思われる。


2.新型コロナ対策を標榜する商品広告に対する消費者庁からの行政指導 (1)衛生マスク: 2020年3月27日

    消費者庁は、大手DSチェーン「ウエルシア」と「ダイレックス」の2社に対し、実際には入荷していないマスクについて、あたかも購入可能な在庫があるかのような虚偽のチラシ広告を使用した行為が景表法違反(おとり広告)にあたるとして、再発防止を求める行政指導を行った。なお、ダイレックスの関係者によると、「当初の予定よりマスク需要が急増したため、チラシ広告の印刷差し止めを試みたが間に合わなかった」としている。

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 (2)携帯型空間除菌製品: 2020年5月15日

    消費者庁は、二酸化塩素による空間除菌を標榜する首掛け式等の携帯型空間除菌製品の販売業者計5社に対し、景表法上の優良誤認にあたるとして、再発防止の行政指導を行った。これらの製品広告では、「身につけるだけで空間除菌」等の表示がされていたが、同表示の根拠とされる資料はほとんどが狭い密閉空間での実験結果であり、風通しのある場所などでは表示通りの効果が得られない可能性があるとした。

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3.新型コロナ対策を標榜する商品広告に対する措置命令

 (1)ハンドクリーンジェル: 2020年5月19日

    消費者庁は、東京都の㈱メイフラワーに対し、同社が韓国から輸入し販売する手指用洗浄剤「ハンドクリーンジェル 300ml」の表示が景表法上の優良誤認にあたるとして、改善と再発防止を求める措置命令を出した。なお、同商品は「アルコール71%配合」と表示していたが、消費者の苦情を受けて第三者機関で分析したところ、実際のアルコール配合割合は5~30%と、表示された71%を大きく下回っていたことが問題とされた。同社は販売した6万本のうち3万8千本の回収を終え、現在も返品・返金に応じているという。

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 (2)「夢グループ」事件: 2020年6月11日

    埼玉県は、マスク販売のチラシで手数料や送料について小さく記載したことなどが景品表示法違反(有利誤認)に当たるとして、通販やコンサート運営などを手がける東京都の芸能事務所「夢グループ」に対し、再発防止を求める措置命令を出した。県によると、同社はチラシに「立体マスク30枚セット3600円(税抜)」などと大きく表示する一方、手数料300円と送料500円がかかることは小さく記載し、販売期間も限定されていなかったにもかかわらず「本日の広告の有効期限5日間」などと表示していた。新型コロナウイルスの感染が拡大した3月から6月にかけて、県内の消費生活センターに「手数料の字が小さい」などの相談が約40件寄せられていたという。

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4.新型コロナ対策商品に関する薬事法違反

 (1)「イセノリック」事件: 2020年3月31日

     警視庁は、未承認サプリのネット広告が、「新型コロナ対策」などと効能効果を表示した行為が薬事法(薬機法)違反にあたるとして、製品を販売した日本ホールフーズ㈱の法人と役員2名を書類送検した。同社は、2月3日から同28日の間、オリーブ葉抽出エキスを主成分とするサプリ「イセノリック」を同社ECサイトで販売する際、「新型コロナウイルス対策」、「ウイルスの遺伝子複製に必要な必須アミノ酸の産生を阻害することでウイルス増殖を抑制する」などと表示していたことが問題とされた。なお、同社役員は、「素材の学術論文を基に広告を表示したが、サプリ自体は承認を得ていなかった」と自社の過失を認めている。

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 (2)「タンポポ茶」事件: 2020年4月30日(8月28日更新)

    大阪府警生活環境課は、医薬品として未承認のタンポポ茶を「新型コロナウイルスに有効」などと宣伝したとして、大阪府生野区の薬局と守口市のペットショップ経営者および役員の計4名を薬事法(薬機法)違反の容疑で書類送検した。府警によると、タンポポは漢方薬の原料として知られるが、ウイルスに対する実際の効果は不明としている。
なお、その後大阪地検は7月14日、同容疑者4名を嫌疑不十分につき不起訴処分とした。



 (3)「連花清瘟(れんかせいおん)」事件: 2020年6月5日

    千葉県警と同安孫子署は、未承認の漢方薬を「新型コロナウイルスに効く」などと広告した容疑で、我孫子市の整体師(男性/中国籍)を薬事法違反の容疑で書類送検した。同容疑者は、自身の経営する整体院前の歩道に、「中国がコロナに有効と認定した漢方(有効率90%)」などと書かれた立て看板を設置し、製品の販売目的でこれを広告した疑い。また、容疑者は過去13年間の不法残留に関連し、先に入管難民法違反の容疑で逮捕起訴されていたが、漢方薬はいずれも中国から調達していたという。


 (4)「板藍根(ばんらんこん)」事件: 2020年6月8日

    大阪府警東成署は、健康食品を新型コロナウイルスに効果あると宣伝したとして、東成区のマキノ薬局とその経営者を薬事法違反(未承認医薬品の広告など)の容疑で書類送検した。同薬局は本年2月から4月の間にかけ、未承認の健康食品「板藍根」を、「中国の病院では様々な感染症予防と治療に用いられています」、「新型コロナウイルスの感染予防に」などと店内に掲示し、同製品を仕入れ値の最大13倍の価格で販売したことが問題とされており、経営者もその容疑事実を大筋で認めている。


 (5)渋谷エステ事件: 2020年7月3日

    警視庁生活環境課は、新型コロナウイルスに効果があるとサプリメントなどを宣伝したとして、東京 渋谷区のエステ店経営者女性(41)と店員2人の計3名を書類送検した。発表によると、今年4月から6月まで医薬品として承認を受けていないサプリメントなどについて、店のホームページで「コロナ対策に免疫力を上げる」と宣伝したなどとして薬機法違反の疑いが持たれている。調べに対しいずれも容疑を認めており、経営者は「緊急事態宣言で売り上げが落ちたので商品の販売に力を入れようと思った」などと供述しているという。新型コロナウイルスの感染予防効果を謳う商品はインターネット上などで多く出回っているが、消費者庁は「効果が確認されたサプリメントなどはない」として根拠のない宣伝に注意するよう呼びかけている。


5.新型コロナに関するその他事件

 (1)「星の王子様」事件: 2020年6月24日

    大阪府警は、性風俗店「星の王子様」4の経営者と従業員を不正競争防止法違反容疑の疑いで逮捕した。府警によると、同店は新型コロナウイルスの検査を従業員が一人も受けていないにも関わらず、店のHPに「ウイルス検査の結果、全従業員の陰性が確認された」と虚偽の広告を掲載したとしており、店側も「従業員の生活がかかっており、客集めのためにやった」と事実関係を認めているという。


 (2)消毒用アルコール転売事件: 2020年7月1日

    愛知県警は、消毒用アルコールを購入価格の倍の価格で転売したとして、名古屋市中村区の無職女性(36)を国民生活安定緊急措置法違反容疑で書類送検した。容疑は、購入した消毒用アルコール6本(計1966円相当)を、ネットの販売サイトにて計4000円で転売したというもの。同容疑者は「いけないことだと知っていたが、お金が欲しかった」と、大筋で事実関係を認めている。県警によると、同容疑者は自宅近くのドラッグストア複数店舗を回り、今年3月ごろから消毒用アルコールを大量購入。店員には、「施設で働いているので、たくさん必要」などと話していたという。また同容疑者は、当件以外に少なくとも約10件におよぶ規制対象商品の転売行為を認めているが、消毒用アルコール転売容疑での検挙は全国初という。


 (3)「まなべ妙薬堂」事件: 2020年7月7日

    新型コロナウイルスに効くと訪問先で漢方薬を販売し、売買契約に必要な書面を交付しなかったなどとして、大阪府警は7日、特定商取引法違反(書面不交付や不備書面交付)などの疑いで、大阪府松原市の「まなべ妙薬堂」の経営者(43)と役員の妻(42)ら計4人と、法人としての同社を書類送検した。府警によると、新型コロナの感染拡大のため、セミナー会場での販売が難しくなり、3月ごろから訪問販売に力を入れていたという。同社は、「はやっているコロナにも効く」と謳うなどし、3~4月で約1540万円を売り上げたとされている。

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